第34話 二年になって環境も変わる……いや変わり過ぎ

「二年生もあっという間に過ぎていく。」


 車椅子通学で半分程度の出席ではあるが、一定の成績を修めているのでリハビリにも集中出来ていた。

 これというのも璃澄を始め友人達の協力等もあっての事である。


 パラリンピックで流行ったというのもあるが、ボッチャでもして運動でもしようかとさえ思うくらいだ。


 心が晴れ晴れとしているわけではないけど、それなりにはゆとりが出来ていた。

 元母親と元妹の情報は完全に遮断している。


 璃澄にも磐梯にも他の友人達ににも探って欲しいとは言っていない。

 寧ろ近付かないでくれとも言っている。


 あの二人がどうしてようと俺には関係ない。

 役場に提出してある書類にはバッテンが引かれてるか、普通に削除されて消えているか。


 もう何も関係がないのだ。


 綺麗な終わり方ではないけど、今後人生のレールの上に連結したり同一線上を走る事はない。

 自慰洗浄のアリアなんてことはない。


 

「半分しか登校してないのに俺より中間の点数が全て上というのが納得いかねぇ。」


 磐梯が愚痴を言っているが、それは地頭と吸収力の差ではないかと思う。

 それと、頭を打った事でエイトセンシズに俺が目覚めたという線も濃厚だ。


「お前はナニセイントを目指してるんだよ。」


 そうは言っても磐梯は300人くらいいる二年生の中で50位以内に入っている。

 驚くべきは璃澄が10位以内に入っている点だ。

 あんなおバカキャラを装っておきながら、学業は良いのだ。


 そして俺はそんな二人の中間29位だ。


「お前29位なんだから肉奢ってくれ。」


 磐梯がなんぞやほざいているな。俺の方が順位上なのにな……


「それを言うなら、俺の方が順位上なんだから奢って貰うのは俺の方だろう。」


 言葉に関する麻痺はもうほとんどない。たまに何かの拍子につっかえたりする程度はあるけど。


「ねぇ真生。一位になったら何かプレゼントちょうだい。」


 磐梯に続いて璃澄がとんでもない事を言い出す。

 一位と言わず、何位だったら何のプレゼントという風に表を見せてきたのだ。


「なんだよ、これ。」


 一位の欄には真生に処女進呈と書かれている。

 他の二位以下も性に関する事ばかりだ。ふざけるな、全て却下だ。

 あ、別に璃澄がいらないというわけじゃない。そういう事で性的に進もうというのが良くないというだけであってだな。


「そういうのを目的に頑張るのはありだろうが、実際やるかどうかは別だろ。」



「じゃぁ期末で3位以内に入ったら私を膝枕して頭ぽんぽんナデナデ20分とかは駄目?」


 しかし璃澄は向きまでは指定してないな。これは俺の方を向いてついでに股間をくんかくんかしそうな感じがする。


「そんな事はしないよ。単純に堪能するだけだよ。私は変態は認めるけど変質者ではないから。」


 変態は認めるのかよっ


「あーはいはい。そういうイチャラブかどうかはわからないけど、俺がいない時にしてくれよな。」



「いや、お前最近彼女出来ただろ。」


 磐梯には俺達とは別に幼馴染がいる。

 一つ年下で今年同じ高校の一年に入学してきていた。


 小学校低学年の時に熱海に引っ越して、その後は石和、鳴子、祖谷、嬉野と温泉地ばかりを点々として戻って来たらしい。

 彼女とは引っ越す前に数回会って遊んだ程度なので、俺達は然程仲が良いというわけではない。


 その幼馴染の彼女……長門亜莉愛ながとありあ

 こっちに戻ってきて早々に、磐梯の元を突撃したらしい。


 俺が登校しなかった時の話だ。

 そしてそのまま付き合う事になったそうだ。

 突撃から付き合うまでの過程は……人の事なので割愛しよう。

 黒歴史というのは然るべきに語るからこそ黒歴史なのだ。


 この亜莉愛ちゃん……璃澄に負けず劣らず変態なのである。

 だから今回想する必要もないだろう、それも友人とはいえ他人の回想なんて。



 あ、そういう意味で自慰洗浄のアリアは存在したな……そしてそんなくだらないネタをお前の彼女で思いついてごめん。

 磐梯ごめんな。やっぱり今度肉奢るわ……


「せ~んぱい。やっぱりここにいた。」


 俺の病室にやってきたのは、短いスカートでショートボブの天真爛漫が似合う元気っ子……磐梯の彼女である長門亜莉愛だった。

 多分、磐梯を連れ戻しにきたと思われる。


 付き合ってるなら名前呼びすれば良いのにと思うが、その方が学生っぽくてなんか良い!だそうだ。



 二年になり、周囲の状況はそれなりに変わったけれど、新たな住人が増えた。

 それがこの長門亜莉愛なのだが……


私を放っておいて親友の所に行くなんて、私から逃げてどこに行くの?先輩は親友思いで優しいんですから。今週まだ二人っきりデートしてないのに?


 口と声が合っていない。


 ヤンデレとは違うが、恐ろしい者の片鱗を味わっている。

 ヤンデレと束縛の一部をこの子は持っている。

 長門亜莉愛は磐梯が好き過ぎて、高校進学のためにかつて住んでいたこの町に帰って来た。


 両親は現在有馬にいるそうだ。もちろん仕事の関係で。

 小中と転勤族で迷惑をかけてしまったため、高校進学については娘の意思を尊重したという事になっている。



真生先輩もそろそろお休みしたいですよね、真生先輩と璃澄さんは二人でいちゃいちゃしてれば良いんですよ。|真生先輩も献身的な彼女の璃澄さんと二人っきりになりたいですよね。《先輩は今から私といちゃいちゃしに行きましょう》」




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