第2章 回想? 二人の過去!

第6話 あたしとクラーラの仲じゃない/親しい訳ではないですが?

 ドーゴ温泉で騒動を起こしたせいで、追い出される形でエヒメ地方をあとにした二人は、当初の目的地とは別の場所に流されて・・・・いました。

 予定では、船でホンシュウのヤマグチ地方へ渡るはずだったにですが……。


「ここ、キュウシュウだよね?」

「ええ、キュウシュウのオオイタ地方です」

「何で?」

「また、わたくしたちが乗った船が難破したからですよ」


 日頃の行いが悪いせいか、二人が乗る船は難破する宿命にあるみたいです。

 それはともかく、オオイタに流されてしまったのは、二人にとっては完全に予定外。

 本来なら、ヤマグチ地方からシマネ地方を経由して、オークニヌシと言う名の神様が一回死んで甦らせてもらったという神話が残っている、トットリ地方のヨナゴへ向かう予定でした。


「ここからホンシュウに渡るには?」

「フクオカ地方のモジと呼ばれている町から、海上を移動してヤマグチ地方のシモノセキへ渡るのが一番近いですね」

「それ、船は出てるの?」

「おそらく出ているでしょうが、正直言いますと、船にはもう乗りたくありません。あなたは?」

「あたしも、乗りたくないかなぁ」


 オオヤシマには、『二度あることは三度ある』ということわざがございます。

 それをタムマロから聞かされて知っていたクラリスは、もう船には乗りたくないと言ったものの、そうなると荷物とクラーラを抱えて、自分が海の上を走らなきゃいけなくなるのか。と、顔に出すほどゲンナリしました。


「ですがフクオカへ行く前に、クマモトへ行こうと思っています」

「クマモト? フクオカの逆じゃん! どうして……」


 そんなところへ?

 と、続けようとして、クラリスはやめました。

 二人がマツヤマの娼館で得た情報の中に、クマモト地方のアソと呼ばれている町に……。


「たしか、人を猫にする話が……」


 あったからです。

 その話は、要約するとこうです。

 昔々、アソに住む男が南アソまで行くことになったのっですが、アソから南アソへ行くにはヒノオ峠を越えるのが近道だから、その道を急ぐことにしました。

 だけど、どういうことか道に迷っていまい、そうこうしていたら日が暮れてしまいました。

 なので仕方なく、野宿でもと場所を捜したら、何故か森の中に家の灯りが見えました。

 そして、近寄ってみると大きなお屋敷が姿を現しました。

 こんな山の中に家が? 

 と、不思議には思ったものの野宿するよりはと、宿をお願いすることにしたそうです。

 ですが、これが大間違い。

 お屋敷の主は、その辺りでは見たこともないような美人だったのですが、人を猫に変えてしまう力を持ってたのです。

 どうして猫にしようなどと思ったのかは謎ですが、二人はその力を応用すれば、性転換も可能なんじゃないかと考えたのです。

  

「ええ、それがもし魔術、魔法の類いなら、一度見れば使用も改造もわたくしの思うがままですから」

「クラーラのギフトってどんな魔法や魔術でも使えるけど、知らないモノは一度見なきゃいけないってのが面倒だよね」

「あなたのギフトに比べればマシです。わたくしのギフトは、体験する必要がありませんから」


 クラリスはそう言わて、自分のギフトがクラーラのギフトより劣っているように思えて少しだけムカつきました。

 もっともすぐに、武術と魔法じゃあ、比べるまでもなく後者の方が複雑で強力だからそう言われても仕方がないと、無理矢理自分を納得させましたが。


「さあ、そうと決まれば、今日の宿を探しましょうか」

「りょーかい。じゃあ、取り敢えずはベップを目指そうか」

「そこが、オオイタの風俗街ですか?」

「うん。ここからなら、歩いても夕方までには着きそうだよ。しかも、温泉もある!」

「あら、それは僥倖ですね」

「でしょ! 娼館で、クラーラの魔術を使って一儲けして旅館に泊まろうよ!」


 そして、マツヤマでのリベンジをしてやる。

 と、クラリスは内心呟きました

 それと言うのも、二度と無駄毛処理をしなくて良いようにはなったものの、すっごく痛かったですし、丁寧に形を整えていたアンダーヘアまで根こそぎ抜かれてしまったことを、恨んでいたのです。

 ちなみに、リベンジとはもちろん、性的な意味でございます。


「それは構いませんが、部屋は別にしますよ?」

「えー!? 何でさ!」


 ですが、クラーラに出鼻をくじかれました。

 それでは風呂でしか復讐できない。

 いや、ドケチのクラーラが二部屋取ってまで自分を遠ざけようとしているのを考えると、一緒に入ってくれない可能性もある。

 と、瞬時に思い至り、クラリスは少し焦りました。

 

「だって同じ部屋だと、あなたの夜泣きがうるさくて眠れないんですもの」

「ん? 夜泣き?」


 が、クラリスが言ったことの意味がわからず、焦りは疑問へと変わりました。

 確かにクラリスは、夜泣きなどしていません。

 彼女は部屋に押し入れやクローゼット的なモノがある場合、絶対にそこで寝るようにしているのです。

 彼女はそこで、夜泣きなどする余裕もないほどスッキリして眠るために……。。


「あたし、オ◯ニーしかしてないよ?」

「はぁ、そうです……はぁ!? あなた、あんな狭い場所でオナ……オナ……」

「◯ナニー」

「ハッキリ言わないでください! え? じゃあ、何ですか? わたくしが夜泣きだと思っていたすすり泣きは……」

「あたしの喘ぎ声。ごめんね、聞こえてるとは思わなかった♪」


 実はこの子、小さい頃にした体験のせいで、覗きが大好きなのでございます。

 それこそ隙間から覗くだけで、ただ寝ているだけのクラーラをオカズにできるくらい興奮します。

 控え目に言って変態ですね。

 

「はぁ……。やはりこんな変態と、旅になんて出るんじゃありませんでした……」

「まあ、そう言わないでよ。あたしとクラーラの仲じゃない」

「親しい訳ではないですが?」


 相変わらず素っ気ないなぁ。

 と、思いはしても、クラーラが言った通り自分たちは親しい訳じゃない。と、クラリスも思いました。

 友情は感じているものの、二人はお互いの知識やギフト、戦闘技術が上手い具合に相互関係だったから、コンビを組んだだけ。

 旅に出た最初の頃は、今以上に喧嘩ばっかりしていました。

 初めて会った時など、クラリスはクラーラに殺されかけたほどです。

 あれは今から4年前。

 クラリスとクラーラが12歳か13歳になったばかりの頃。

 ひょんな事から、二人は出会いました。

 クラリスがお姉さまと呼び、クラーラが聖女様と呼ぶ女性が息を引き取った路地裏に置かれた、あの像の前で。

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