怪人襲来!!出撃せよ!日耀戦隊ニチレンジャー!・・・あの、出撃してください、お願いします!?

ム月 北斗

第イチ話  日耀戦隊ニチレンジャー!!

日本の某所、その場に似つかわしくないほどの巨大な建造物があった。


『ニチレンジャー基地』・・・そう、ここは日本の平和を守る組織


日耀戦隊ニチレンジャーの秘密()基地なのである!


そこでは日夜、日本の平和を守るべくヒーローたちが訓練をしている・・・


そう思われているのに・・・なのに・・・


「あ~、やっぱガ〇使は面白れぇわ、録画してて何度も見てるのに飽きねぇ。」


コタツに体の半分ほどを突っ込み、肘をついてテレビを見ている男が一人


全身真っ赤なタイツを身に纏うこの男こそ何を隠そう


ニチレンジャーのリーダー『ニチレッド』なのである。


手元にはポテチ、そしてコーラと典型的な自堕落をゆくスタイル


そんな男に呆れつつも信頼を置く者がいた


「レッド、いくら人々の目が無いとはいえな、せめてヒーローっぽくしちゃいてくれないですかね?」


見た目はまんま黒猫、人の言葉を話せる不思議なこの猫はニチレンジャーの司令官


ケイト司令官、ニチレンジャーからの愛称は見た目から「クロ」と呼ばれている。


「怪人もいないこの平和なご時世だぜ?気にすんなや。」


「ヒーローの存在理由を根底から否定するようなこと言うんじゃねえよ。」


「怪人が来たらヒーローっぽくするから大丈夫だって。なんにもしなくても給料入るし。」


「その給料は国民の払った税金から来てるんだが?」


「おれたちゃ最強の~すーねかーじり~♪っと。」


クロは『すうぅ』っと大きく息を吸うと、『はあああぁぁぁ・・・』っと大きくため息をついた。


そんな基地の空気に割って入るかのように、基地の扉がバシュッと開き一人の男が入ってきた。


「みなさん、おはよーさーん!・・・って、なんやクロとレッドはんだけやないですか?」


関西口調のおなかがふっくらとした男、レッドと同じで全身緑色のタイツを纏うその人物は『ニチグリーン』。


「あぁグリーン、おはよう。イエローもいるよ、いるんだけどな・・・」


そういうとクロは基地の奥の扉に顔を向ける。


「あぁ・・・イエローはん缶詰かいな。同人作家も忙しいな。」


扉には『イエロー作業部屋 緊急時もしくは関係者以外立ち入り禁止ドウタンキョヒ!』と書かれている。


「お?グリーンおはよー、昨日の仮〇ライダー見た?」


「おいこら、せめて戦隊モノの話ししろ。」


「プリ〇ュアやったら見たんやけどな~。」


「だからせめて戦隊モノを見ろ、お前ら仮にも戦隊なんだぞ。」


するとグリーンは黒いバッグから数枚のDVDを取り出した。


「そんなことより『明日〇ナージャ』借りてきたんやけど、レッドはん見よか~?」


「お?懐かし~、あの頃内容が全然理解できなかったんだわアレ。見ようぜ~。」


まるでヒーローらしくない二人のやり取りを見てクロはまた大きなため息を吐いた。


すると突然、基地内にけたたましいブザーが鳴り響く。


壁に付いた巨大なモニターには大きな文字で『緊急事態!!』と映されていた。


クロは急いでモニター前のキーボードを叩き画面を操作しだす。


「大変だ!怪人が現れた!ニチレンジャー全員出動だ!!」


クロが意気揚々とレッド達に声を掛け振り返る、すると・・・


「それよりクロ、このブザー止めてくんね?明日の〇ージャ見るんだからさ~」


「ナー〇ャ見てる場合じゃねえんだよ!?怪人だって!!」


「レッドはん何飲む~?コーラ?ポ〇リ?」


「だから怪人!?悠長に飲み物選んでる場合じゃないの!!」


「つか、おジャ〇女どれみも見て―な・・・」


「正気かテメー?!あーもう、イエロー!怪人出たから出撃!」


扉に向かって叫ぶクロ、すると扉の向こうから返事が返ってきた。


「クロちゃんごめ~ん!あと1ページだからさ!怪人に待っててもらって!」


「怪人に待ってもらうヒーローとか聞いたことねえよ?!」


三人に出撃してもらうように奮闘するクロを横目にレッドとグリーンはナ〇ジャを再生していた、もはや『くつろぎモード』である。


仕事をする気がまるで無いヒーローたち、クロのストレスは限界寸前であった。


基地の外部についている巨大なスピーカーにマイクを接続し叫んだ!


「すいません怪人さん!!30分ほどお待ちください!!」


果たして三人は怪人を倒しに行くのか?!


頼むぞニチレンジャー!明日の平和は、君たちに掛かっている!!

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