第37話 期末のご褒美、そうだ塩原に湯治に行こう!

そういうわけで、期末試験に勝ったので那須塩原温泉にやってきましたー。」


 両手を高々と上げて元気よく璃澄が叫んだ。


 それを後ろを振り返りながら俺は見守る。


 仕方ないのだ、俺は車椅子に乗っていて璃澄が押してくれてるのだから。


 電動車いすだったら自分で操作できるのに、何故か璃澄は手動車いすに拘っている。


 

「だって私が押してあげられないじゃん。」


 以前璃澄に言われた言葉だけど……そうまでして俺に貢献して好感度を上げたいのかと思ったものだ。


 でも変態性さえ見せなければ璃澄は最高の女だとは思ってるよ、口には出さないけど。


 

「まぁ別に二人っきりというわけじゃないんだけどな。」


 現在俺達は那須塩原駅の構外に出たところだ。なんと新幹線で……しかもグランクラスを利用してたった1時間に満たない距離を新幹線でやってきたのだ。


 

「真生、璃澄ちゃん。例のモノ、そこにもう待機してあるよ。それと手続きは完了したよ。」


 俺と璃澄の他に親父が同行している。


 ある意味ではお財布と言われてしまうだろうが、俺達は学生なのだからそこは仕方がない解釈だろう。


 一番の理由はお金というよりは……



「凄いレンタカーだよな。レンタカーで痛車って父さん初めてみるよ。」


 リハビリ以外暇をしている俺はネットを散策している。


 その中で温泉地とコラボしたキャラクターが色々な温泉地で存在しており、そのキャラクターグッズ等が沢山出回っている。


 ここ、那須塩原もその一つであり、コラボ商品?の一つとして痛車レンタカーが存在するのだった。


 璃澄は中々のヲタクなので、真っ先に反応して湯治を目的とした聖地巡礼をしたいと言い出した。


 俺がこんなだから(一緒に)行ける場所も限られてくるので、同じ関東近郊であれば可能かと思って璃澄の案に賛成した。


 正確には試験の賭けなんかも関係しているのだが、いつもなんだかんだと色々してくれている璃澄の想いというものに応えたいという想いもあったといえばある。



「車椅子乗せるとなると、地元バスやJRバスだと迷惑かけちゃうからレンタカーというのはわかるけど……これは中々に壮観だな。」


 なんでも痛車フェスティバルにも出場していたらしいが、まさか俺が痛車に乗れる時が来るとはな。



「昔から北部関東の温泉地といえば、草津か伊香保か鬼怒川か那須塩原って相場が決まってるしな。」


 親父の謎理論が出るが、関東の温泉地で有名なのはその通りだろうな。


 あとは日光くらいか、関東以外や近隣の福島や新潟以外の人から知られていそうなのは。



 那須塩原の温泉ガールズのキャラクターが描かれた車に乗り込むと、まずは観光協会に向かう。


 専用のプリペイド的なカードが売られているので購入、他のグッズも売っているものは一つずつ購入。


 ついでに湯めぐりスタンプラリーも購入していた。期限は1年だから全てを埋めるために何度か通わなければならない。


 車椅子な俺を連れて全部の施設を廻るのは些か大変ではないだろうかと思っている。


「何回も来れる……のか?」

 

 俺が問いただすと、「お金の心配はしなくて良いぞ。」と、親父が返してくる。


 大体当たるぅのお金があるから心配するなという事だった。


 いくつかのコラボ商品や等身大パネルのある施設を廻ると、宿に向かって車を進めた。


 結構な数のグッズを購入したけど、病室には置けないので新居で整理だな。



 宿に着くと部屋に案内され説明を受ける。

 

