第95話 ギャル友と背徳感

 ベッドの右端に横になる。

 うぅ、ソーニャの濃い匂いがまとわりついて……ちょっとヤバい。ドキドキする。

 と、純夏がごろごろ回転して俺の腕に抱き着いた。



「ふふん、私の特等席〜♪」

「むむむっ、純夏ずるい……!」

「てか、私が1番ヨッシーからとーいんだけど。さびしー」

「こら押すな」



 余裕はあると言っても、押されると落ちるから。

 左側に感じるかしましい声を聞いていると、ソーニャがリモコンを操作したのか部屋が暗くなった。

 天蓋付きのお姫様ベッドというのだろうか。

 和風モダンな家なのに、ここだけ異国の部屋みたいだ。

 そんなところで、和服を着て美少女3人と寝ている俺。

 シュールだ……果てしなくシュールだ。



「誰かの布団で寝るって、ドキドキするっすね、カイ君」

「純夏はいつも俺の布団で寝てるだろ」

「あれはもう、私の布団のようなものっすから」

「……それもそっか」



 3ヶ月も一緒にいると、あの部屋にあるのは俺のものと言うより、2人のものって感じになってる。

 というか、まだ3ヶ月しか経ってないのか。

 一緒にいる時間が長すぎて、3ヶ月って感じがしないな。

 さっき少し寝たから、まだ眠くない。

 ぼーっと天井を見ていると、純夏から寝息が聞こえてきた。



「純夏?」

「……すぅ……くぅ……」



 あら、ガチ寝か。今日1日、楽しんでたもんなぁ。

 向こう側にいる天内さんとソーニャも、気持ちよさそうに寝ている。

 相当疲れてたんだろうなぁ。

 そりゃそうか。プールであんなに遊んでたし。

 そっと純夏の頭を撫でる。

 撫でられるのが嬉しいのか、くすぐったいのか、ほにゃっと口元を歪ませた。

 ……あぁ……みんなの寝息を聞いてると、俺も眠く……。



「おやすみ、みんな」



 ……くかぁ〜……。



   ◆深冬side◆



「……寝た?」

「寝たね」



 はい起床! おはようございます!

 あぶない、危うくあぶない。作戦があるのに、寝落ちしかけた。

 ツキクラパイセンと起き上がり、額に浮かぶ汗を拭う。

 と、ツキクラパイセンが不安そうに小声で話しかけて来た。



「でもアマナイさん。こんなことしていーのかな……?」

「大丈夫大丈夫っ。たとえ海斗君が許さなくても、ウチが許すっ」

「説得力がなさすぎる……」



 何をうっ。酷いな、ツキクラパイセン。

 暗闇の中、2人でこそこそ動いて海斗君の傍による。

 ふふふ。作戦通り、1人分のスペースは開いてるね。



「ほら、パイセン」

「う、うん……でも、ほんとーに起きない……?」

「大丈夫だよ」



 昨日、海斗君が起きないのは確認済みです。

 寝ている海斗君の横に、ツキクラパイセンが横になって腕に抱きつく。



「寝心地はどう?」

「……さいこぉ〜……」

「ふふふ。ならウチも」



 隙間に脚を入れて、海斗君の上にまたがる。

 そこから起こさないように慎重に横になって、完全に海斗君へ体を預けた。

 あぁ……これはやばい。やばいですよこれは。

 ハグはいつもしてるのに、これは背徳感がすごい。



「うぅ……私、悪いことしてるよ……!」

「全然悪くないよ、パイセン。海斗君がチキンなのが悪い。ウチらは悪くない」



 悪くない、ということにしておく。

 じゃないと、純夏だけ添い寝できて不公平だ。

 ウチだって海斗君と添い寝したい。まあこれは添い寝じゃないけど。

 ツキクラパイセンも、なんだかんだ言いつつ海斗君の隣を満喫している。

 私も海斗君の鼓動や胸板を堪能していると、和服の襟がよれていることに気付いた。

 少しだけ、襟から胸が見えている。

 これ、もしかして凄くエッチなのでは……?

 ツキクラパイセンにバレないように、ゆっくりと襟を広げる。

 ふ……ふおおおぉ……! かかかか海斗君の胸! 胸板! うわ、えろ……!



「アマナイさん?」

「なっ、なに……?」

「いや、モゾモゾしてどーしたのかなって」

「きききき気にしないで。ポジションを確かめてただけだから……!」

「そう? ……じゃ、おやすみ」

「う、うんつ。おやすみ……!」



 ふぅ、あぶない。バレるところだった。

 さて……ぐふ。海斗君の胸板、堪能させてもらっちゃおうかな。

 海斗君の胸板にキスを落とし、少しだけ舐める。

 これが海斗君の味……やば。ウチ、今めちゃめちゃ悪いことしてる。

 背徳感と欲望で頭が混乱する。

 ウチはしばらくの間、海斗君の味を思う存分楽しんだ──で、寝落ちした。

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