神様の大誤算 4

 神様はモニターを見つめ、なにやら唸っています。


「うーん……」


 男の子の動向を一日監視した結果、特にこれといったトラブルはありませんでした。


「彼、いじめられっ子ではないわね。むしろ友人関係は良好だし。手の下しようがないわ」


 しばらく考え込む神様。


 するとハッと手を叩きます。


「分かった! きっと坊やの両親は夫婦仲が悪いのよ。その名も『家庭に問題を抱えた坊やは世界平和を祈りがち説』。ついにこの結論へたどり着くとは……もしかしてわたしって天才?」


 またもや使い魔ドローンが神様の元から飛び立っていきました。


 男の子の自宅――。


「ダーリーーーーン♡」


 男の子の母親が夫に抱き着きます。


「ハニーーーー♡ ♡」


 男の子の父親が妻を抱きかかえクルクル回ります。


「もう! ダーリンったらハート二つなんてずるいー。私の方がダーリンをいっぱい、いーっぱい愛してるんだからね♡ ♡ ♡」


「こらこら、ハート三つも付けやがってー、だったら……こっちは……ハート四つの刑だー♡ ♡ ♡ ♡」


「いやーん、ダーリンにしょされちゃうー♡ ♡ ♡ ♡ ♡」


 この様子をモニター越しで睨みつける神様。


「え、何これ? わたしは一体何を見せられているの?」


 覗き見しておいてそれを言えた義理ではないと思いますが、一つだけ分かることは『夫婦仲は超良好だった』ということでしょう。


「なんか無性にイライラしてくるわね。ゴッドパワー発動!」


 神様はパチンと指を鳴らします。


 するとモニターの向こう側で、ダーリンのワイシャツの襟の所に口紅のキスマークが浮かび上がりました。


 そしてそれに気づいたハニー。


「はあ!? ちょっと、あんた何よこれえええええええ!!」


「え? 何って何が? ってうわああ、何だこれー!」


「てめぇ何しらばっくれてんだよ!! どういう事か説明しろよ! ぁああん!??」


 怒号が飛び交い始めます。


 一瞬で地獄絵図に変わる夫婦仲。さっきまでの光景が嘘のようです。


「ふ、勝った」


 不敵な笑みを浮かべる神様。


 そこへ何もしらない男の子が参拝にやって来ました。


「世界が平和になりますように」


 神様は男の子の顔を覗き込んで嘲笑あざわらいます。


「ごめんねー。今日からあなたの家庭はどろっどろの修羅場になりそうよー」


 ひどい神様もいたものです。

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