神様と彼女の場所取り戦争 5

 それからしばらくの年月が過ぎました――。


 この時の神様はイチョウの木の上から絶景を見ることにご執心でした。


 数多あまたのイチョウの木がきらめいて、見渡す限りの黄金一色。


 これ全部が独り占め。


「良いわー。この優越感がたまんないわー。うんうん、良き良き」


 神様は何年経っても言う事があまり変わりませんね。


「なによー! わたしに成長が無いって言い――」


「やっぱり私の思った通り! ここは絶景スポットだった!」


 まるで神様の台詞を遮るように、いつの間にやらすぐ隣にいる少女。


 制服姿から見て近くの中学校に通う学生のようです。


 イチョウの木に立て掛けられた梯子はしごは彼女が木に登る為に持って来たのでしょう。


 そして少女はカバンからスケッチブックや筆記具を取り出すと風景画を描き始めます。


「あ! この子!」


 神様は気づいたようですね。


 そう、彼女はあの時の女の子……あゆみです。

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