第5話 例えばテレビを見てる時のこと
外は暗い。田舎に住んでいることもあって、秋になると静かだ。風が冷やっと肌を掠め、ここももうじき雪景色に変わるか…なんてことを思い浮かばせ…扉の中へ。
「おかえり」
温もりのある光、その中に居たのは…ごろ寝状態の嫁。そして、にぎやかそうな話し声は…あぁ、今日あの番組やってるんだっけ。
「帰りました。…ごはんは?」
「んー。もうちょっと後でいいんじゃない?」
「了解」
靴下を脱ぎ、風呂場へ行ってじゃぶじゃぶと足を洗う。靴下はそのまま洗濯かごへ。
「んー…まぁ、いっか」
「なに」
「いや、さ、この人名前なんだっけと思って」
「は?」
「名前。なんか、つっかえてさ」
「はぁ…よくわからんことを」
「この茶髪の人」
「あー、なんだ、あれ。…あれ」
「出てこないねぇ…」
暫くテレビを黙って見続ける。
面白いところは小さく笑い、お互いにテレビを見続ける。
「あ、」
「あぁ、山本だ」
「私もでてきた。山本」
スーッと消えていった疑問に、お互いに満足する。
「…そろそろごはん食べよっか」
「ん」
ごろりと転がり起き上がる嫁。対して俺は、ごろっと寝転がる。
「手伝ってくれてもいいんだけど?」
「んーーー。」
クスクス笑うと、諦めたように台所から声がした。
「机の上だけ綺麗にしておいてね」
…これは、甘えかな。
分かってたかのような声に、何も言わずに起き上がった。
なんでもじゃないけれど、なにかとお見通しなところ。嫁も、俺も。
【例えばテレビを見てる時のこと】
夫婦だからってラブラブとは限らない 茶子 @hgsjn
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