神様と彼女の場所取り戦争 6

 独り占めだった絶景スポットを横取りされた神様は不機嫌に木を降ります。


「あーあ、なんか興ざめしちゃったわ。昼寝でもしよ」



 それからしばらくして……。


 神様が戻ってくると、木の上から泣き声が聞こえました。


「うえーん! 誰か助けてよー!!」


 さっきまで木に立て掛けてあったはずの梯子はしごが横倒れしています。


 どうやら少女は木から降りれなくなってしまったようです。


 「あの子まだいたの? ていうか……ふっ、何やってんのよあの子。ダサ!」


 神様は笑いを堪えるのに必死です。


「そういうあなただって今笑ってたじゃない。ふふ、ダメよ……人の不幸を笑ったりしちゃ……」


 いえ、笑っていません。笑っているのは神様だけです。


 それより、そろそろ助けてあげたらどうですか? すっかり日も暮れて、流石にかわいそうです。


「えー? どうしよっかなー。わたしー、子供だから分かんなーい」


 そんなこと言ってるといつかばちが当たりますよ。


 「えー? わたしー、罰なんて当たったこと無いから分かんなーい」


 すると少年がイチョウの木にやって来ます。


 どうやら神様の出番はなさそうです。


「なによー。せっかく良い所だったのに……ちぇっ」


 少年は少女のことを探しに来たようです。


あゆみー!! 歩ー!!」


 でもその姿はありません。


「あれ? おかしいな……。絶対ここだと思ったんだけど……」


「ああ~、悠気ゆうきくーん。私はここ! ここだよー!!」


 少年が見上げると、探していた少女の姿がありました。


「あ! いた!! お前そんな所で何やってんだよー!!」


「梯子が横倒れになって降りれないのー!!」


「梯子? ああこれか。まったく何やってんだよ」


 無事に少女は救出されたのでした。

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