第91話 寝落ちとアルバム

「ところで、きょー泊まってく?」

「「ほぇ?」」



 リビングでアイスを食べながらぐーたらしていると、唐突にソーニャがそんな提案をして来た。

 泊まるって……え、3人で? ここに?



「ママが帰ってきたのはよそーがいだったけど、元からきょーはパパもママも帰ってこないよてーだからね。私は全然、泊まっていってくれていーよ」

「いや、さすがにまずいだろ」



 女の子の家に泊まるのもまずいのに、美少女が3人もいるとか、普通にまずい。

 ……いつも純夏と一緒に寝てるとか、無粋なツッコミはしないでほしい。



「私は泊まっても大丈夫っすけど、カイ君が帰るなら帰るっす」

「ウチもー」



 と、全員の目がこっちに向いた。

 えっと……え、俺?



「ねーヨッシー。たまにはいーじゃん? 私、みんなと遊びたいんだけど」

「遊ぶのはいいけど、泊まるのはなぁ……」

「なら、ちょっとだけ! ちょっと遅くまで遊ぼ!」



 ソーニャが手を合わせて懇願する。

 こんなに遊びたがるソーニャを見るの、久々だ。

 夏休みだし、この3日間は補習だったからな。遊びたくて遊びたくて、仕方なかったんだろう。



「俺と純夏はうるさく言ってくる人はいないけど、天内さんは大丈夫? 昨日も帰ってないし、今日も遅くなったら心配するんじゃない?」

「大丈夫だよ。ちゃんと海斗君のところにお世話になるって言ってるし。お母さん、海斗君のこと信用してるから」



 それ、暗に圧掛けられてない? 信用してるから、娘に変なことするなよって。変なこととかしないけどさ。

 親公認って、妙に緊張感があるから嫌なんだけど……。



「ヨッシーお願い……!」

「……はぁ、わかったよ。どうせ家に帰っても、やることもないし」

「やったー!」



 全身で喜びを表すソーニャ。どんだけ遊びたかったんだ。



「むぅ……ツキクラ先輩、超美人のくせに喜び方が可愛すぎる……」

「卑怯じゃないかな、これ」

「2人ともっ、そんな顔してないで遊ぼーよ! 何する? ゲームとかめっちゃあるよ」

「「ゲーム……!」」



 リビングからソーニャの部屋に移動し、クローゼットを開ける。

 なんと俺らが産まれる前。80年代のゲームから、最新のゲームまで揃っていた。

 そういや、ソーニャってかなりのゲーム好きだったな。

 ここまで来ると、立派なゲームオタクだ。



「ゆーはんはデリバリーしておくから、きょーは気が済むまで遊ぼー!」

「「いえーい!」」



 あの、君たち。この間まで結構バチバチだったよね? なんで今日だけでそんな仲良くなってるの?

 ギャルの距離感、マジでわからん……。

 3人があれこれといろんなゲームをしている姿を、ソファーに座って眺める。

 ……楽しそうにしてるな、みんな。

 もちろん、俺も楽しくないわけじゃない。

 けど昼間のプールのバカ騒ぎで、それより眠さが勝っている。

 みんな体力有り余りすぎだろ。

 それにしても……傍に純夏がいなくても眠くなるって、久々だ。

 うつら、うつら。

 思考がぼやけて、みんなの姿がかすむ。

 まぶたが重い。

 今日は泊まらないって決めた以上、ここで寝落ちするわけにはいかない。

 それはわかってる。わかってるけど……生理現象には逆らえず。

 三大欲求、恐るべ……し……すゃ……。



   ◆純夏side◆



「おろ? カイ君、寝ちゃったっすか?」

「くぅ……すぅ……」



 おや、爆睡のご様子。

 相変わらず可愛い寝顔。

 でも、ソフレの私を置いて1人で寝るなんて、ソフレの風上にも置けないぞ、カイ君。

 3人でゲームの手を止めて、ソファーで寝ているカイ君の所に集まる。



「あらら。ヨッシー、泊まらないって自分で言ったのに」

「疲れてたんじゃないかな、海斗君」

「にしても体力なさすぎでしょ。ヨッシー、昔からそうだったからなぁ」



 むむっ。昔を知ってますマウント……!

 なんか悔しい!



「あ、昔で思い出した。アルバム見る?」

「「見る!」」



 昔のカイ君を見れる!

 さっきのマウントは許してあげます!

 ……何様だとか言わないでください。

 ツキクラ先輩が、大切にしまっていたアルバムを何冊か持ってくる。

 カイ君は熟睡してるし、今の内に堪能させてもらおうっと。

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