お姉ちゃんは私と遊びたい

 一回のリビングで色々と考え事をしていたらお母さんからメールが届いた。


『昼は、カップ麺とか食べてね。後、夜は外食でいいよ。後でお金は返すから』


 時計を見れば、もう十二時だった。

 ここに戻ってきたのが、十一時くらいだったから、一時間近く考え事をしていたことになるのか。


 それは置いといて返信をしないと。


『お腹すいてないから昼はおやつ食べる。外食じゃなくても私、晩御飯作るけど』

『おやつも程々にね。あなたの料理が瑞樹ちゃんの口に合わない可能性があるじゃない』


 なんと失礼な母親だろうか。

 あなたのいない時間で私の料理スキルはかなり上がったんだぞ。

 と返信するのも面倒臭いので適当に、


『なにやつ』

『じゃあ、そういう訳だから。私たちも、今からお昼休憩。じゃあ、いい子にしとくんだよー』

『へいへい』

『あと、三日後から新しい学校よ。宿題残っているなら早めにね』

『り〜』


 ……っと。会話は終わったかな。

 今から、夜まで暇だな〜。なにやるべきか。

 部屋でゴロゴロか、新しいこのお家を探索とか。

 それこそ宿題をやるべきなのかもしれないけど。

 そんな大量の宿題って訳でもないから、明後日で一生懸命やれば終わるだろうし。

 かと言って、お姉ちゃんのところに行くのも、なんだか気まずい。

 あんな会話をして、逃げ出して、冷静になって考えるとかなり大胆な事をお互いにしていたと思う。

 多分、お姉ちゃんが私のことを覚えていたことに舞い上がって、変に口走ってしまっただけなのだ。

 私が、お姉ちゃんのことを好きと言ったのも、嬉しさの感情が溢れ出した所為だと思う。


 ……まぁ、ポテチでも食べながらテレビでも見ようかな。

 さっきまでの事は、水に流してテレビを楽しもうではないか。

 そんな風に、来たばっかりの家で、全力でくつろぐことにした。



※※※※※※



 で、テレビをつけようとしたのだが。

 その前にテレビ台の、収納スペースに素晴らしい代物を見つけてしまった。

 プレイ・スタジオ5。略してプレスタ5。

 それは今現在、めっちゃ品薄状態の大人気ゲーム機だった。


 ……遊びたい。……めっちゃ遊びたい。

 確か、画質がすごい良くなってるらしいし。ぬるぬる動くとか世間では聞く。

 だが勝手に遊んでいいものか。

 これは流石に許可がいるだろう。

 などと考えていたその時、


「何してるの?」

「どひゃあ!」


 突然に背後に声が当たった。

 思わず飛び跳ねる。

 お姉ちゃんはステルス能力が高すぎる。 

 そう思えてしまうくらい、全く気配を感じなかった。


「なぜここに!」

「なぜって。お昼ご飯食べに来たからだけど。……で、てんちゃんは今何してるの?」

「いや、このプレスタで遊びたいなって。……ダメかな?」

「いいけど」

「やった! 愛してるお姉ちゃん」

「私も。……けど、ゲームソフトはまだあんまし無いよ」


 ……私もって。

 なんで、こんな勢いで出たお世辞にガチの返答をされなきゃならないんだ。

 こんな簡単な発言だけで、すぐに意識が向いてしまう私は、おそらくバカだ。

 そう思案しながら、平静を保ちつつ返事をする。


「いや、全然大丈夫!」

「てんちゃんゲーム好きなんだ」

「まぁね。かなりのやり込み勢だよ私」

「じゃあさ。一緒にゲームしない?」


 それは嬉しい提案だった。

 お姉ちゃんと親交を深めるいい機会だと思った。


 私はお姉ちゃんと仲良くなりたい。

 心の底から愛してしまわない程度に。

 だから私は、こう答える。


「するする!」

「じゃあ、ご飯食べてくるから、それまで待ってて」

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