第118話 ギャルとお祝い

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 何とか回復した純夏と一緒にリビングに入る。

 と、なんと部屋の中は結構ゴテゴテにデコレーションされていた。

 なんというか、派手。とにかく、派手。

 天井には、『♡清坂純夏♡生誕16周年!』と書かれた段幕が。

 好きにしていいとは言ったけど、すごいなこれは。5人のギャルが本気を出したらこうなるのか。もはや俺の部屋の原型を留めてないレベル。


 青座さんはやり切った感を出し、清々しい笑顔で汗を拭った。



「どう? 私の空間芸術インスタレーション。久々に本気出したよ」

「智香って昔から得意だったよな、こういうの」



 なるほど、青座さんの仕業か。

 確かにすごい。すごいけど、ここ俺の部屋ってこと忘れてません? ちゃんと掃除して帰ってくださいよ?


 浴衣から部屋着に着替えた純夏を中心にみんなが囲い、それぞれが飲み物を持つ。

 天内さんが代表して立ち上がり、こほんと咳払いをした。



「えー、本日最後のイベント。私の大大大親友である純夏の誕生会に来ていただき、誠にありがとうございます。私たちが出会ったのは幼稚園。純夏ももう16歳……ご、ごんなにおおぎぐなっでえぇぇっ!!(涙)」

「お母さん??」



 唐突な母性大爆発にドン引く俺たち。天内さん、純夏のこと好きすぎでしょ。

 ボロ泣きして呂律の回らない天内さんと変わり、次にソーニャが立ち上がった。



「あはは、私がいーのかな。えー、キヨサカさんとは付き合いは短いし浅いし、なんなら巨乳不許デカチチゆるすまじとすら思ってるけど」

「それ今言うこと?」



 やっぱソーニャはダメだ。次。



「さんばーん! しらゆりちゃん音頭とりまーしゅ!」

20歳児よっぱらいは寝ててもろて」



 花本さんに白百合さんを押さえつけてもらってる間、青座さんを見る。



「パス」

「雑」



 純夏の尊敬してる先輩なんだから、ちょっとくらい何か声掛けてあげてくださいよ。



「私はお呼びじゃないでしょ。私なんかより、あなたの方が嬉しいと思うよ」

「……え、俺?」



 周りを見ると、みんなうんうんと頷く。

 純夏も、どこか期待したような目で俺を見つめていた。



「カイ君、お願いします」

「……わかったよ」



 と言っても、そんな気の利いた一言なんて言える自信ないんだけど。

 グラスを手に立ち上がると、美女たちの視線が一身に集まる。

 数回深呼吸をして、純夏を真っ直ぐ見つめた。

 ……あ。



「純夏、今日って純夏がウチに転がり込んできて、ちょうど3ヶ月目だ」

「え? ……あっ、ホントっす」



 壁にかけられているカレンダーを見る。そうか、もうそんなに経つのか。



「この3ヶ月、本当にいろいろあったよね。多分、俺の人生で1番濃い3ヶ月だった気がするよ」

「お、大袈裟ですよぅ」

「大袈裟じゃない。それくらい、純夏と一緒にいた3ヶ月は楽しいものだった」



 朝起きて、ばたばたと準備をして、学校行って、帰ってきて、ご飯作って、勉強して、馬鹿なことで笑って、一緒に寝て、また起きて……。



「ありがとう、純夏。君が生まれてきてくれたおかげで、俺の人生は輝きに満ちてるよ」

「カイ君……」

「純夏……」






「だからお母さん??」

「自負してます」






 じとーっとした目で睨めつけられた。あれ、言葉のチョイスミスった?

 純夏は小さくため息をつくと、満面の笑みを浮かべて俺の腕に抱きつく。



「カイ君はお母さんじゃありません。大切なセンパイで、大切なお友達で……大切なソフレっすよ」



 そっか……それもそうだな。



「今日はみんなの大切な純夏の、年に一度のお祝いの日です。大いに祝いましょう。──純夏、お誕生日おめでとう! 乾杯!」

「「「おめでとー!」」」

「みんな、ありがとー!!」

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