 部屋の中には等身大パネルが設置されていた。


 従業員が出て行くと、璃澄は色々な角度から写真を撮影していた。


 時に場所を変え、俺と並ばせたり璃澄自身と並ばせたりして。


 夕飯を食べ終えてひと段落すると、露天風呂へ行こうとなった。



 露天は階段があったりと危険な箇所も存在するため、色々悶着があった結果俺と璃澄は一緒に入る事になった。


 混浴露天風呂のため可能な事だが……




「なぁ、なんで俺は璃澄に湯泥を塗られているんだ?」


「さっき一緒に入る事には同意してたじゃん。一人で入るのは危ないし、私が支えてあげるって。」



「そこについては同意したさ。見られるのは今更だし触れられるのも今更だから気にしてもしかたないし。安全を考えれば誰かの支えが必要なのは認める。」



「だけど、病院の時と同じで璃澄は何か身に着けてると思うじゃん?なんでお前までマッパなんだよ。」


 ムダ毛の一切ない、小学生がそのまま少女になりましたという体型。


 勿論必要な筋肉は付いているし、寸胴ではなくややくびれもあるんだけど。


 一部のロリオヤジには喜ばれそうな幼女と少女の中間と言ったら良いのか。


 とにかく隠すものが一切ない璃澄がそこには在ったのだ。



「久しぶりに見た私の裸はどう?むしゃぶりつきたくなった?」


 1年くらい前だったらなというのは正直な気持ちだが、今の俺は微妙な感じがしていた。




「湯泥って湯治にも良いって書いてあるよ、患部に塗って3分程待って……それに口コミや感想見ると大抵の人が良くなったって書いてあるよ。」


 そう良いながらも身体に塗って来る璃澄なんだが……なぜ乳首の当たりでこねくり回すんだ?



「乳首ドリルすな……」



「普通はこういうのは男子がやりたがるんだけどね……後で真生も私に塗ってくれ……」


「やらん。」




「やってくれないと、お〇ん〇ん塗る時しーこしーこ♪って良いながら塗っちゃうよ。」


「ぐぬ……わかった。塗る。塗ってやるよ。こうなったら湯泥塗り合いっこしてやるよ。」


 こういうのも売り言葉に買い言葉と言えるのか?



「よっしゃ言質とりましたー!」


 他に利用者はいないけれど、周囲への配慮のため声量は抑えている璃澄が妙にいじらしい。


「というわけで真面目に塗るね。」


 璃澄が乳首ドリルみたいな塗り方を止めて普通に塗りたくり始めたので少しだけ安心した。


 

「あのクソ女の毒素を抜く良い機会だからね。お〇ん〇んは念入りに塗ってあげる。」


 そういえば、あんな事があったからか、璃澄のきもうとに対する態度とかが超辛辣になっていた。


 今ではクソ女とか毒女とかは普通に口にしている。そうは言ってもあまり話題には出さないから多くはないけど。



「あれあれ~?何か大きくなってきたよ~。」


 半身が思うように動かないとはいっても、首から上や股間部分は普通に稼働している。


 ある意味では救いだけど、ある意味では地獄。ここが反応してしまったばかりに俺は寝込みを襲われたわけだし。


 どうせなら璃澄に最初をと思っていたのに、きもうとに奪われてしまったわけだ。


 こうしておちゃらけながら璃澄は言っているけど、内心はどう思っているのかわからない。


 

「なぁ、冗談抜きでそのままシてると出ちゃいけないものが出てしまうんだが。」



「出したら私に顔面パックしてくれても良いんだよ。」


「しねーよ。どうしてお前は変態方面に話を持っていくんだ。普通にしてればいい女なのに……」


 一瞬璃澄の動きがとまってきょとんとしていた。こいつ、変態だから清純系に弱いのか。



「変態はさておきで、あのクソ女の毒はどれだけ洗っても落ちてる気がしないのよ。だからこういうのにも頼りたいし縋りたい。本当なら私の膣で洗浄したいけど、それはまだ今の真生は赦してくれないでしょ?」



