魔石2個 ラキル・マノアーグ

 あたし、ラキル・マノアーグ。17歳。

 で、この子はメアリウドという魔石。自在飛翔術で空中移動できる優れ物なの。

 この二年間で、魔石研究はほとんどマスターしてストーンマスターライセンスも取得。ストーンレベルは五つ星。つまり、あたしは、一流ストーンマスターに認定されたわ。

 ふふふ〜ん!! この子メアリウドのおかげ様様よ!! どんなストーンマスターたちからしたら無双のストーンテイカーなんだから。


 ストーンテイカー養成所は同期生のハラディ、ゼムフ、オールサイア、ピーロシル、ティンスノの5人はあたしの話仲間みたいな連中で、何かと小生意気な低レベルな会話で馴れ合った仲なの。

 養成所上がりの話仲間たちとは、魔法石話術で宝石魔力を利用しアドレスネットワークしては繋がってる関係を保ってるわ。


 そんなある日のこと。

 魔石犯罪阻止を元にして設立された魔力不法利用審議委員会からマノアーグ家に霊導話器をかけてきたわ。


「もしもし、マノアーグのお家の方ですか? ラキル様はご在宅でしょうか?」

「あ、もしもし……あたしが当のラキルですが、何のご用でしょうか?」

「あ……ダノディワル・セルド・ダヌリヤーニナ氏が釈放され、17歳であられるあなた様に魔石不法所持の権利力が移りましたことをご報告しに霊導話器でお掛けしました」

「権利力ってなんですか?」

「未就学児には権利がかけられない為に保護者が代わりに容疑がかけられるシステムなのです。ですから、17歳からは社会人と見なされ、ラキル・マノアーグ様には、魔石犯罪者としてご連行させていただく通知をいたしたのであります」

「だってあれは、幼くてまだ光る石が何なのか分からなかったのよ」

「審議委員会施設内の拘置所で、お父上様の言及ではラキル様の衣装に魔石は隠されたと報告が入っております。それは立派な犯罪行為です。ご同行お願いします」

「もし、あたしが拘置所行きを拒否したらどうなりますか?」

「聴取拒絶の逃亡犯として罪状が重くなります。そうならないように魔法の国が総力上げて罪を軽くさせようとご連絡いたしました」

「物心つくかどうかの過去を掘り上げて罪を移す方がおかしいわ。あたしは屈しませんから。では」


 ガチャンと受話デバイスを霊導話器に戻したあたしは、逃亡の支度を早めにしといたわ。だってあたし……絶対に悪くないもん。


「魔法石話術で呼び出すからビックリしたぜ。一応は逃亡資金はこんだけ持ってきた。こんなの幇助罪だから見つからないようにコソコソ持ってきたんだぜ。ホント、悪いのは魔力発動する魔石なのに人間社会を巻き込んでよ。まったくだな」


 ピーロシルは長々と説明口調で文句言ってあたしんとこにやってきた。でも、あたしをかばってやったのだから感謝するわ。

 次から他の仲間も全員あたしんとこにやってきて資金援助してきたわ。


「大丈夫か? ラキル、僕は君が心配だよ。審議委員会ってとこ、しつこく追う機関だからさ、気をつけなよ」


 心配症のゼムフが泣きっ面しては介抱するように慰めてくれたわ。


「みんな。資金もそうだけど、心配かけてれてありがとね」

「水臭いな。仲間じゃんか。お前が悲しんでるのに、養成所同期生がよそよそしくしてちゃダメだろ。みんなは一心同体さ。励まし合うのはお互い様だろ」


 ハラディは、この中でもリーダーシップ取れるお兄さん的に頼れる仲間の一人よ。あたしとの別れ間際に締めの感動なセリフをカッコよく吐きだしたね。ホント、ハラディはカッコいい奴だわ。

 こうしてあたしは、逃亡の旅をしながら魔石メアリウドと共に長い旅路の果てまで歩き始めた。途方も無く当て所ない遥かなる世界を求めて――。

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