第3章 漂着! 新たな仲間と変な気持ち!
第11話 幼女を犯してみたか……/絵面が悪いからおやめなさい
ケモ耳&尻尾。
それは人でありながら、獣の愛らしさを得ることができる魅惑のアイテム。
それにメイド服が加われば、凶器と言っても過言ではない。
とは、猫の耳と尻尾を生やし、ワダツミが魔力で服を編んだのを参考にクラーラが創った魔術、『
「ほら、クラーラも早く早く!」
「嫌です。どうしてわたくしが、そんな男に媚びるだけの格好をしなければならないのですか?」
「可愛いから」
「可愛いですが?」
「そんな、あたしが可愛いだなんて……。照れるじゃない♪」
「あなたに言ったんじゃありません」
クラリスは、クラーラよりも自分の方が可愛いとか思っています。
たしかにクラリスは美少女ですが、同じく自分が美少女だと思っているクラーラからすれば、それは思い違いの勘違い。逆なのです。
クラーラがそう思うのには根拠があります。
それは、彼女からすれば遺憾でしかないのですが、男性の反応が物語っています。
ブリタニカ王国を出てからの道中もそうでしたし、タカマツでも、男性はクラーラばかりを見てクラリスには毛ほども興味を示しませんでした。
つまり、クラーラの方がモテると言う証拠。
それは転じて、クラーラ的には自分の方が可愛いと言うことになるのです……は、取りあえず置いておきましょう。
クラーラも……。
「あなたがそう思うのならそうなのでしょう。あなたの中では」
と、聞こえないように呟きながら、寛大な気持ちで
「で、どうなの? コレ使えそう?」
「使えません。そもそもソレ、この獣人のギフトですから」
話を戻します。
二人が噂を頼りに辿り着いた『猫屋敷』に足を踏み入れるなり、不自然極まりない歓待をしたのは、目の前でクラーラの魔術で拘束された上で正座をさせられている獣人。
妖描族と呼ばれている種族の茶髪の幼女の力は、気を許した相手に猫耳と尻尾を生やさせるギフトでした。
歓待するのは、気を許させる手段でございます。
クラーラは歓待された程度で気を許したりしないので被害はありませんが、食事からお風呂まで堪能してすっかり気を許してしまったクラリスは、しっかりと猫耳と尻尾を生やされてしまいました。
「あ、あの……命だけは……」
「取らない取らない! こんな素敵モードにしてくれた猫耳幼女を殴ったり蹴ったり刺したり突いたりなんかできるわけないじゃない! ね? クラーラ。しないよね?」
「え? しますよ? だって、完全に無駄足じゃないですか。魔術なら多少は参考になったかもしれませんが、ギフトじゃクソの役にも立ちません。これなら、素直にフクオカへ向かっていた方がマシでしたよ。と言うか、猫耳と尻尾を生やすギフトって何の役に立つんです? 無駄ですよね? 無駄の極みですよね? ああっ! なんだか、無性に腹立たしい! 拷問の一つもしなければ治まりません!」
と、言うことでさっそく、クラーラはオオヤシマの民族衣装であるキモノに身を包んだ獣人幼女を拷問しようとしています。
ちなみに、「オオヤシマ語が上手くなったね~」とか言ってるクラリスは無視します。
「ところでさ。猫耳幼女は、どうしてこんな事をしてるの?」
「それは、その……」
「クラリス。尋問など不要です」
「いや、気になるじゃん。だって、見ず知らずの他人にご飯やお風呂を用意して耳と尻尾を生やすだけじゃあ、この子に特なんてないんだよ? 赤字なだけだよ? 他に目的がないのに、そんな事をするなんて不自然だよ」
「言われてみれば……」
たしかに。
と、クラーラは一応納得し、クラリスの尋問に耳を傾けました。
その目的次第では、拷問は勘弁してあげても良いとさえ考えています。
「仲間が……欲しかったんだニャ」
「は? 仲間?」
「そ、そうだニャ! 魔王様亡きあと、うちら妖描族は四天王の一人に妖描族がいたせいで迫害されたんだニャ! そのせいで、今や同族と出会うのも困難で……」
だから、多種族を同族に変えて仲間を増やそうとした。
それを聞いてクラーラは、彼女のギフトが猫耳と尻尾を生やすだけの陳腐なモノではなく、種族を変えてしまえるほど強力なモノだと推察し、同時につくづく、ギフトなのが惜しいと思いました。
これが魔術の類いなら、性転換の方法にかなり近づけたはずですからね。と、残念に思っていたら、クラリスが瞳をウルウルさせて、幼女獣人の前に膝まづいたのに気づきました。
「可哀相……。そんなに酷いの?」
