第92話 思い出と〇〇〇〇

「はい、まずこれが中1ん時のヨッシーね」

「「こっ、これは……!」」



 び……び……び……!



「び、美少女、、、……!?」

「えっ、これほんとに海斗君!? 女の子にしかみえないけど!?」

「にゃははっ。わかるー。とーじのヨッシー、マジで女の子みたいだったからねぇ〜」



 みたい、どころじゃない。

 儚い系というか、清楚系というか。でもちょっと生意気な感じもする。

 まだ小学生から中学生に上がったばかりで、幼さもがっつり残ってるし。

 えぇ、これカイ君? やば。え、やばっ。

 多分、同じ中学だったら勘違いしてる。



「がっこーでも話題だったよ。女子が男子の制服着てるって」

「まさか、海斗君いじめられてた……?」

「んにゃ。むしろ逆」



 逆?



「なぜか異様にモテてたね。3年の女子の先輩からは、リアルせーへき破壊男子って呼ばれてた」

「せ、性癖破壊男子っすか……」

「あっはは。でもこれを見るとわかるね」



 あー……でもわかる。

 男子からしたら、女子だと思ってた子が男子だったってことで頭狂うだろうし。

 女子からしたら、可愛すぎる男子ってことでその手の扉が開きそう。

 私? ……うん、ぶっちゃけこんな子が同じ学校にいたら、多分性癖破壊されてた。

 私の性癖は、今のカイ君だけど。好き。



「あ、これってツキクラパイセン?」

「おー、そーそー。私と、ヨッシーと、ゆーだいの3人だね」



 仲良く肩組んで笑ってる。

 笑ってる顔も、この頃は女の子みたい。好き。



「これは夏くらいかな。この頃から、少しずつヨッシーも男っぽくなってきたよ」



 言われてみれば、春と比べたら少しだけ背も伸びて、顔つきも凛々しくなってる。

 でも凛々しい顔の女子って感じで、まだまだ女の子感が滲み出ていた。



「これは秋の文化祭だね。私らのクラスはメイド喫茶だったなぁ」

「うわ、ツキクラ先輩かわいすぎ……」



 この人、本当になんでも似合うな。

 リアルでこんなにメイド服が似合う人、初めて見た。



「え、てかパイセンの中学、メイド喫茶とか許されたんの?」

「うん。火を使ったりエッチなのはダメだけど、市販のコーヒーとかケーキならオーケーだったよ」

「いいなー。ウチらの中学、飲食禁止だったから。早く高校の学祭したいー」



 深雪が愚痴るのもわかる。うちの文化祭、小学校の延長みたいなものだったから。

 高校の学祭は秋口らしいから、早くやりたい。






「で、これがメイド姿のヨッシー」

「「ぶっ!?」」






 えっ。あ、えっ。

 めめめめめめめメイドさんのカイ君……!?

 ウィッグを付けてるのか、腰まで長い黒髪ロング。

 よくあるミニスカメイドではなく、クラシカルメイドって言うのかな。とにかくドがつくほどド直球なメイドさん。

 恥ずかしがってるのか顔は真っ赤。

 目もうるうると涙目。

 スカートの裾をギュッと掴んで、カメラ視線で睨んでいる。



「はい死んだー。はいウチ死んだー」

「これはずるすぎる。カイ君ずるい」

「いやー、あの時のヨッシーはやばかったね。これがあってから、ヨッシーがいるクラスはメイド喫茶が定番になったんだよ」



 ツキクラ先輩の言うこともわかる。

 これを見るためなら、メイド喫茶を捩じ込む気持ちになる。

 それくらい、このカイ君は美少女だ。



「パイセン。てことは、去年も……?」

「あるよ。見る?」

「「見る!」」

「だめー」

「「ええっ!」」



 ここまで引っ張っておいて、それはないよ……!

 ツキクラ先輩を睨んでると、先輩はチッチッチと指を振った。なんか腹立つ。



「どーせ今年もメイド喫茶なんだから、生で見たほーがいーでしょ?」

「むぅ……‎まあ、確かにそうっすね」



 写真より生の方がいいに決まってる。

 それに、なんなら2人で自撮りとか……キャッ。



「でもよく海斗君、今もメイド服着れるね。普通逃げない?」

「諦めたらしーよ」

「「あぁ……」」



 なるほど、察しました。

 カイ君って意外と諦めが早いから……。

 でもそのおかげで、生メイドのカイ君が見れる!

 高校の学祭の楽しみが増えた……!

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