第105話 隣人と解決……?
茜さんに連れられ、再び白百合さんと、お母さんの所へ。
因みに猫たちは俺に着いてきている。懐かれて嬉しい反面、足元をうろうろされるとすこぶる歩きづらい。
そんな俺の様子を、茜さんは微笑ましそうに見ていた。
「その子たちが初対面の方にそんなに懐くなんて、初めてです。いつも来客があったときは、どこかに隠れてしまうんですよ」
「そうなんですか。……なんででしょう?」
「本能で、優しい方と察したのでは?」
優しい……のか、俺は?
全然そんなことないと思うけど。
親猫の2匹に目を向けると、2匹とも俺を見上げてきた。
「にゃー」
「にゃお」
それは「その通り」だと言っているのか、はたまた「調子に乗んなよ」と言われてるのか。
はい、調子に乗りません。多分猫の気まぐれだろう。
と、立ち止まってる間に子猫たちは俺の脚にしがみついてきた。
子猫は5匹。俺と茜さんが剥がしても、絶対1匹は引っ付く。
ならもうこのままでいいや。
子猫が脚やら腰やらお腹やらに引っ付かせたまま、俺は2人の所へ歩いていった。
「奥様、お嬢様。吉永様をお連れ致しました」
「どうぞ。……え?」
入ってきた俺を見て、目を丸くする2人。
まあそうなるよね。そうですよね。
「えっと……ぷっ、ふふっ。か、海斗君っ、なんですかそれ。ふ、ふふふっ……!」
「笑ってないで助けてください」
あと笑いながら写真撮るな。やめろ、消せ。
なんとか茜さんとお母さんの手を借りて、子猫を引き剥がすことに成功。
因みに白百合さんはずっと笑ってる。どついたろか。
「あ、純夏ちゃんに送っておきましたよ」
「え」
直後、俺のスマホが鬼のように震え出した。
電話ではない。多分メッセージなんたろうけど、まったく止まらない。
やべ。そういえば純夏に連絡してなかった。
スマホの電源を切り、とりあえず一安心。
……帰ったら何言われるんだろ。怖い。全然一安心じゃない。
若干ゲンナリしていると、お母さんが小さく咳払いした。
「吉永さん、そちらにどうぞ」
「あ、はい」
促されて白百合さんの隣に座る。
若干緊張していると、交互に俺たちを見るお母さん。
白百合さんも、俯き気味に俺をチラ見してくる。
なんだ? 何を話したんだ、2人は。
「……2人の関係はよくわかりました。今日はもういいですよ」
「ありがとうございます、お母様」
「……しっかりしなさいよ」
「はい」
白百合さんは頭を下げ、立ち上がり「海斗君、行きましょう」と言ってくれた。
え、いいの? 終わったの?
出ていこうとする白百合さんを追い、俺もお母さんへ頭を下げて部屋を出る。
「し、白百合さん、いいんですか?」
「ええ。帰りましょうか」
「帰りましょうって……」
ここまで来たのは、白百合さんのお見合いを無くすためだったはず。
でもここに来てやったことと言えば、少しお母さんと話したくらいだ。
偽彼氏も即バレたし……このままじゃ、白百合さんはお見合いすることになるんじゃ……?
だというのに、表情はどこか晴れやかだ。
「あの、本当にいいんですか? このまま帰ったら、白百合さんは……」
「ええ、大丈夫です。お母さんも理解してくれました」
「……理解?」
何をわかってくれたんだろう。特に何もなかったような気がするけど。
首を傾げると、白百合さんは振り返って笑みを浮かべた。
まるで一輪の百合の花のように。
無垢な少女のように。
「ばーか」
「今の流れで急なディス!?」
えっ。俺、白百合さんに罵倒されるようなことした!?
しかもそんないい笑顔でばかって……いや、ちょっとありかも。じゃなくて!
「ばか、あほ、唐変木、海斗君♪」
「その言葉の羅列に俺を入れないでください」
「ん〜……じゃ、鈍感」
「俺ほど敏感な奴はいないと思いますけど」
「……やっぱりばかで」
「しどい」
なんでこんなに言われなきゃならないんだ。しまいにゃ泣くぞ。
「……ありがとうございます」
「……どういたしまして?」
何に対しての感謝なのかわからないけど……まあ、白百合さんが満足してるなら、それでいいか。
小さく息を吐き、白百合さんと屋敷出る。
あーあ……帰ったら純夏になんて言おう。
帰宅後、案の定めちゃめちゃ怒られました。
ご、ごめんなさい。
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