第4話 例えば夕ご飯を食べる時のこと
「晩ご飯、豚丼でいい?」
「うん」
「それとも濃い味付けのおかずにする?」
「うん」
「………」
「……」
「え、どっち?」
「豚丼でいいよ。白飯食べるから」
「あー………うん」
納得できなさそうな顔を横目に、俺は携帯で漫画を読み続ける。面白いんだよなー、新しい漫画。
せんべいみたいな布団にごろり。嫁は冷ややかな顔をしてフライパンを出す。そこからは見てないけれど…なんで不機嫌になるかなぁ…。居心地の悪さを感じながら、コロコロで髪の毛を巻き取った。
「できたよ」
「うん」
ほかほかの白飯に、豚とネギを乗せた丼が出てくる。俺はのっそりゆったり起き上がり、机に向かった。
…ここ数年。嫁の作る料理を食べるようになって、脂っこいもん食べたら胃がもたれるようになった。嫁に染まったのか、歳をとったのかわかんないもんだよ。
「ねぇ…おいしい?」
「うん」
「そう…」
ほっとしたような、嬉しいような…和らいだ表情。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
手を合わせ、ふたりで食事を終える。そのまま俺は横になると、嫁はじーっと俺を見てから
「…トドみたい」
と言った。そしてよろりふらりと寝転ぶ俺の足を持ち、静かにマッサージを始めた。
たまの休日。二人でいることはそんなにない。ただ、ご飯はできる限り二人で食べる。食べるということも、愛がないとできないことなんて、…まぁ、誰も言ってないけどさ。俺はそう思う、というだけ。
【例えば夕ご飯を食べる時のこと】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます