第4話 存在しない77番目

何故か知らないが乃木坂がメルアドを置いていった。

そのメルアドに記載されていたのは例えばSNSのアクセスとか、だ。

何故こんな物を置いていったのか分からないんだが。

そもそも何故に俺?

多分.....俺だけしか置いていってないよな?


「.....」


思いながら自室で少しだけ緊張しながら。

メッセージアプリに文章を打ち込んで送信してみた。

あの乃木坂とこうしてメッセージが出来るとはな。

思いながら返事を待つと数秒も経たずにメッセージが。


(先輩。合格です)


(いきなりなんだ)


あれ?秘密の単語帳見ました?

とメッセージ。

いや.....そもそも全部はまだ確認出来てない。


一応、テストもあるし忙しいので飛び飛びでしか見れてない。

思いながらそう打つと.....頬を膨らませた感じのメッセージを送ってきた。

というかスタンプであるが。


(先輩。No.2を見て下さい)


言われて単語帳を開いてみる。

そこには2番目に、やりとり交換、と書かれていた。

俺は見開きつつ、成程な、とやり取りする。

そして.....俺は乃木坂にメッセージを送った。


(分かった。合格.....ってこれお前がやったんじゃないか。合格も何も)


(いえ。合格で良いんです。.....それから.....先輩。No.76を見て下さい。重要です)


(そう言えば忙しくて40までは見ていたが見てないな)


俺は考えながらNo.76を確認する.....が。

そこで思考が停止した。

何故かといえば.....とんでもない事が書いてあったから。

予想だにしない事が、だ。

まさか.....そんな馬鹿な!?


私は小児癌を患っています。だから先輩。これが最後なんです。実はNo77は無いんです。No77はこの病気が治った時に渡します。


と書かれていた.....。

俺は愕然としながら思いっきり見開きつつ椅子から立ち上がって乃木坂に電話した。

乃木坂は直ぐに出てくれた。

それから、先輩。そういう事です、と苦笑で言ってくる。

馬鹿か!早く言えよこういう事は!?


「ちょっと待て!?まさか今まで俺の.....告白を断ったのって.....みんなの告白を断ったのって.....」


『つまりそういう事です。私、ステージ2の肺がんなんです』


「.....」


『.....でも先輩。謎解きは終わらないですよ?.....絶対に終わらないで下さいね』


「嘘だろお前.....じゃああざといのは全部.....」


『.....他人を傷つけない為の工作です』


いきなりこんな告白されて。

思考が停止しない奴は居ない。

それがまさか好きな人が.....こんな。

俺は.....聞いた。

大丈夫なのか、と。


『そうですね。大丈夫です。.....でも.....正直将来は不安です』


「.....じゃあ何で俺だけには工作しない。そんなに」


『.....教えません。アハハ』


「.....乃木坂。冗談とかは要らない。何故.....」


『嫌です。教えません』


それは.....教えると.....、と言ってから。

ゴホゴホと咳き込んだ。

俺は、マジなんだな、と話す。


乃木坂は、はい。マジです、と答える。

そんなにか弱くは無いですが.....正直将来は不安です、と。

涙声で言う。


「.....この事は俺以外に誰か知っているのか」


『.....先輩が家族以外では初めてです』


「.....何故.....」


『.....それは先輩だからです』


意味が分からない。

俺は思いながらペラペラと単語帳を捲る。

そしてNo.75を見た。

そこには.....こう書かれていた。


癌の事を先輩が知る


「.....じゃあNo.75は合格なのか?」


『ですね。先輩。.....そうです。合格です』


「.....」


人は.....何故こんなに脆いんだろうか。

俺はそう思わずには居られずだった。

神なんて居ないんだろうなきっと。

その様に考えながら.....俺は必死に悔しい思いを抑えながら。

夕焼け空を見ていた。

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