第3話 殺っちゃう?/殺っちゃいますか

 二人がタムマロに引っ張られる形で港に着くと、先ほどまで大暴れしていたと思われる龍神が、二人を睨みつけました。

 あのドラゴンたちを眷属と言うだけあって、かなりの大きさです。

 海から出ている胴の太さも長さも、眷属の三倍は優にあります。

 とても太くて長いです。

 それにあの目は、完全に二人を敵として認識しています。

 なのに攻撃してこないのは、二人に何かしらの要求をするつもりだからでしょう。


「お前たちか。我の可愛い眷属たちを無残に虐殺した罪人は」


 オオヤシマ語なので、クラーラは何と言われたのか細部まで理解できませんでしたが、おそらく、自分たちが眷属を殺したのか。と、問いかけられたのだろうと予想しました。

 そして、酒場のときと同じくクラリスに罪を擦り付けるために……。


「あたしは違うよ。アンタの眷属を殺したのは、この無駄にオッパイがデカい破天荒シスター」


 首を横に振りつつ、クラリスを指さそうとしました。

 ですがオオヤシマ語がわかる分、クラリスの方が早く反応し、先手を打ちました。

 クラーラは何と言ったかは理解しきれていないようですが、指を指されていることから、酒場の時と同じく罪を擦り付けられたと察したようです。


「クラリス。わたくしたち、旅のパートナーでしたよね?」

「うん。だから、あたしのために死んで? 心配しなくても、お姉さまはあたしがちゃんと蘇らせるから」

「まあ、面白い冗談ですね。どうしてわたくしが、恋敵とも言えるあなたの代わりに死ななければならないのですか? 馬鹿ですか? あんまり調子ぶっこいてると、あのデカい蛇の前に消し炭にしますよ?」


 オホホホと笑いながらではありますが、クラーラの額には青筋が浮かんでいます。

 ですがクラーラが怒っていようと、龍神には関係ないようです。


「ほう? 食いでがありそうなメスではないか。よろしい。その娘を生け贄として差し出すなら、眷属たちの件は不問にしてやる」

「眷属らの命、軽いわね。でもまあ、そういうことなら……」

「ちょっと、どうしてわたくしを両手で軽々と持ち上げて、まるで投げるかのように振りかぶっているのですか? まさか……」


 クラリスは何の説明もしませんでしたが、先ほどの交渉で自分を生け贄にでもすればクラリスは助けてもらえる取引をしたと、クラーラは察しました。

 もっとも、察してしまったせいで、「だったら、マジで消し炭にすんぞ。このエンゲル係数300%超えの異次元胃袋娘!」と、見た目の清楚さからかけ離れた台詞を吐いてしまいましたが。


「待て待て。まずは服や装飾品を外せ。でないと、食いにくいであろうが」

「あ、それもそうね。じゃあクラーラ、ちょっとそこに立って、じっとしててね」

「は? ちょっ、何と言ったんですか……って! どうして、わたくしの装備を外すのですか!?」


 クラリスの手つきは洗練されすぎていました。

 あっと言う間に上着を脱がされてタイツだけにされて憤慨したクラーラですら、思わず感心してしまうくらい流れるような自然な動作だったのでございます。

 きっと彼女が目を塞がれていたら、脱がされていると気づけないほどでしょう。

 

「やめなさい! ちょっ、本当にやめて! これ以上は本当に駄目です!」

「え~? 良いじゃん別に。減るもんでもないし、野次馬の皆さんも期待の眼差しを向けて「おおっ!」とか言いながらガッツポーズしてるよ? だから、はい、脱ごう。思いきってすっぽんぽんになろ」

「なるわけないでしょう! どうしてわたくしが、有象無象どもの面前で全裸にならないといけないのですか!」


 クラーラからすれば、自身の身体は全て崇拝する聖女に捧げるものです。

 だからどれだけ暑かろうと、彼女は頑なにいつもの服装をして、視線からすらその身体を守っています。

 それはそうと、クラリスは興奮していますね。

 クラーラの服を脱がそうとしながらも、不自然な内股になってモジモジしていますし、欲情していると丸わかりな顔をしています。

 

