あのホームレスに七億を…… 3

 ヒイラギはホームレスのおじさんへ対話を試みます。


「おじさん、ここで何やってる人ですか?」


「いや、それこっちの台詞だから。嬢ちゃんこそ一体どっから湧いたんだ」


「もう! こんなに可愛いJC捕まえて、虫みたいに言わないで下さい。落ち込み案件ですよそれ」


「まあどうでもいいや。どうせ俺は死に損ないのクズさ。こんな汚いじじいに構ってないで早くどっかいけ!」


 おじさんは段ボール板の上に寝転がると、背中を見せてしっしっとヒイラギを追い払うようなしぐさをします。


 ヒイラギは少し考えると、おじさんから見える位置へ回り込みました。


「おじさんは死に損ないのクズなんかじゃないですよ。だって――」


 その時、どこからか石が飛んできました。


「やーい、汚いクズー! これでも食らえ!」


「じじい汚ねーんだよ、死ね!」


「そうだそうだ! 汚物は死ね死ね!」


 近所の悪ガキ達がやって来たのです。


「ちょ、止めて下さい!」


「うるせえ、ババア! てめえも死ね!」


「な! BBAじゃありません! JCです! ピチピチの女子中――」


「うるせえババア!」


 売り言葉に買い言葉です。


 それでも容赦なく飛んでくる石にヒイラギとおじさんはただじっとえるしかありませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る