第3話 50歳の家出
このままでは借金は返済できないと考え、任意整理を司法書士に依頼した。
もともと嫁の実家で生活していた。義父、義母、義妹、甥、妻、私の6人で暮らしていた。嫁の実家で暮らす前は1年半、病床に伏せていた。病名は双極性障害。妻の稼ぎと傷病手当金でなんとか生活していた。その傷病手当金の受給期間が終了し、義妹からお金を借りて生活した。それでも生活がなりたたなくなり、妻の実家に身を寄せたというわけだ。
まあ、もともとまともではなかった。信用の度合いと借金の額は反比例する。実家に居づらくなった私は家を出た。布団とモグだけを抱きしめて……。
家を出て1年半になる。その間、妻には2度、連絡した。1度はラインで5万円工面してくれとお願いしたが無視された。もう1度は電話で実家の方に私の市県民税の督促状が来てる、どうするのと連絡があった。それだけだ。
「どうするの?なんか元気なくなった」
「お前のドッグフードとオシッコシ-ト代はなんとかするから……。いよいよの時は嫁に返す」
「返すって、あんた友達もいないんでしょ?心配」
「ありがとう。たまに会いに行くよ」
「どうせ玉に会いに行くんでしょ」
「上手いこというな!」
「バカ。美里は何か言ってるの?」
「何も言ってない。戻りたいよね?」
「正直、戻りたい」
「だよね……寂しいならテレビ付けたままにしておこうか?」
「大丈夫。タダじゃないんだから」
「うん」
「離婚するの?美里はどう考えているのかな?」
「うん。この間、離婚しようか?って聞いたんだけど、どっちでもいいって言われた」
「え……あんたバカ、鈍感」
「え?」
「美里は別れたくないのよ。そんなこともわからないの?女に何を言わせる気?」
「ちょっと待って、落ち着いて。こんな状態で別れたくないって言える??」
「まあ、言えないわね」
「だろう」
「……まあ、私がなんとかするわ。報酬は1億円」
「さては、僕のスマホでおまえブラックジャック見たな」
「世界一の外科医よ。治せないものはないわ」
「あ~あ、必要なのは医師ではないよ。あ!僕には医師も必要だった。ブラックジャック頼むよ~双極性障害なおして」
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