第83話 飽きと朗報
夏休みに入って3日。
俺は、バイトと家の往復の日々を送っていた。
家でも家事に追われ、純夏の夏休みの宿題を見てやり、俺も俺で勉強をする。
天内さんは毎日うちに来るし、すごく賑やかな夏休みだ。
だけど……正直、かなり飽きる。
これが部活でもやっていたら違うんだろうけど、生憎俺らは帰宅部なのだ。
なんにもないと、本当に家から出ない。
ぶっちゃけ暇なんだ。
悠大も暇なんだろうけど、なんと大学受験のための夏期講習に行ってるらしい。
そうだよなぁ。もう2年の夏休み……動いてるやつは、とっくに動いてるもんな。
俺はそっと嘆息し、麦茶を飲む。
「……暇だ……」
さすがに昼間っからゴロゴロ添い寝はしない。
リビングで、各々好きなことをして過ごしていた。
因みに俺はうちわで自分を涼ませ、純夏と天内さんはソファーで並んでアイスを食べている。
……にしても2人とも、露出すごいなぁ。
へそ丸出し。脚丸出し。
別にいかがわしい感じではなく、ティーシャツの裾を結んで腹を出している。
そして下はぴっちりめのショートパンツ。
双子コーデらしいけど、2人のえちちな体がとってもやばい。
青少年の教育に大変よろしくありません。新しい扉開きそう。
「カイ君、あつぅ〜い……!」
「海斗くん、エアコン付けよ〜……」
現代っ子だなぁ。ちょっとは我慢を覚えなさいよ。
でも確かに、この暑さは異常だ。
まだ7月も下旬に差し掛かった頃なのに、気温は30度を超えている。
このままじゃゆでダコだ。
ニュースでも、下手に我慢すると熱中症になるって言ってたからなぁ。
本当は電気代を気にして付けなかったけど……背に腹は変えられない。
「そうだね、クーラーを……あ、いや待てよ。ならプールか海に行った方が……」
「プール!?」
「海!?」
あ、食いついた。
2人は満面の笑みを見せ、ずずずいっとこっちへ寄ってきた。
「行きたいっす、行きたいっす!」
「プール! 海!」
「でも君たち、ナンパされない?」
「「…………」」
あ、されるんだね。
「ででででも、今までキン〇マ蹴り上げて逃げてきたっす!」
「指一本触れられてないから、大丈夫だよ!」
「誰もそこは心配してな……って待て、キ〇タマ蹴り上げたの!?」
確かにそれは有効かもしれないけど、考えるとひゅっとなるよ、いろんな部分が!
純夏、天内さん。恐ろしいで……。
まあよく考えなくても、二人のこのプロポーションでプールとか海とか行くと、100パーセントの確率でナンパされるよな。
いくら俺がついて行ったとしても、見守るには限度がある。
過保護かもしれないけど、あんまりそういうところは見たくないんだよな……。
でも、2人はもう行く気満々みたいだ。
どうしようかなぁ……。
「おろ? 海斗くん、スマホ鳴ってるよ」
「え? あ、本当だ。ありがとう」
いったい誰だろうか。
俺に電話をかけてくるなんて、悠大かな……って。
「ソーニャか。もしもし」
「「え!?」」
電話に出ると、2人がむすーっとした顔で俺に近付き、スマホに耳を近付けた。
そ、そのせいで密集してるし、2人の元の匂いと汗が混じったような濃密な匂いが脳にダイレクトで伝わる。
しかも顔めっちゃ近いし、顔がよすぎるんだよ2人して……!
『あ、もすもすー。ヨッシー、今だいじょーぶ?』
「あ、ああ。大丈夫だ。お前こそいいのか? 今補習のはずだろ」
『今お昼休みだからへーき。それより、きょーでほしゅー終わるんだけどさ、明日遊ばない?』
「明日か……」
明日ならバイトも休みだし、やることもない。
俺のバイトの日程を把握して、誘ってくれたんだろうけど……。
「「ぎりりりりり……!」」
今はタイミングが大変よろしくない。
『実はうちに屋外プールがあるんだよね。パパとママもいないし、キヨサカさんたちも一緒にどーかなって思って』
「「え!?」」
『あ、きーてた? そんなわけで、明日うち来ない?』
「「行くー!」」
ものすごくとんとん拍子に話進むじゃん。
しかもサラッと言ってるけど、ソーニャの家屋外プールまであんの? まああのでかさならありえなくもないけど。
でもそれなら、2人……ソーニャも入れて3人はナンパされる危険もない。
……いつから俺、こんな彼氏面するようになったんだ。アホか。俺にそんな資格はないのに。
「……わかった。ちょうど2人も行きたそうにしてたし、明日な」
『おけー。楽しみにしてるよー』
……てなわけで、唐突にソーニャの家にお邪魔することになったわけだが。
「こうしちゃいられない! 深冬、水着買いに行くよ!」
「うん! ちょっと奮発して、いい水着買っちゃおう!」
と、2人は急いで出かける準備をすると、嵐のように行ってしまった。
まさか、こんなタイミングよく連絡がくるなんて……盗聴器とか仕掛けられてないよな? 不安すぎるんだが。
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