第119話 ギャルとプレゼント

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 みんながわいわい楽しんでいる中、俺は部屋の隅に椅子を置いて、邪魔をしないように見守る。それはもう、さながら地蔵のように。


 いやぁ……みんなキラキラしてるなぁ。

 純夏と天内さん、青座さんはモデル。ソーニャも負けず劣らずの美貌。白百合さんと花本さんも、アイドルと言われても信じられくらいには可愛い。


 彼女たちが、今までのしがらみや大変さを忘れ、楽しそうに笑いあっている。

 そんな中にいられるほど、俺の神経は図太くない。意外と繊細なんです。



「いやぁ〜、あの純夏も16歳かー。昔なんて、ウチの後ろからついてくる泣き虫だったのにねー」

「ちょ、深冬! そんな昔のこと言うなし!」

「えー、でも昔の純夏、ちょー可愛かったじゃん。あ、もちろん今もかわいーけどね。写真見る?」



 天内さんがスマホに保存している昔の写真を見せびらかす。

 みんなの反応を見るに、結構可愛いらしい。



「ほらほら、海斗くん。これが昔の純夏だよ」

「待って待って! カイ君だけはダメ! 見せないで!」

「なんでよー。純夏だって可愛いところ、カイ君に見せたいでしょ?」

「今の可愛いところはいいけど、昔はダメ! ほ、ほら、ちょっと丸いしっ、もちぷにしてるし……!」



 そんなに恥ずかしがることないのに。

 純夏の子供の頃なら、絶対可愛いと思うんだけどなぁ。

 でも純夏がそんなに見せたくないなら、残念だけど諦めよう。


 そう思っていると、不意にスマホが震えた。

 こんな時間に誰だろう……あれ、天内さん?

 天内さんを見ると、純夏にバレないようにウインクをした。……あ、まさか。


 メッセージアプリを起動する。

 と、そこには天内さんから送られてきた複数枚の写真が。

 言わずもがな、純夏と天内さんの小さい頃の写真だ。

 幼稚園から小学校に掛けてだろうか。純夏が言うほどもちぷにしていない。むしろこの年代の子と比べると、可愛すぎるくらいに可愛い。


 確かこの頃だっけ。ご両親が亡くなって、純夏が桔梗さんの家に来たのは。

 泣き顔が多い……知ってはいたけど、苦労してたんだな、純夏。


 今の純夏と昔の純夏を見比べていると、天内さんがパンッと手を叩いた。



「さてさて! では本日のメインイベントです! はい純夏、誕プレだよ!」



 天内さんを皮切りに、みんなが純夏へプレゼントを渡す。

 天内さん(モデル)、ソーニャ(金持ち)、白百合さん(金持ち)、花本さん(金に余裕のある大学生)、青座さん(モデル)だからか、渡すブランドがどれも聞いたことのあるほどの高級品だ。



「えっ、マジ!? ありがとー! 開けていいよねっ、開けるよ!」



 天内さんからは新しい靴。

 ソーニャは高級アロマ。

 白百合さんはブランドのカバン。

 花本さんは高級化粧水と乳液セット。

 青座さんはセンスのあるネックレス。



「すごー! めっちゃ嬉しい!」



 そしてこの笑顔である。プライスレス。

 うーん……これ、俺が渡してもいいのかな……? 俺が買ったのって、全然高級品でもなんでもないんだけど。


 ポケットにしまっていたものに触れると、純夏が期待した顔で俺に近づいてきた。



「……あんまり期待しないでよ。みんなと違って、金に苦しむ苦学生なんだから」

「ぬへへ、わかってますよぅ。私はカイ君からのプレゼントってだけで、嬉しいんですから♪」



 本当に大丈夫かな……不安だけど、もう買っちゃったし……ええい、ままよっ。

 ポケットから小さい包みを取り出し、純夏に手渡した。



「ぬへへっ、ありがとうございますっ」

「いや、本当に期待しないでよ? 一応、実用性はあるけど……」

「心配性っすね〜。開けていいっすか?」

「……どうぞ」



 な、なんだろう。純夏にプレゼントするのは初めてじゃないのに、緊張する。

 丁寧に包みを開けると、出てきたのは……。



「あっ。ハンドクリーム……!?」

「うん。最近、料理とか皿洗いをしてもらってるし、そろそろ手荒れとか気になるかなって。フローラル系の香りだから純夏にも合ってると思うし、勉強中も手元がいい匂いだと集中できるかなと……」



 色んな人からのアドバイスを聞いたりして、最終的には自分で選んだものだ。

 喜んでくれたら嬉しいけど……どうかな……?



「カイ君……やばいっす。めちゃくちゃ嬉しいっす……! しかもこれ、スクシェアミのハンドクリームじゃないっすか……!」

「あ、うん。どうせなら好きなブランドがいいかなつて」

「私の好きなブランドを覚えてくれてるって、カイ君私のこと好きすぎ〜っ。ぬへへ〜」



 純夏は相当嬉しかったのか、早速ハンドクリームを手に出して塗った。



「おおっ、めっちゃいい匂い……!」

「ほんとーだ。ヨッシーやるじゃん」



 みんながハンドクリームの匂いを嗅いで、絶賛してくる。

 よかった、これで気に入られなかったらどうしようかと……。



「吉永のくせに、なかなかいいセンスのもの買ったな」



 おいコラ花本さん。今失礼なこと言わなかったか?

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