神様と彼女の場所取り戦争 7

 さらに年月は流れて、また秋の季節がやってきました。


「ああ、良いわー。この静寂に包まれた黄金、たまんないわー。良き良き」


 この神様、本当にまったく変わり映えしませんね。


 一応繰り返し言いますが、年月はちゃんと流れています。


 その証拠に……。


「あー、もう最悪。急に降り出すなんて……」


 イチョウの木の下に一人の若い女性が駆け込んできました。


 そう、彼女は久々に里帰りしたあゆみです。


 彼女が言うように先ほどから雨が降り始めていました。


 そして雨はどんどん強くなっていきます。


「やっぱ折り畳み持ってくるんだったなー。どうしよう、約束の時間に間に合わない。げ、スマホのバッテリーも無いじゃない……」


 途方に暮れていると……。


「お、いたいた!」


 傘を差した若い男性がやって来ます。


「あれ? 悠気ゆうきくん。何でここに?」


「遅いから迎えに来た。どうせだろうと思ってさ。にしても、お前って本当に好きだよなー、このイチョウの木」


 呆れた様子の男性。


 女性はつぶやきます。


「本当はここに迎えに来てくれるあなたの事が……」


「あ? なんか言ったか?」


「ううん、何でもない。ねえ、せっかくだから相合傘で行こ?」


「はあ? 傘もう一本あるけど……」


「別にいいじゃない、久しぶりに会ったんだから」


「なんだそれ?」


 男女は会話を弾ませ仲良く去っていきます。


 次の秋までには二人の関係が進展していると良いですね。

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