第2話 なにしてるのよ!

 モグが先に話し始めた。

「私、弁護士になりたい。それとドッグフードがおいしくない!」

 モグは犬である自覚が乏しいみたいだ。

「ドッグフードは違うのを買うよ。でも弁護士にはなれないよ。犬の弁護士なんて聞いたことないもん」

「じゃあ、諦める。家政婦になる」

「……働いてもらうと助かるよ。ありがとう。何のドラマ見たか大体わかった」

「エヘヘへ」

「モグ、今日はもう寝ていいかな。疲れてるんだ」

「いいよ。いい夢見なよ!あばよ」

「もうぐちゃぐちゃになってるなあ」


 自分の不徳の致すところで多くの人に迷惑をかけている。まさかモグが何か察知して働くと言い出したのかと思うとすごく愛おしい。あしたタウンワークをもらってきてあげよう。

「モグ、おやすみ。明日、説明する。 ZZZZ」


 派遣社員でフィルター工場で働いていて1年半くらいになる。自分では頑張っているつもりだがいつ期間満了になるかわからない不安定な身分だ。一方で期間満了にならなければいつまでここで働かなければならないのかとの不安もある。こんなはずではなかったのにとの気持ちをいつまでもいつまでも拭い去ることができない。昨日を後悔している。昨日のその前の日を後悔している。その前の前も……

 

 次の日。

「さあ、説明責任果たしてよ」とモグ。

「うん」僕。

自分がやらかした悪い事を話すのは飼い犬といえど気が引けた。

「パチンコというギャンブルがあるんだ」

「パチンコ?」

「うん。鉄でできた玉を穴に入れるんだ」

「穴に入れるのが面白いの?」

「う~ん、説明が難しい」

「テレビで見た範囲でしか知らないけど男はさ、野球、サッカー、ゴルフと玉が好きね。なんで?玉、2個ももってるでしょ。もっとぶら下げたいの。歩きにくいでしょ?」

「ぶら下げたいわけではないんだ。とにかくそのパチンコをするためにお金を借りたんだ」

「自分が持っているお金の範囲ですればいいじゃない。なんで借りてまでする必要があるの」

「それがギャンブルなんだ」

「なにがそれがギャンブルなんだよ。バカ」

「そのとおりだ。バカだ」

「で、借金はいくらなの?」

「……250万円」

「なにしてるのよ!」

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