第3話 例えば買い物に行く時のこと



俺の休日。

俺の時間。

そこで必ずするルーティン的な行動は…







「フッ…フッ……」


びくびくと体の筋肉が軋む。…楽しい、筋トレ。

追い込んで追い込んで追い込んで、やっと肉が熱を帯びる。爽快…

日頃のストレスが緩和される少しの時間。洗濯回して、布団を干して、手に入れたこの時間…。



「っし、行くか」


汗だくになった体を、簡易シャワーでひんやりさせた。気持ちいいとはこの事と、俺は最高の気分に浸る。

さて、ということで向かったのは…





大型スーパーの駐車場。

そこに居たのは仕事終わりの嫁の姿。




「き、た、よ、っと」

メッセージアプリで送信し、座席を倒した。まだ?と連続で入っていたけど、そもそもこいつ着いてないだろ…と思わなくも無い。運転したらいいのに。



「ちょっと、」

くぐもった声が聞こえて、運転席の扉が開いた。


「買い物、行くよ」

無の表情で俺を引き摺り出す。…買い物なんて、そもそも俺行かなくていいんじゃない?なんてことは、言ったらご機嫌損ねるんだろうか。

余計なことを考えず、俺は嫁の後ろを歩いた。




「ほしいものは?」


パン、肉、ヨーグルト、ウインナー。コーナーをちょろちょろ回りながら声をかけてくる。カートを押す係の俺は、「別に」と答えて後ろを歩く。

客が増えて来る時間帯。少しずつ、主婦層の皆さんが多くなって来ている。子連れ、会社帰りのOL、学生。



「今日はハンバーグにしよう」


ボソボソと独り言とも取れる物言いで、すらすらと物をカートの中に突っ込む嫁。主婦なわけでもなく、かといって共働きと言うほど働いてる訳でもなく…。

いっそ籍なんて……



「ねぇ、好きなパスタ選んでおいで」

「了解」




まぁでも、好みが分かるとか

俺らのルーティンがあるとか

お互いがどんなことを考えてるかとか

色々思うこともあるけれど



「あ、今日和風きのこにしよ」

「もう一つ、ソース」

「えー、じゃあこれ」

「トマトクリーム、私も好き」




まぁこんなのも、悪く無いっちゃないんだろう。










【例えば買い物に行く時のこと】

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