第5話戦闘
まるで、彼は渋谷のスクランブル交差点を歩くサラリーマンのように、自然に、真っ直ぐ目的地へと向かってくる。ぴりついた戦闘の雰囲気など関係なしに。
がぎ!!!!生き物の骨と金属がぶつかる鈍い音がした。摩擦で生まれた焦げ臭いにおいがこっちまで漂ってくる。
「いっ!!!!!」
水戸は今までに体験したことがないほどの圧力を目の前に感じていた。今まで戦ったことがある誰よりも強いかもしれない。
「あぶねえ!!!」
町が弓を放ってくれなければ、サラリーマンの刃筋が首筋に当たっていた。
「ふう。一回でこうなるのか。」
持っていた骨がパキパキと割れる音がする。一秒後には粉状の物質となって、消えていた。
「まあ、いい。まだあと40本はある。」
たったの一回で膠着状態になると判断したのか、サラリーマンは鞄からまた何かを取り出そうとした、、、が。
「させませんが。」
町はバッグに矢を放つ。それはバッグに着弾した瞬間にドカーン、と爆発した。光と音の情報が脳につき刺さり、辺り一面に煙がまう。
「お、いい感じ。」
「いえ、手ごたえはそんなにありませんでした。中身に当たればもっと派手に爆発したはずです。」
彼女の言葉通り、煙が晴れたとき。彼の鞄は弓矢が表皮につきささっているだけで無傷であった。
「あちゃー。」
サラリーマンは何もなかったかのように鞄に手を突っ込む。
「一応、鞄の中は熱で100度ぐらいになっていてもおかしくないはずなんですけど。」
彼が次に手に取ったのは、その服装にそぐわないロケットランチャーであった。南極で一番シュールな絵柄がここに生まれているといってもいい。
「ロケット、、体で受け止めるのはたぶん無理だよな、、、」
「いや。狙いは私たちじゃないでしょう。おそらく、マドレーヌさんが乗っている車です。」
町はそういいながら、大急ぎで次に打つべき矢を考える。さっき使った爆発する矢は当てるのが難しい。ロケットに当てるなんてことはたぶんできない。あと、ネットが出て捕縛する矢と、発信器をつける矢、毒矢三種類、その他さまざまあるがこの中で使えるとしたら捕縛する矢、ぐらいだろうか。
「マドレーヌさん、ロケットを避けれる装置、取り付けてあります?・・・・ないですよね、知ってました。」
水戸はのんきにもたぶんないであろう確認をしていた。
「水戸君、足もってもられませんか?」
弓をセットし、そういった。
「え?」
突然飛び出したその発言に、ポカーンと水戸は口を開ける。
「高いところからの方がもちろん狙いやすいんで。」
「え?」
「速くお願いします。」
彼女は一切表情を動かさずそういった。
「あ、ああ。」
彼は仕方なくその人形のように細い足をそおっと、持ち上げる。
「これでいいですか?」
「もうちょっと、高くお願いします。」
「こういう感じ?」
「はい。ここから絶対に動かさないでください。動かしたら私たちが吹っ飛びます。」
んな、むちゃな。と、彼は思うが、口には出さなかった。そんなことを言って実際に吹っ飛んだら元も子もない。
町は無言になり、真っ直ぐとロケットを見つめた。発射されるロケットの軌道上に、真っ直ぐ当てなければマドレーヌごと車は粉々になるに違いない。
発射準備が完了したようで、サラリーマンはロケットで狙いを定め始めた。俺たちに。なるほど確かに、この態勢の俺たちを狙った方が絶対いい。
「まずそうなんですけど」
「まずいですね。彼の立場からすればそれはそうなるんでしょうが。」
「あてれば止められる?」
「止めれるわけないですね。ある程度威力抑えられるぐらいです。」
・・・・・
「今から逃げても、間に合わないかな。」
「十中八九間に合わないでしょうね。」
水戸の顔が真っ青になった。
「どうすればいいと思う?」
「ちょっと待ってください。何とかなるはずです。あと3,2,1,」
爆音と閃光の二つとともに、ロケットが発射されると同時に、彼らの身体は宙へと浮いていた。
「いっ!!!!!どうなってるんだ。」
「間に合ったようですね。」
何かの上に乗った状態から、何かの内部へと引き寄せられる。
「お疲れー。危なかったね。」
「マドレーヌ様、お疲れ様です。」
中にはマドレーヌがいた。
「内装も見覚えがあるし、、まさかここって、、、」
「そうよ、ここはさっきの車。実は、ボタン一つで飛行機にもなれるのよねー。」
その準備に10分間が必要だったのだろうか。
「まあ、中国最強と推測されてるやつと相対して、疲れたでしょう。お風呂入って、ゆっくり休みな。」
「え、中国最強、、、、、ヤバい奴じゃないねーか・・・・・・・・・・・・・・」
そういうと、それ以上話す気力もなく、安心感で彼はあっさりと意識を手放したのだった。
「起きて、水戸君。」
「・・・・・あと5分だけ、おねがーい。アレク。」
・・・・・・
水戸はがばっと、飛び起きた。
「聞きました?」
こくり、とうなずくマドレーヌ。笑いそうになるのを必死にこらえながら、といった様子だ。
「忘れてください・・・・」
ゆでだこのようになった顔の、消え入りそうな声で水戸は言った。マドレーヌはその声を聞き、妖艶に笑った。
「たぶん、忘れないわ。」
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