第29話 倖の林間学校と友人達

「璃澄、暫く静かにしていて欲しい。」


 璃澄には暫く席を外して貰うように促した。

 大人しく部屋の外に出てはくれたけど……

 ちょっとおバカな発言で場を乱しはしたけど、俺がマイナス方向へ行かないように璃澄なりの配慮が方向を誤っただけだろう。

 そう思いたい。大人しく席を外して部屋の外に出て行く璃澄に、少し申し訳ない気持ちを抱きながら正面を向く。


「うん。多少さっきと重複するけど……5年生の林間学校で、皆でお風呂に入った時におっぱいの大きい子が何人かいたんだ。」

 小5で大きいって何を食べてるんだろうね。けしからん。

 欧米食に慣れ親しんだから遺伝子がおかしくなってるんだろうね。


「それで、大きいと大変とか異性の目が気になるとか言う話になって、その内の一人が糞兄貴に変な目で見られてキモイって話になったの。」


「その子のお兄さんは、当時中学生で……中学生だと性にも関心が深まる年齢だから仕方ないのかもしれないけど、その子のお風呂上がりとかその子に向ける視線がいやらしいって。」


「ネット小説とか無料漫画とかでも若年層の性についての話はあるから、その子はそういうのも読んでたみたいで、お兄さんがどういう意味で視線を送ってきているかがなんとなくわかっちゃったみたいで。」


 親世代でいうところのエロ本で得た知識というやつだろうかね。

 デラ〇ッピンとかアッ〇ーテキとか三こ〇り半劇場とか。

 サ〇でないだけマシか?


「一度見ちゃったんだって。その……お、お……おなっおなっおな中……」

 人の事強姦しておいてオ〇ニー中って言えねーのかよ。

 それにそのおな中だと「同じ中学出身」という意味の「おな中」に聞こえてしまうぞ。


「お〇にー中のところに鉢合わせしてしまったみたいで……しかもその子の名前を呼びながらその子の下着を握り締めて、匂いを嗅ぎながら……さらにはそのお兄さんは全裸だったって。」

 まぁそういう変質者的な兄は、流石にお巡りさんのお世話になった方が良いとは思うが、全国の妹持ちの兄が全員そんなんじゃないからな。

 全国の「萌える!お兄さん」達に謝れよ?


 しかしそれからどう飛躍すれば俺への罵倒に繋がるんだよ。

 親父と苅田さんが冷ややかな目で場を見てるじゃないか。

 まるで延々と自摸切りで、次で流局してしまいそうな時の雀士みたいな表情だぞ。スーチーパイに謝れよ。

 

「林間の後に、その子の家に遊びに行く事があったんだけど、やっぱり胸の大きい子達の胸元に視線が行ってたよ。確かにあれは気持ち悪いと思った。私は小さいからか全然見向きもされなかったんだけど。」

 お前の事情は聞いてないけど、まぁ言いたい事は少しだけわかる。


「階段を上る私達のスカートの中も覗こうとしてたし、私達も不用心だったけど、横になって足をパタパタさせてる所にやってきてガン見したりとか。」

 うん、とりあえずそのお兄さんとやらだけは通報しても良いと俺も思う。

 相変わらず、俺への繋がりは一向に見えないけど。


「それで、林間の時にそのお兄さんの話が出て、そういえば昔糞兄貴と風呂に入った時……あぁこれは私がまだ幼稚園の頃の話ね。と切り出してきて。」

「身体をベタベタ触られたっけな~、今思えばあの頃から糞兄貴だったわ~、って。」

 

 うん。その子小5だよね。中学生じゃないよね。恐らく倖はなるべく当時のままを再現して話してると仮定してるんだけどさ。

 そうだとすると、その子って随分辛辣な口調で日常を過ごしてるの?その兄の話をする時だけ?


「それで、兄のいる子達に白羽の矢が立ったの。みんな何歳くらいまでお父さんやお兄ちゃんとお風呂に入るのかって。」


「私は正直に去年まで、おにいちゃんとは10歳までって答えちゃったの。みんなはせいぜい7歳くらいだったのに。」

「そうしたら、信じられないとか、うそ~とかなって。その兄大丈夫?変なとこ見られたり触られたりしてない?ってなって。」


「私はそんなことないよと答えたんだけど……もう一緒に入ってないみたいだから大丈夫なんだろうけど、男はみんなケダモノだし父や兄という立場を利用して女に色々してくるものよ、気をつけなさいねって。」

