第25話 ギャルと秘め事

「センパイ、センパイ。見てくださいよこのわんこ。可愛いっす……!」



 夜、俺の腕を枕にして寝ている清坂さんが、ニコニコとスマホをいじっている。

 いや、もう腕と言うより肩らへんに頭が来てるんだけど。

 その分清坂さんの顔や頭も近付いていて、清坂さんの匂いも凄く濃く感じる。


 しかもちょくちょくお胸様が俺の体に触れるから、神経を散らすのに逆に神経を使う。



「清坂さんは犬派なの?」

「動物全般好きっすけど、強いて言うならですね。センパイはどうです?」

「似たようなもんかな。俺も犬派だけど、動物全体で言ったらホッキョクグマが好き」

「あっ、わかります! この間、氷を滑るホッキョクグマの赤ちゃんの動画みたんですよっ。えーっと……」



 動画を漁り、にこやかにそれを見せてくる。

 清坂さんも犬みたいに懐いてくるし甘えてくるから、ちょっと大型犬を飼ってる気分になるんだよね。失礼になるから、本人には言わないけど。



「ん……ふあぁ……」

「あ。そ、そうですよね。バイト終わりで疲れてますもんね。今日はもう寝ましょうか」

「うん……ごめんね、清坂さん」

「何をおっしゃいますやら」



 清坂さんが枕元のリモコンを操作し、電気を消す。

 腕を枕にしていた清坂さんが、俺の頭に手を伸ばして来た。


 優しい手つきで、そっと撫でてくれる。

 清坂さんが傍にいてくれるだけでも安心して眠くなるのに、こんな風に撫でられたら更に眠気が……。



「よしよし。センパイは頑張り屋さんですから、寝る時くらいは私に甘えてくれていいんですよ」

「……ぁりがと……おやすみ……」

「はい、おやすみなさいです」



 甘える……ていうのは、よくわからないけど。

 それでも頭を撫でられるこの感じ。堪らなく、心地いい。


 俺は目を閉じ、心地良さと安心感に身を任せて夢の世界へ落ちていった。



   ◆純夏side◆



 ……寝た、かな。


 眠っているセンパイの頬をつつく。

 ……うん、よく寝てる。センパイって一度寝ると、何しても起きないんだよねぇ。あぁ、かわい♡



「すぅ……すぅ……」

「ふふ。センパイったら、こんな無防備な寝顔しちゃって」



 つんつん、つんつん。

 普通、見ず知らずの女の子が隣に寝てて、こんな風には眠れるはずがないでしょ。美人局とか考えなかったんですかね。


 本当、底なしのお人好し。


 センパイの頬を撫でる。高二なのに髭が生えてる様子はない。それに綺麗な肌。すべすべ。

 そんなセンパイの肌をひとしきり撫でると、この間のことを思い出した。


 頬へのキス。

 それを思い出す度、体が熱くなる。


 や、やっぱりやり過ぎだったかな……? いきなり距離を詰めすぎたかも。センパイ、はしたない女って思わないかな……?


 ま、まあ、ソフレを提案してる時点で、相当はしたないけども。



「……センパイは私のこと、どう思ってるんですか……?」

「すぅ……すぅ……」



 私の気も知らないで爆睡しとる。このこの。

 さて、つつくのも撫でるのもこれくらいにして。

 センパイの体に抱きつき、脇に頭を埋める。


 くんくん。うぅ、しゅごい。一緒に寝てから思ったけど、センパイの匂いよすぎ。アガる。たぎる。濡れる。


 特に脇と耳元。ヤバい。キマる。

 うなれっ、私の肺活量!



「すーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……すーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……」



 ゾクゾクゾクッ。

 この背徳感と罪悪感、たまらん。


 誰かに抱き着いて眠るって安心感も凄い。こんなの知らない。今まで感じたことがない。

 センパイの優しさを利用してるみたいでごめんなさいですけど、今の私、凄い幸せです。


 明日は日曜日。しかもセンパイのバイトも休み。心ゆくまで、楽しませてもらおう。


 腕だけじゃなく、脚も絡ませる。

 胸を押し当て、色んなところを密着させ、重なるように抱き着く。


 匂いだけでもヤバいのに、こんなに密着させちゃって……私、変態かも。

 センパイの全てを堪能しながら、私も目を閉じて眠りにつく。


 嫌なことを忘れるように──思い出さないように。

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