第8話 失ったものはデカくても

授業中にも関わらず。

いきなり、井上さくら、という少女が乃木坂を連れてやって来た。

それも授業中に抜け出して、だ。

時間が無い。


そういう意味でだろう。

俺はビックリの中でその存在を見ていたが.....放課後になってから俺を待っているその2人を見つけてから俺は現実だと実感した。


俺に乃木坂の幼馴染になってほしい、という事が、だ。

その姿を確認しつつ.....苦笑する。

それから、乃木坂。お前もそうだがお前の友人も驚愕なんだが、と苦笑いを浮かべてから乃木坂を見る。

全くな.....、と思いつつ、だ。


乃木坂は、突然すいませんでした、と頭を下げる。

それから俺に困惑げに向いてくる。

俺はその姿に、まあ良いけど、と話す。

そして乃木坂達を改めて見つめる。


「で?何の御用かな?」


「私の友人が.....急かすんです。何か色々と、です」


「.....でも俺以外知らない筈だったんじゃ?.....だって.....」


「いつかはバレるって事を思わなかったんだと思います。.....和奈は何時もそんな感じですから」


俺は、やれやれ、と思いながら乃木坂を見る。

乃木坂は少しだけ恥ずかしそうな感じでぷくっと頬を膨らませて顔を背ける。

バレるとは思わなかったんだもん、と言いながら、だ。

その可愛らしい姿に少しだけ俺も赤面する。


「.....でも先輩。これで合格?です」


「.....何が?.....ってまさかこんな事まで!?」


「はい。.....No.76以外は私と.....さくらが一緒に創りましたから。でもその.....幼馴染という設定はまさかでした.....」


頬を赤くしながら.....悶える乃木坂。

その言葉に少しだけ俺も顔を赤くする。

それから.....心でツッコミを入れた。

まさかだったから。


『知らなかったのかよ!』


と、だ。

っていうか恥ずいならその設定は無しにしろよ。

と井上を見る。

井上は、でも不安でしたから、と回答する。

それから俺と乃木坂を見る。


「.....不安で.....仕方がないんです。私」


「.....それはつまり癌の事がか」


「.....そうです。.....友人として.....できる事は何でもしてあげたいんです」


「.....お前は良い奴だな。井上」


「.....当たり前です。幼馴染ですから」


井上は言いながら苦笑いを浮かべる。

え?幼馴染なのか?

俺はビックリしながら乃木坂に確認を取る。

乃木坂は、はい、と頷いた。

それから.....俺を柔和に見てくる。


「だから幼馴染の称号を貴方に託したいと言っているんだと思います」


「.....全くな。井上は色々とやり過ぎだ」


「.....私は和奈が幸せになってほしいですからね」


そういえば部活はどうしたんだ。

思いながら井上に向く。

今日は休みではないと思うのだが。

思いつつ.....井上に聞いた。


「井上。お前は.....部活はどうした」


「.....私、部活辞めようと思ってます」


「.....!.....それはまた乃木坂の件でか」


「はい。.....私は.....和奈が本当に心配なので」


もう失うのも.....しんどいですから。

と言いながら少しだけ悲しげな顔をする。

俺は?を浮かべながら乃木坂を見る。

乃木坂も少しだけ悲しげな顔をしていた。


「.....実は.....さくらには.....妹さんが居ました」


「.....妹?.....井上にか?」


「.....はい。とても可愛らしい妹さんでした」


でも.....病気で失ったんです。

と俺に説明してくれる乃木坂。

その言葉に思いっきり見開いた。

それから井上を見る。


「.....だから失うのはもうごめんだと思っているんです」


「.....同じだな」


「.....え?」


「.....俺もな。.....母親を癌で失った。.....だからその気持ちは.....100パーじゃないけど理解出来る。.....俺は.....な」


「.....先輩.....」


ビックリしながらも。

井上は俺に対して親近感を持った様だ。

俺はその姿に、でもな。.....乃木坂を失いたくないのは俺も同じだ。だから.....同盟を組もうじゃないか、と告げる。

同盟?、と首を傾げる2人。


「乃木坂和奈同盟ってやつだよ。.....後悔しない様に.....一緒に過ごしていこう」


「.....それ良いですね!.....私も.....賛同します!入らせて下さい」


「いやいや!?ちょっと.....2人とも.....」


そんな抵抗をする割には気が付けば乃木坂は涙を浮かべていた。

何だか嬉しそうにはにかんでいる。


俺は.....その姿に笑みを浮かべる。

そうだ。

今を後悔しない様に生きていこう。

それが.....俺達が繋がっていく絆だ。

そう.....思える日だった。

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先輩。私と付き合いたいなら私の77の秘密を解いて下さいね♪ アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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