「ほらほらぁ~。あたしの力には敵わないんだから、抵抗なんてやめなよぉ。大丈夫、痛くしないから。女将さん仕込みのテクで気持ち良くしてあげるからさぁ」

「趣旨、変わっていません?」

「変わってない。あたしは真剣に、本気でクラーラを剥いてめちゃくちゃヨガらせたいの」

「変わっていますよね!?」


 ええ、変わっています。

 最初は、龍神が食いにくいと言ったから丸裸にしようとしたのですが、クラーラを脱がす過程で欲情し、場所もわきまえずに犯そうとしているのでございます。

 実際、クラリスはクラーラを脱がそうとしながら、自分の身体に空いている方の手を這わせています。

 そんなクラリスに、クラーラは「この、教養はあるくせに短絡思考で気に入った女の子を力ずくで犯すのが好きな強姦魔で大食漢! オマケとばかりに、視線で犯されるのも好きな露出狂の処女ビッチめ! キャラ盛り過ぎでしょ!」と、怒鳴っています。

 

「クラーラ、あたしもう……我慢できない」

「我慢しなさい! と言うか、わたくしに欲情しないでくれません!?」

「無理だよ。だってクラーラのオッパイもお尻も魅力的過ぎるのよ? あたし、見たい揉みたい吸い付きたい。ついでに穴にも突っ込みたいって欲望を押さえ付けて、クラーラと旅してるの。だから、こんなチャンスは逃せない。ほら、代わりにあたしの処女をあげるし」

「いりませんよそんな物!」

「良いじゃん! 絶対に満足させるから! おかしくなるまでイかせて、アへ顔ダブルピースさせてみせるから!」

「アへ顔ダブルピースって何ですか!? と言うか、こんの……いい加減にしてください!」

「うわっ! ちょっ……何すんのさ!」


 堪忍袋の緒が切れたクラーラは、砂鎖魔術サンドチェインでクラリスを大の字になるよう拘束しました。

 クラリスの馬鹿力なら数分ももたないでしょうが、とりあえずは魔の手からは逃れられ、リベンジもできますので正解と言えるでしょう。


「この……変態!」

「ぐえっ……!」


 そしてクラーラはモーニングスター……クラーラは明らかにモーニングスターなのに頑なに杖と言い張っていますが、誰がどう見てもモーニングスターであるモーニングスターを、クラリスのお腹に打ち付けました。

 クラリスは魔力が多いせいで、無意識に発散している魔力も多く、黄金聖女ゴールデン・クラリス状態ではなくても重装備の戦士並みの防御力ですが、トゲ付きの鉄球部分を力一杯叩き込めばそれなりに痛めつけられるようです。


「ク、クラーラ。あたし、そういう趣味わぁぶらっ!」

「誰が喋って良いと言いましたか。また許可なく喋ったら、今度は右頬ではなく鼻っ柱に当てますよ?」


 と、言いつつ、クラーラはクラリスの全身を余すとところなく打って打って打ちまくりました。

 

「ああ、気持ち良い」


 しかも、恍惚に顔を歪めて。

 散在好き放題してくれたクラリスが、涙目になって「や、やめて! 本当に痛い! 謝るからやめて!」と言いながら許しを乞う姿を見て、クラーラも興奮しtwしまったようです。


「次はどこを打たれたいですか? 肩? それとも太腿? なんなら、中途半端な膨らみがあるその胸を、整地して差し上げましょうか?」

「されてたまるか! マジでやめてよ! あたしじゃなきゃ5~6回は死んでるよ! ほら、周りの人たちもドン引きしてるでしょ!」

「あなたの変態行為にドン引きしているのです! 責任転嫁はおやめなさい!」


 いいえ、野次馬たちは鈍器を躊躇なく、全力でクラリスへ打ち付けるクラーラの行為にドン引きしています。

 そして、その回数が30を越えた頃、二人は自分達の周囲が薄暗くなっていることに気づきました。

 オマケに、妙に粘っこい雨がシトシトと二人の体を濡らしています。


「もう、そのままで構わん」


 どうやら、待ちくたびれた龍神が、二人を丸飲みにしようと大きな口を開いて迫っていたようです。

 クラリスを叩くのが気持ち良くて……もとい。熱中し過ぎて、クラーラは龍神が接近しているのに気付けず、クラリスは顔を執拗に殴られていたため、気づくのが遅れたのでございます。

 ですが、二人は慌てることはなく……。


「殺っちゃう?」

「殺っちゃいますか」


 と、お互いの意思を確認だけして、行動に移しました。

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