エピローグ 元勇者と幼なじみと元魔王、それから女神のその後
「本日より転校してまいりました、布路良めがみです。どうぞよろしくお願いいたします」
礼儀正しく挨拶を終えた少女は見慣れすぎたほどよく知っている。まさか。いや嘘だ。どうか他人のそら似であってくれ、と強く強く願う。
この世界の人間にはありえない、不自然な色の髪。慈愛と敬慕の微笑みを携えながら不思議なオーラを纏った少女は別人である証拠を探すのが無理なほどそっくりで。
「こちらの世界――国のことを学ぶためにやってまいりました。人間――クラスメイトに皆様と同じ学び舎に通えることを嬉しくおもいます。今まで女神――少し変った生活を送っていたのですが一日でも早く下々――皆様に捧げ物をもらえ―――仲良くなれるよう努めます」
だめだ、もう確信犯かってくらい証拠が揃いすぎてる。あかりも俺と転校生を交互に見やり、桃音は元魔王特有の魔法を放つ寸前なほど感情が昂ぶっている。
「ちなみに将来の目標は世界平和です」
極めつけは目があった瞬間、俺に微笑んだこと。額をおもっくそ机にぶつける。夢か幻であってほしいのに、無情にも額がジンジン痛むだけ。
どうしてだ。どうしてよりによってこいつが。嘘だ。
自己紹介とホームルームを終えて、一限目に入るまでの短い時間。クラスメイト達が集まりかけたけど、転校生がまっすぐ俺のもとへ。
「あなたの助言のとおりに、人として生きてみることにしました」
違うよ。俺は異世界でのつもりで言ったんだ。こっちの世界でなんて一言も言ってねぇよ。
「改めまして。今日からよろしくお願いします。クラスメイトとして。この世界の後輩として」
クラスメイト達がざわついている。あかりと桃音がこちらに近づいてくる。ようやく安定しかけていた生活に、また新たな頭痛の種が現われて。
「嫌だ!」
と、女神フローラにむかって叫んだ。
完
元勇者と幼なじみと女神、ついでに元魔王 @a201014004
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