「酷いなんてもんじゃないニャ! もう虐殺と言っていいくらいだニャ!」
クラリスは、幼女獣人の境遇に、心の底から同情しました。。
そこがクラリスの良いところではありますが、クラーラに言わせれば同情するだけ無駄。
仕方のないことでした。
と言うのも、かつての魔王軍、その一翼だった魔獣軍を指揮し、最も人族を殺したのが、妖描族の族長であり魔王四天王の筆頭だった、銀獅子ことシルバーバインだったからです。
タムマロのパーティーメンバーであり、アリシアの兄でもあった、剣聖 ラーサー・ペンテレイアと壮絶な死闘の果てに相討ちになったことでも、この世界では有名でございます。
「クラーラ、拷問はやめてあげて」
「嫌です。それでは、わたくしの気がすみません」
「クラーラには実害がなかったんだから良いじゃない! この子が作ったご飯、美味しかったでしょ?」
「それでも嫌です」
「なんでよ! いくら拷問が好きだからって、こんな小さくて可愛くてオマケに料理上手な子を拷問するなんて人じゃないよ! クラーラは悪魔だ!」
「悪魔とは失礼な。わたくしはこれでも、シスターのはしくれ。故に、そこらに転がっている有象無象よりは人間ができていると自負しています」
自負しているだけで、実際は自己中心的なサイコパス。
クラーラは教会育ちなのに、愛とか思いやりの心が欠けています。
ただ、クラーラの拷問する気が失せないのは、半分はクラリスのせいと言えなくもありません。
もし、クラリスが涙ながらに訴え、
ですが、クラリスは欲情しています。
頬は紅潮してヨダレをたらし、幼女獣人の体を現在進行形で不必要なほど撫で回しているのが、気にくわないのでございます。
本人に自覚はございませんが、要は嫉妬でございます。
「もういいニャ。酷い目にあうのは慣れてるニャ」
もう半分はコレ。
語尾がイラつくからです。
クラーラは無表情を貫いていますが、頭の中では「なんですか「ニャ」って。キャラ付けにしても、もう少し捻るべきでは? 見た目が猫に近いからって、語尾「ニャ」とつけるなんて安直です。手抜きと言っても過言ではないレベルです」と、早口で文句を言っています。
「そうだ! この子って料理が上手いから、あたしたちの仲間にしようよ!」
「不要です。道中の食事は保存食で十分。美味しいものは、町についてから食べれば良いじゃないですか」
「いやいや、道中の食事も大切だよ! ね? 猫耳幼女は、保存食を美味しく料理したりもできるよね?」
「そ、それくらいならできる……ニャ」
ふむ、保存食を料理と呼べるレベルにまで昇華させられるのなら、一考の余地はある。
と、クラーラはシアン・カアンし始めました。
さらに、妖描族は獣人種の中で最も敏捷性に優れ、潜入や暗殺も得意分野。
情報収集させるのに、ちょうど良いかもしれないとも、考えています。
「よし! クラーラが考えてるってことは、ほぼほぼオッケーってことね。良かったね。これで、拷問されずに済むよ!」
「でも、良いのかニャ? うちと一緒にいたら、お姉さんたちまで酷い目に……」
「遭わない! だってあたしたち、強いもん! ね、クラーラ」
「まあ、弱くはないですね」
二人にはお互いに補いあわなければならないと言う弱点がありますが、一緒ならかつての四天王とだって良い勝負ができる……できるかもしれない程度には強いと、二人は思っています。
「本当に、良いニャ?」
「うん! 良いよ! だからまずは、名前を教えてよ!」
あ、これはもう完全に、この幼女獣人を連れていく流れですね。と、察したクラーラは、まあ、保存食を美味しく食べられるなら、それも良しとしましょう。と、無理矢理納得して諦めました。
ですが幼女獣人が……。
「う、うちの名前はマタタビ。よろしくニャ」
と、遠慮気味に名乗ったのを聞いて、何故かクラーラの胸の内に不安が生じました。
自分は何を不安に思っている?
どうしてマタタビと言う名を聞いて、こんなにも不安になったのでしょう。
まるでそう遠くない内に、世界が滅亡するとでも言われたような現実味のない不安が、自分の胸中を渦巻き始めた?
と、不思議に思ったのですが……。
「マタタビちゃんね! じゃあ、さっそく食べちゃおう! 一度で良いから、幼女を犯してみたか……」
「絵面が悪いからおやめなさい」
マタタビに飛び掛かろうとしたクラリスを魔術で止めたら、不安を忘れていました。
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