第111話 2人の先輩
結局最後まで、2人は気まずい空気のまま昼飯は終了。
だけど、店を出てもなんとなく5人で行動していた。
まあ、花本さんと青座さん、まったく喋らない上に、目も合わせないんだけど。
「カイ君。マジであの2人、何かあったんすかね……?」
「んー……わからない」
予想はついてるけど、あのことを言いふらすようなことはしちゃいけない。
あれに関しては2人の問題だし、関係のない俺たちが口を出すようなことはしちゃダメだと思う。
と、前を歩いていた花本さんが振り返った。
「吉永、どうする? 帰るか?」
「え。……俺は、そうですね。バイトも終わりましたし、帰りますけど……」
「んじゃ、行くか。私は白百合と酒飲みたい気分だし」
白百合。その名前を聞いて、青座さんは立ち止まった。
顔色が優れない。この反応は……やっぱり青座さんは、さっき花本さんが言っていた例のグループの人だったんだ。
花本さんは青座さんに見向きもせず、帰路につく。
「純夏と天内さんは?」
「わ、私らはもう少し撮影があるんで……それに、智香さんも放っておけないっす」
「うん。こっちは任せて、海斗くんは帰っても大丈夫だよ」
「……わかった。バイト、頑張って」
2人に手を振り、俺は花本さんを追いかけた。
少し走って、花本さんに追いつく。
青座さんと離れたからか、ようやく肩の荷が降りたように息を吐いた。
「あー……間の悪い」
「やっぱりあの人だったんですね」
「お察しの通りだよ。昔から可愛いって話題にはなってたけど、まさかモデルになってるなんてね。バイト苦学生の私とはえらい違いだ」
そんな卑下することないと思うけど。
花本さんが頑張ってるのは知ってるし、白百合さんとの仲も良好だ。
確かに向こうは向こうで成功してるみたいだけど、成功に正解はないんだし。
けど……本当にこのままで、いいんだろうか。
「なんもするなよ」
「……え?」
まるで心を見透かされたみたいに、花本さんが呟いた。
「これは、私の問題だからさ。それに、もう関わることもないだろうし。今は住む世界が違う」
「……いいんですか? それで」
「いいも何も、あの頃のことは過去のことだ。酒の肴に、白百合と酒飲んで忘れる」
「花本さんがそれでいいなら、俺は何も言いませんけど……」
「頼んだぞ」
そう、俺は何も言わない。
ただ……あの子たちは、どうだろうなぁ。
◆純夏side◆
「ぜーーーーーーったい! 仲直りすべき!」
「そうだよ智香さん! 何があったのか知らないけど!」
現場に戻った私たちは、控え室で智香さん相手に詰め寄っていた。
深冬の言う通り、どんな関係か知らない。
でも戻ってきてからも落ち込んでる大好きな先輩を前にして、黙ってられないよ!
智香さんは私たちに迫られて、気まずそうに笑った。
「お、落ち着いてよ。純夏、みーちゃん。本当、なんでもないから……」
「なんでもない顔じゃないっす!」
「友達なんだよね、カレンさんと!」
深冬が友達と言った途端、智香さんは苦しそうな顔になった。
「友達……友達、か……」
……なんか、結構やばい関係なのかな……?
智香さんのこんな辛そうな顔、初めて見た。
「……友達じゃないよ。私たちは。……友達だったんだよ」
「それって──」
「智香さん、出番でーす」
どういうことか聞こうとすると、スタッフの人が入ってきた。準備ができたみたい。
そのせいで、肝心なことを聞けなかった。
「じゃあ、先に行くから」
「あ、うん……」
「頑張ってくださいっす……」
智香さんを見送ると、控え室は私たちだけになった。
「……純夏、どーする?」
「どうするもこうするも、何とかしたい」
「だよね。ウチも」
智香さんだけじゃなくて、カレンさんも知ってる仲だ。いや、私的には友達と言ってもいいと思ってる。
そんな2人が喧嘩別れって……すごく、いやだ。
だってそれ、私と深冬が喧嘩別れするってことでしょ?
そんなの無理。考えたくもない。
お節介と言われようと、私たちはなんとかするよ! むんっ!
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