第4話 ストレルカ
自らを「ストレルカ」と名乗った兵士達とそのリーダーの「クァエル」という男は略奪した物資と瑠斗を連れてその場から離れた。
「ここより南西約240km先に廃都がある。 そこが我々の拠点だ」
道中で様々な話をクァエルから聞かされた。
話によるとつい先週までノクという国で嘗てノクに併合されたギールという国の国民であった民族が独立運動を起こし、内戦にも発展していたそうだ。
ノクのギール人に対する弾圧が原因とされる内戦だがストレルカもその戦闘にギール解放戦線側として参加していた。
今彼らがここにいるのはギール解放戦線によって政府軍が打ち破られ首都が陥落し内戦がギール人の勝利に終わった為報酬を貰って帰っている所だった。
因みに最初瑠斗を捕らえていた彼らは政府軍側の傭兵団で任務を放棄して逃亡している最中にストレルカと出くわしたらしい。
「銃だ。 外界の者達がこの銃を齎してから全ては大きく変わった」
クァエルはこの世界についての話もした。
「銃とその技術が伝来したことによりこの世界のパワーバランスは一気に書き換えられた」
この世界は転移門と呼ばれるもので異世界と繋がっており、その先には瑠斗がよく知る、しかし少し異なる世界があった。
20世紀の終わりに第三次世界大戦が起き、ソ連の敗北に終わったがそれだけでは戦いは終わらなかった。
ソ連は国連呼称
そして転移門が開いて本格的に東西諸国がこの世界に干渉してきたのはここでは公暦1247年のことだ。
一斉に多数の転移門が開き、そこからは文化や技術など様々なものが伝来した。
その中でも最も出回ったのは銃と弾薬とそれの製造技術だと言われている。
世界各地で自然発生した転移門から不法に立ち入った
今では企業の既製品だけでなく製造技術を学んだ現地民による密造銃までもが出回っているそうだ。
クァエルから聞いた話では重税で苦しめられていた農民達に商人が旧式の自動小銃を売り与えるとその次の月には領主一族が所有する私兵部隊ごと滅ぼされた、なんてケースもあった。
クァエルの言った通り、この世界のパワーバランスは天地がひっくり返るレベルで書き換えられたのだ。
「最早奴らは神など信じない。その代わりに、銃という女神を崇めるようになった」
クァエルの持っている銃、AK-103は彼が昔交戦した親ロシア派
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
廃都ラクテール。
それがこの荒れ果てた土地に付けられている名だ。
嘗ては鉄鉱山からの豊富な資源で栄えた都市だったがもともと鉱山の規模自体が小さかったというのもあり主要な産業であった鉄鋼業は数十年と待たずに廃れ、職を失った人々は皆他の都市に移り住んでしまった。
この地で瑠斗はストレルカの一員、兵士として生きるための訓練を受ける機会を与えられた。
しかしクァエルの行った訓練の内容といえばそれはロクなものではなかった。
最初の訓練課程では体力練成と称してひたすら重装備での行軍やその他の筋力トレーニングのような簡素な内容でしかも3週間足らずでそれは終わった。
無計画と言わざるを得ない最初の課程を終えた後、いきなり射撃や実践形式の戦闘訓練が一気に詰め込めるが如く行われた。
クァエル曰く、「兎に角銃をマトモに撃てて俺の命令を聞ければいい」らしい。
しかもストレルカは、戦闘時はいつもクァエル一人が作戦を立てて部下達はそれに従うばかりだったという。
このような訓練が続けられてもう幾年もの時が経った。
彼の初陣は、4年後のオジョール峡谷で起きた武力衝突を発端としたウェスクキルタとノヴォスコの戦争だった。
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