亡き院長先生を思う
先生と言っても色々ある。
学校の先生、塾や習い事の先生、人生においての先生(これは先輩か?)、などなど。
今回の話は病院の先生についてだ。
幼少期にお世話になった小児科の先生は、おそらく、ワタシが医者の良し悪しを決める基準に大きく影響を与えていると思う。
ワタシは幼い頃から、体が弱かった。
生まれたときは未熟児だったらしいし、生後半年くらいに腸重積を発症した。発見が遅れていたらあわやの事態になってたと言うのだから、赤ん坊だったワタシの様子がおかしいと気づいてくれた大工さん(顔も知らないけど)には、感謝がつきない。
そして、腸重積の治療をしてくれた小児科の院長先生は、命の恩人と言って間違いはないだろう。
とは言え、さすがに赤ん坊の記憶はない。
だがその病院へは、小学生の頃もお腹が弱いのと頭痛が酷いのでよく通っていた。
今思い返すと、便秘症だったのが一つの病因だったんだろうけど──
当時は、今と違って病気について調べる便利なツールなんてものはない。分厚い「家庭の医学」みたいな本なら自宅にあったが、読まれた形跡はほぼなかった気がする。
そうなれば、子どもが痛がればまず病院へ行くようになるのは仕方ない。そして、ワタシの母は薬を飲んで寝てれば治ると考えるタイプだった。
ワタシがどこかが痛いとなれば病院に行き、帰宅したら布団に押し込めるわけだ。
幼い頃は、いつも薬を飲んでいたような気さえする。
便秘症が原因の腹痛だったとしたら、最悪なやつだ。寝てばかりは腸の動きが悪くなる一方だから。
それだけでなく、頭痛も発熱があろうがなかろうが寝ていろの一点張りだったな。
寝てれば治るってもんでもないって、誰か過去のあの人に教えてやってくれ。
まぁ、実際、発熱もよくしていたから、医者でもなんでもない母親からしたら「寝てなさい!」としか言えなかったのかもしれない。忙しい家だったしね。
おかげで、隠れて漫画を読んだり寝たふりをするのが上手くなってしまった。
それから中学の頃、偏頭痛が酷くなり検査検査の日々で部活を退部せざるを得なくなった。
(実は卓球部で、本気で強くなりたいと思ってた)
周囲の目が気になる年頃でもあり、気が弱ってた当時のワタシは、俯き加減で陰鬱な感じに人の目には写っただろう。
軽くいじめにもあって不登校になる、少し前だったか後だったか──
お世話になっていた病院の院長が他界された。
衝撃はあっても、とても悲しいと言う感情はなかったし、今思い出しても、かなりの高齢だったので、天命を全うされたのだと思っている。
ただこの時、ワタシは不思議な体験をした。
夢を見た。
年老いた院長先生がにこにこしていて、幼いワタシはお腹が痛かったのか、めそめそしていた。
嗚呼、病院に来たのかと思っていたら院長先生が──
「なこちゃん、もう大丈夫だから。少しずつ体は丈夫になるからね」
と言って消えてしまい、ワタシは目が覚めたのだ。
中学に入ってからは総合病院に通い、町医者である院長先生に診てもらうことは減っていた。
またその頃、院長先生は体調を崩され、点滴をしながら診療にあたり、むしろ患者が院長を心配することもあったので、元気ににこにこ笑う姿を思い出し、なんとも不思議だなと思った。
母親に話したら、その答えがすぐに分かった。
「院長先生、亡くなったのよ。もしかしたら、なこに会いに来てくれたのかもね」
よほど、ワタシは院長先生に心配をかけていたのだろう。腸重積からの付き合いだから、10年以上お世話になったのか。
母が言うには、親に対してはものすごく厳しいことを言う小児科医だったらしい。ワタシの中では優しいおじいちゃんなのだが。
薄情なことに、今はもう、院長先生の顔をぼんやりとしか思い出せないのだけど、その夢の中で、ほわほわと温かく笑ってくれていたことなら思い出せる。本当に、温かい人だった。
まぁ、それからも便秘症と偏頭痛は根強くて、ちょいちょい苦しむことは今でもあるけどね。
でも……あの頃みたいに熱を出すことは、確かになくなった。頭はちょいちょい痛くなるけど。
人生の節目でかかわる病院の先生方には、本当に恵まれている。そう思えるのはこの院長先生との思い出があるからかもしれないな。
まぁ、信用ならん医者とも出会ったことも、あるけどね。
それでも、多くの先生は真剣にワタシやワタシの家族に全力で向き合ってくれている。
時に厳しく叱られることもあるが──
「とりあえず薬だしとくね」
これはない。
大人になってから、とりあえず抗生剤を出すような医者とは、ほぼ出会っていない。皆口を揃えて「出来れば飲まない方がいい」と言う。
今のかかりつけ医は、処方した薬が合わなかった時に「ごめんね、辛かったね」と謝ってくれた。
(漢方にも副作用があるので、合わないと感じたら飲まないがことが、意外と大切みたい)
謝るなんて当たり前だけど、当たり前に出来る医者ばかりじゃない。
厳しくあるときもあれば、謝ることもあり、優しくよりそう。
亡き院長先生もそんな方だったと思うが、欠点は、自分の身体に鞭を打って診療していたことだ。
そういう時代、だったのかもしれない。
でもそれは、患者が見ても心配でしかなく、やはり、健康な医者に診てもらった方が安心する。
こういった背景があり、話し方にも配慮が出来て、かつ、健康な医者でないとどうも安心できない。
(医者の不養生って言葉があるように、たまに不健康そうな医者にも巡り合うものです……)
とりあえずの薬で片付ける医者は特に信用出来ないと思っている。これ、意外と整形外科率が高いのは、ワタシだけだろうか?
あ、皮膚科もだ。
この2つはなかなか、これぞと言う先生に出会ってない。
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