「私はきちんと同意の元でしたいし、愛がないとやっぱりダメだと思うんだ。私が全裸になったのや湯泥塗り合いっこしようってのも、実はリハビリの一つなんだよ。」


 塩原でも山の奥、新湯と呼ばれる地域は奥日光と同じで硫黄泉だ。


 匂いもするし、色も白濁としている。源泉から取り出された湯泥は患部に塗ると改善されるという話は良くなされている話だ。


 嘘か本当かの真偽はともかく、温泉そのものが戦国時代から湯治に利用されているのだから、あながち嘘とは言い切れない。


 湯西川温泉には逃れてきた平家が掘り当てたという話も聞くし、有名な文豪等が塩原で湯治したという記述もある。


「意識はしてないかも知れないけど、真生ってば若干女性の裸体や性行為に嫌悪みたいなのを持ってるでしょ?」


 そこについては否定出来ない。下半身は反応するし性欲がないというわけじゃないけど、自分から進んでえっちなものを見ようとしたりはなかった。


 高校生だったら、もう少ししゃがんでくれたらナースのスカートの中見えたのにとか考えたり、白や薄いピンクのナース服なら下着が透けて見えるのにとか考えたりするものだ。



 でも俺はそういう事は一切考えが過ぎっていなかった。


 女性看護師や璃澄にトイレや風呂を手伝って貰っている時にでさえ、邪な事は考えていなかった。



「そういえば、ここの風呂に来てからかな。異性の裸体について違和感をあまり感じなかったのは。」


 璃澄の全裸にツッコミを入れたのはその前触れ的なものなのかもしれない。


 そう良いながらちゃっかり股間に湯泥を塗っているのを俺は見逃さない。


 もうね、周りが見たらただのテコキングだよな。




「じゃぁ、私にも塗って。」


 何故か璃澄は俺の腿の上に乗った。あまり体重をかけないように足を踏ん張りながら。


 ぴくぴく震えているからこそ分かった事だ。



「私のあそこと真生の太腿が密着取材してるけど気にしないでね。」


 なるべく見ないように意識しないようにしていたのに台無しだな。


「それとも真生に付着してる泥を私が身体を合わせる事で移すという手段も……」


 流石にそれはまずい。胸くらいならまだしも、股間のモノが無事でいられるとは思えない。


 というか、なぜ今もまだ左手で股間に泥を塗っているのだ。マジで発射する〇秒前になるぞ。



「普通にしてくれない?」


 璃澄が渋々手を離した。その隙をついて俺は湯泥を手に取った。


「んっ」


 璃澄の首元に塗ってみると、悩ましそうな璃澄の声が聞こえた。


 構わず首から肩、脇からお腹と塗っていく。声は相変わらず悩まし気だけど気にしたら負けだ。


 胸の部分だけ肌色なのでなんだか妙なエロスが掻き立てるのは気のせいだろうか。


 太腿、脚と塗っていく。胸と股間と背中が残っている。


 璃澄が突然立ち上がり、後ろを向いた。


「背中も塗って。」


 璃澄の背中に湯泥を塗ると「ひゃぅっ」という可愛い声を漏らしていた。


 背中がくすぐったいというのは良くある話だし、璃澄もそうなんだろう。マッサージとか大変だよな。



 尻肉を塗っていると、俺の腿との接地面を塗ろうと手のひらを上に向けて差し入れる。


「あ……」


「ひゃっ」


 あろうことか、俺の人差し指が璃澄の穴に少し入り込んでしまったようだ。


「悪い。」


「抜かないで、もっと奥に……」



 やっぱり璃澄は変態だった。心底変態だった。泥の塊は若干ごつごつしているが基本的にはさらさらぬるぬるしている。


 入口近辺を刺激してしまったのか、璃澄はなぜかその虜になってしまったようだ。


「お前、健全って言葉を知っているか?俺達、健全から大分かけ離れているぞ。」



「じゃぁせめて敢えて残していたであろう前側を塗ってくれない?」


 璃澄は立ち上がって再び前を向く。