「洗濯物とか箪笥とかも気にしないと、ナニされてるかわからないよって。」


「私もその時はそんな事ないと思ってたけど、さっきも言った例の子の家に遊びに行った時のお兄さんの様子を見て、『うわぁ~これはないな、ダメだ。』と思ったの。」


「でもうちのお兄ちゃんはそんな事ない、そんな事……でも私はそんな事されても多分許しちゃうんだろうなぁ程度にしか考えてなかった。」


「だってお兄ちゃんの事がす、す、好き……だから。」

 ここは敢えてスルースキルを発動しよう。ツッコミを入れても面倒だ。


「当然、寝る時にも続きみたいな話になって、今度は何歳まで一緒に寝てた?って話になったの。」

「流石に子供部屋だったから小3までは一緒だったけど、やっぱり私が10歳の時からは別々になったという話はしたの。」


 そういえば、風呂も部屋も大体同じ位の時期に別々になったっけな。

 今思えば別々で良かったよ。罵声浴びせられてるのに同じ部屋だったらその時点で死寝る……いや、死ねる。


「さっちゃん、もう高学年なんだし兄離れしな?と、ほとんどの子に言われたの。」

「みんなから言われたら……例えその場だけでも『うん。』と頷くしかないじゃない。」


「林間が終わって、例の子の家での事が過ぎたある時、林間の時に同じ部屋だったけど、お兄さんの事を悪く言ってたのとは別の子と二人で会う機会があって。」


「その子もお兄さんがいるみたいなんだけど、やっぱりたまに着替えを覗いたりスカートの中を見ようとする事があるみたいで。」

「でもネットで得た知識?を駆使したら、変な事はしなくなったって。従順?になったって。」


「その子の言う事は殆ど何でも聞いてくれるようになって、今ではゲボクになったって。」

「その子が何でそんな事を言ってきたのかというと……」


「さっちゃん、林間の時はあんな事言ってたけど、本当はお兄ちゃんラブでしょ。言葉の端々から伝わってきてたよ。」

「でもみんなの建前、好きとか言えないもんね。それで実はね、私もゲ……お兄ちゃんの事好きなんだよ。」


「だから私が知ってる知識をさっちゃんに教えてあげるね。これでさっちゃんもおにいちゃんとフォーリンラブだよ、って。」

 小5の子供が色々言葉知ってるなぁ。よくもまぁ次から次へと出てくるものだ。

 いくらネットで得た知識とはいえだ。


「世の中のお兄ちゃんなんてシスコンを拗らせたドエムなの。だから強く言ったり強く責めたりすれば、可愛い妹のいう事は大抵は聞いてくれるようになるよ。」

「ご褒美にたまに優しい言葉を掛けたり、着替えの一つでも覗かせてあげればイチコロだよ。」


「問題は、どのくらいの強度でどのくらいの期間言い続けたりやり続けたりするかだけど……」

「それは個人差があるから難しいけど、私のゲ……お兄ちゃんは2ヶ月もしないうちに堕ちたよ。」

「今では私の足を舐めたりするし、椅子になったりもするし、電気あんましてご褒美してあげればお小遣いもくれるし、って。」


 あー、それはその兄がドエムだからだろう?俺はドエムじゃねぇっつの。


「その子が参考に読んだっていうネット小説を教えて貰って私も読んだの。タイトルは……「NTRから始まる学校生活」ってやつで、お兄ちゃんがドエムになるルートを参考にしてっていわれたけど、結果的には全部読んでみたの。」

 あーうん、それってもしかしたら18歳未満は閲覧出来ないサイトでは?

 それにルートってなんだよ、WEB小説で分岐とかありかよ。


 というか、全部読んだって?そりゃさぞSとMについてやべぇ事が書かれてたんだろうな。

 そうでなければ罵倒は酷くならないよな。


「その子はね、もう少し大きくなったらおしりま〇こ開発して、しゃせーかんりして、どっちかのたまたまを私に捧げるようにするって。それで晴れて真の兄妹こいびとに成れるって言ってた。そして確かにそんな感じで書いてあった。」


 誰だよそれの作者、そんな話書いてんじゃねーよ。

 そしてその友達もそんな話読んでんじゃねーよ、いや。読んでも良いけど人に勧めてるんじゃねーよ。

 だから小5の会話じゃねーよ。こんな小学生は嫌だの典型に加えられるよ。


 ギルティなのはその友達二人とその作品の作者だな……もちろん倖もギルティなんだが。

 というか、なんで抑小5の時点で18歳未満閲覧禁止サイトが見れるんだよ。

 穴あり過ぎだろ。あれか、兄が何かを突破したのか。それともお父さんのIDとパスワード知ってるのか。


「でも私はそういうのまでは望んでないから……普通にラブラブしたいだけだからって伝えると。」


「じゃぁ言葉と態度だけで冷たくしてみたらどう?って。そして頃合いを見て優しくするの。それだけでもギャップ萌えもあってさっちゃんの事見てくれると思うけどなって言ってた。」


「一番効くのは死ねば良いのにとかの死ね系だね。次に有体だけどキモイだね。目線は細くウジ虫を見るみたいにすると良いよって。」


 流局どころか焼鳥たまり過ぎて、どうしようもない雀士達が3人いるんだけどどうすれば良いのさ。

 リャンハン縛りどころか、亀甲縛りを通り越してそのまま吊られてるよ。


「それで私もお兄ちゃんに振り向いて欲しくて……罵声から始めたの。」


 これでようやくスタートか。

 だってまだ気持ち良くて小野兄ィしてるところまで来てないもんな。

 ぜってー許さねえ。お天道様が赦しても、この俺は赦さねえ。

 その友達二人とその作者とそれを真に受けて俺に罵声を浴びせた倖を。

 こんなくだらねぇ理由で俺は来世にワンチャンかけようとしたなんて馬鹿みてぇじゃねぇか。

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