第36話 期末テスト
新たな新キャラ登場で、しかもその登場の仕方が強烈だったために忘れてしまいがちになっていたけれど、今度は期末試験に向けて頑張らなければならない。
体育の授業や体育祭等には縁がなくなってしまったけれど、それ以外はどうにかこなす事が出来た。
学業復帰もリハビリの一つになっていたと言えるかもしれない。
1年の後半の時、本当は転校でもした方が過ごし易いのだろうけど、意外にも誰も彼もが寄ってたかって質問責めにされなかったのは良かった。
そのおかげで二年に進級するのにも嫌な気分にはならなかったし、二年の一学期前半も問題なく過ごせた。
「なぁ、俺の貞操の方がいろいろピンチなんだけど。真生よりも先に奪われるかもしれない。」
休み時間、磐梯が唐突に言って来た。
「どゆこと?」
当然聞き返す事になるのだが。
「亜莉愛の愛が重い。」
「だからどゆこと?」
「もう既に両親には会った。まぁ久しぶりの挨拶から始まったんだけどさ。」
小学生の頃以来だから、ある意味では当然だろうな。同じように仲良くしますというわけだろうし。
ましてや彼氏彼女の関係になりましたというならば尚更の事だろう。
「それで両親と仲良くなって、週末遊びに来るようになった。ご飯を作る名目でさ。」
「そうなると土曜とか泊まって行けば?となるわけだ。まぁ百歩譲って泊まるだけなら良いんだよ。でも問題はさ……」
確かに献身的な彼女……将来を見越したってところかな。
「同じ布団に入るくらいは可愛い方なんだ。最初の内はそうだったんだ。でも段々と変わっていって、いつの頃からか離れないようにロープで俺と身体をくっつけたり……」
「最近では手錠で俺と亜莉愛が繋がってるんだ。」
「それは中々に変態だな。」
「百歩もう一回譲ってそこもまだ良いんだ。問題はさ、朝一のお互いのトイレが一緒なんだよ。」
「俺のは見られるし、亜莉愛のは見せられるし。」
それって俺達もあんまり変わらないな。俺の場合は持たれてるわけだし。
「それは確かに変態だな。可愛いのに。」
「それで、お前達は大人の階段は上ったのか?それともまだシンデレラか?」
「それがな。あれだけ密着したりしているんだけど昇ってないんだ。なんでもお互い結婚出来る年齢でないとって事で。」
「Bまでで止まってる。」
「Bまでしとるんかいな。」
「正確にはな、俺が浮気をしないように……」
「カラになるまで抜かれてる。」
「浮気なんかする気は一切ないんだけどな。好きな気持ちに嘘偽りはないからさ。ただ亜莉愛の愛が重くて俺はどうしたらいいのかわからんのだ。」
「いっそ一緒に住んでしまえば良いんじゃないか。やましい所のない証明にもなるし、一線は超えなくともイチャラブは出来るわけだろ。」
「まぁ亜莉愛は一人暮らしみたいだから、良いんだろうけどさ。」
磐梯は彼女の部屋に行くのが怖いという。
これまでのデートでも外で済ませ、磐梯の家に行く事はあっても彼女の家には行った事がないという。
磐梯曰く、なんか怖くて亜莉愛の家に行きたいと言い出せないらしい。
「俺の隠し撮りとかが壁一面に在りそうで怖い、変な拷問器具とかありそうで怖い、拉致監禁されそうで怖い。」
「お、おう。そうか。それは確かにその通りだったら怖いな、璃澄の匂いフェチが可愛いくらいだ。」
「それでも別れるって選択肢はないんだよな。それがまた怖い。」
「磐梯が順応すればなんの問題もないように聞こえるな。俺も最近璃澄の変態性を否定しないように身を任せてる。」
押してダメなら引いてみろ、引いて駄目ならスライドしてみろ、スライドしてもダメならぶん殴ってみろという事だ。
「そういやえっちしない理由って……」
「万一今子供が出来ちゃったら育てられないからだそうだ。避妊具や避妊薬は絶対じゃない、しなければ着床はしないからって。」
確かに学生である自分達には子育てなんて不可能だ。
磐梯は両親と一緒に住んでいるが彼女は一人暮らしで両親は遠くにいる。
二人が結婚するにしても時期尚早という事なのである。
「それなら貞操が奪われるというのは合わない気がするのだが、少なくとも18歳まではしないって事だろ?」
「それには色々続きがあってだな、ち〇この貞操は大丈夫だとは思うんだ。正確には普通の性交渉という意味ではな。」
「どういう意味かと言うとだな。俺か亜莉愛のどちらかの後ろの貞操が危ないんだ。この一言に尽きる。シなければ子供は出来ない、でも二人の関係性は高め合いたいというのが亜莉愛にはあってだな。」
「つまりはそういう事だ。子供の出来ない穴なら問題なくありませんか?若しくは……ってさ。」
「そこで今度期末テストで賭けをする事になってな。学年順位の低い方が高い方の言う事を何でも叶えるというな。もちろん命に関係しない事や公然考慮されたものに限るが。」
なるほど。そこで勝った方が負けた方に言う事を聞かせると。
彼女はそこで磐梯にそっち方面に進めて18歳まで迎えたいというわけだな。
もういっそ、入れて入れられる関係になってしまえとは……言えないんだろうな。
性事情も大分変ってるんだから、そういう関係があっても良いんじゃないかな。
一つ怖い事があるとすれば、それを璃澄が言い出さないかって事だ、うん。
「へぇ、期末で賭けするんだ。」
突然璃澄の声が乱入してきた。吃驚したなもう、璃澄の事が頭に過ぎった途端本人登場だもんな。