 垂れてきた湯泥が肌色だった胸に線を描いていた。なんとなくエロスを感じる。


 まともに見えるのと、見えそうで見えないのとではエロスのジャンルが違うという事か。


 もろ見えよりも、さりげなく見える方がエロいというやつか。


「わかったから中腰になってくれ。」


 椅子に座っているから中腰か膝立ちくらいがちょうどいい位置となる。


 円を外側に向かって描くように手を動かす。左手はある程度自由に動かせるが右手は思うように動かせない。


 左手が3周円を描く間に、右手は周回すのが精一杯だ。握力がかなり低下しているのも一つの要因だ。


 

「この動きって実はリハビリになってない?」


 璃澄が問いかけてきた。胸をこねくり回すという行為に目を瞑れば、左右でのこうした動きは脳と腕のリハビリになっているのではないかという事だ。



「その度に璃澄の胸を揉むのか?」


「私はいつでも良いけどね。出来る事なら生で。ほら、サラリーマンも良く言うじゃない?とりあえず生で!って。」



 それはとりあえずビール!の事だろう。このボケナスがっ


 

「あとはここ……だね。」


 璃澄は自分の股間を指して言った。


「やらなきゃだめ?それって色々アウトだと思うんだ。」



「お尻の穴に指を入れたんだから変わらないでしょ。これをここに入れなければ問題ないよ。」


 璃澄が未だにフルチャージ状態の俺の股間を指して言った。


 仕方なく、表面だけ……表面だけと頑張った。


 頑張ったんだよ。頑張ったんだけど、変態幼馴染がソレを許すはずもなく。


 まるでたわし洗いのように俺の手をつかって自慰的に塗っていった。



「さぁこれで3分経ったら洗い流すよ。」


 最初に塗り始めたところは3分どころか10分くらい経過してるけどな……とは言わなかった。


 

「その3分だけ抱き着いても良い?その、あそことかには触れないから。」


 こういう時にはっきりさせなければならない事がある。所謂言葉のアヤというものについてだ。


 あそことは言っているが、それが性器とは一言も言っていない。あそことは頭の事かも知れないし足の事かもしれない。


 

「あそことはお互いの性器という認識で良いな?」


「……少し違う。だって私は真生の腿に座るもん。それと足や膝がちょっとくらいは触れると思うんだ。態と動いたりはしない。」




「単純に心音を感じていたいんだよ。生きているって事を実感したいんだ。」


 言葉だけ聞いていればファンタジー世界とかでカッコいいセリフなんだろうけども。


 俺達は現実で全裸で湯泥塗れだからな。


 

「そのくらいならまぁ良いよ。璃澄には色々世話になってるしな。」


 璃澄が抱き着いて来ると胸と胸がごっちんこ、股間には璃澄の膝というよりは腿が当たった。


 流石に擦られるとまずいが、璃澄が動く様子はない。そのまま璃澄の腕が俺の背中で抱きしめられる。璃澄は約束は守るようだ。


 なんだよ、璃澄の鼓動まぁまぁ早いじゃんかよ。変態な事言っていても緊張してるんじゃんかよ。


 肩についている泥が顎についてしまってるけど、まぁ良いか。それはお互い様だろうからな。


 




「露天風呂は混浴なのかー……あ。」


 俺と璃澄が湯泥塗れで抱き合っているところに新たな入浴者が現れる。


 こんなとこ見られたら気まずいなと思ったら、新たな入浴者は全裸の親父だった。あれをぷらんぷらんさせて……


 女性専用の時間帯はあるものの、それ以外は混浴である。女性は湯浴み着が可能で男性もここに限ればタオル可ではあるのだが。


 

「お義父さん、これは健全な湯治行為です。」


 見られても体勢を一切変えない璃澄が熱弁を奮い始めていた。


 密着している胸から、若干璃澄の鼓動が早くなったのを感じた。

 

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