第ニ話  マジメ怪人『イイン・チョー』襲来!? 上

いやー、びっくりしましたよ。


いつものように駅前で客を待ってたらね、体の大きい客がやって来たんで後部座席のドアを開けたんです。


「どちらまで?」


そう言ってミラー越しにその人を見たらね、なんと『怪人』だったんですよ!


行先聞かれた怪人がね、私に向かって言うんです。


「あの、『日耀戦隊ニチレンジャー秘密基地』までお願いします。」


ってね。いやー、ホント・・・


怪人もタクシー使うんですね!


え?『秘密』なのに場所が分かるんですかって?


この辺に住んでる奴ならみんな知ってますよ?


                     (54歳/男性/タクシー運転手)





『30分待ってください!』


そう言われて彼是かれこれ、一週間経った。


あの日、駅前の広場でス〇バで買ったコーヒーを飲んで待っていた。


待てども暮らせどもは来なかった・・・。


しびれを切らした私は、駅前でタクシーを拾いヤツらの秘密基地へと向かった。


基地の外観はまるでSF映画に出てくるようなとにかく大きい建物で先進的なスタイルであった。


その割には扉はよくあるアパートのドアであった。


横のインターホンを押すと「はいはーい」と気だるそうな声がして、全身真っ赤なスーツの男が出てきた。


「あのー、こちらに『日耀戦隊ニチレンジャー』の方はいらっしゃいますか?」


「あ、自分その『日耀戦隊ニチレンジャー』のニチレッドです。」


「えと・・・その・・・私はですね―――」


名乗る前にニチレッドが声を掛けた。


「怪人・・・ですよね?」


「・・・そうです。」


レッドも何かを悟ったのか、二人の間に気まずい空気が満ちた。


「あ・・・30分・・・でしたっけ・・・」


「・・・はい。」


レッドは片手で自分の目元を覆い小声で言った。


「っ・・・一週間・・・」


怪人も申し訳なさそうに返す。


「・・・はい。」


しばしの沈黙の後にレッドが口を開く。


「あの・・・今グリーンとイエローとその・・・『きらりん☆〇ボリューション』見てて・・・」


「あ・・・もしかして、・・・ですかね・・・?」


11月、寒くなってくるこの季節、行き交う風は木枯らし。


怪人は一先ず自身の名前の書かれた名刺だけレッドへ渡し、タクシーに乗って駅前のビジネスホテルへと戻っていった。


ありがとうニチレッド!


日本の平和がもう一週間、約束されたぞ!!

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怪人襲来!!出撃せよ!日耀戦隊ニチレンジャー!・・・あの、出撃してください、お願いします!? ム月 北斗 @mutsuki_hokuto

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