「私達も賭けをしない?順位の低い方が高い方の願いを何でも叶えるってルールで。もちろんえっちな事は要求しないし真生もしないよね。」
珍しくも璃澄の方からTPOを弁えた発言が繰り出された。
「まぁ無理難題でなければ。期末の勉強俺頑張るわ。」
「真生が勝ったら私を好きにしても良いんだよ。俺を一生養ってくれとかでも良いからね。」
それはそれで俺がダメ男になるじゃん。半身がどうのとかだからって駄目なやつジャン。
そんなわけで、磐梯の(後ろの)貞操のために、テスト勉強は一緒にやった。俺と璃澄と磐梯の3人で。
入れる方ならまだ良いんじゃないかとは思ったが、「俺は普通にしたいんだ。」という磐梯の力説により却下された。
勉強二日目からは学年が違うのに何故か長門亜莉愛も参加していたけど。
聞けば磐梯の彼女である長門亜莉愛、中間テストは学年3位だったそうな。
「
「
「相変わらず口の動きと発せられる言葉が違うんだな。」
俺は磐梯にそれとなく伝える。
「器用だよな。声が遅れて聞こえてくるよ、じゃなくて。声が違って聞こえてくるよ、だもんな。」
磐梯がしみじみと答えていた。磐梯も理解はしているようだった。
磐梯から聞いた話ではマラソン大会の練習も付き合っているそうだ。
本番は二学期のクソ暑い時期だというのにも関わらず、既に練習を始めているという事だ。
「揺れるパイ乙はないけどな。璃澄ちゃんと一緒で膨らむものがほとんどないから。」
前に磐梯から聞いた話だ。流石に面と向かって体型については言えないという事だ。
男だって、アレが小さいとか早いとか三こすり半とか言われたら嫌だろう。
外見や部位に好みの問題はあったとしても、大小や形で差別をしたらいけないんだよ。
おっぱいの歌が昔ネットに転がっていたけど、君ならどれが好き~♪と言ってるのに、最後に大きさで差別してはいけませんと言われるのだ。
「磐梯、大丈夫か?模擬試験、平均80くらいだろ。」
俺達は試験に出るよ~と先生が言っていた範囲から、模擬試験問題を作ってテストを行った。
問題は同学年の3人で出し合ったので不公平はない。
璃澄は全教科90点以上を確実に叩き出し、俺は二人の中間くらいだった。
このままでは中間の時と変わらない。
長門亜莉愛の模擬試験に関しては、本人から聞いた範囲から俺達3人で問題を作製した。もちろん磐梯が作った問題が多い。
理由としては彼女が露骨に嫌そうな顔をしていたからだ。
俺達この子と友人関係を築けてるのか?磐梯がいなければ関わる事なかったのでは?
「そんな事はないですよ。真生先輩達がいなければ磐梯先輩と再会して近付ける事もなかったでしょうから。」
珍しくも口と声が一緒だった。だからこれは本心だと判断して良いんだろう。
ちなみにこれは磐梯がトイレに行っている間の事である。
「小学生の頃は普通だったような気がするけど?」
璃澄が直球で聞いていた。
「今でも普通ですよ。ただ単に他が目に入らないだけです。」
これも口と声が一緒という事から本心なのだろうね。
「だから有象無象に声を掛けられても蝉の鳴き声と同じなんですよね。」
「あー、適度なら夏を感じるだけだけど、密集すると鬱陶しいというやつか。」
俺はしみじみと呟いたが、長門亜莉愛は頷いた。
「多少は仕方ないと思うんです。学生だから、異性にがっつきたいという気持ち自体には分かるんです。私も磐梯先輩にはがっつきたいという気持ちがありますから。」
黙ってれば磐梯も良い男だしな。身長もあるし運動も出来る。勉強も良い方ではあるからな、端から見れば優良物件というやつだ。
「だから私に言い寄って来る
そのための
同学年であれば、話や噂が回って誰と誰が付き合っているとなって不用意な誘いや告白なんてのも減るけれど。
「まぁ二人の付き合い方だし、俺達からは応援するよくらいしか言えないわな。」
「結婚式は呼んでね。」
璃澄さんや、それはまだ気が早いよ。
「だって二人が別れるという選択肢や未来は見えないよ。」
どんなヴィジョン・アイだよ。まぁ別れるくらいなら殺して死体を愛してやる~と言いそうなキャラ性だしな。
長門亜莉愛は妄想を膨らませてるのか、俺達のその後の会話は耳に入っていないようだった。
あっという間に期末テストが終わった。順位と合計点が張り出される学校のため結果の誤魔化しは効かない。
尤も、個人に返された後に張り出されるので各個人間での勝った負けたは分かってしまうのだが。
「あー結局中間と同じか。」
璃澄と亜莉愛が学年3位。俺は25位、磐梯が40位。なお、璃澄の保健体育は満点だ。
エロ……の意味ではなく、真面目に理学療法士を目指しての事らしい。俺からは茶々を入れられる雰囲気にはない。
こうして期末テストの結果から、女性陣の願いを男性陣がそれぞれ聞くという事が決定した瞬間である。
つまりは俺は璃澄のお願いを一つ聞かなければならない。えっちな事ではないと最初に約束をしているけれど、璃澄の事だからどう出てくるかはわからない。
「そういうわけで、真生。一緒に旅行に行こう!」
二人っきりになった時に璃澄が正面に回って高々と宣言をした。
夏休みに入ってから早々に車椅子でも移動可能な範囲での旅行が決まった。
磐梯達の方の事は聞くのが怖いので止めた。夏休みが明けたら聞いてみよう。
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