神様の大誤算 3

 しばらくして――。


 鳥居の下で子猫と向き合う神様の姿がありました。


「ねえ、猫ちゃん。世界ってどこだろう?」


「みゃー」


「いや、みゃーじゃなくて、わたしはまじめに聞いているんだけど……。じゃあ平和って何だろうね?」


「みゃーみゃー」


「だからみゃーみゃーじゃなくて、わたしはこんなに悩んでいるのにあなたは平和そうで良いわね」


 どうやら神様は哲学の沼にどっぷりはまってしまったようです。


「ねえ、世界平和って美味しいのかな?」


 だめだこりゃ。


 その時、あの男の子が再びやってきました。


「世界が平和になりますように」


 相変わらずのようです。


 その姿をじっと見つめる神様。


 ふと、何か閃いたようです。


「あ、分かった! きっと坊やは学校でいじめられているのよ。だから坊やにとっての世界平和はいじめが無くなること。これぞ心理だわ。いやあ、ついに心理にたどり着いちゃったわ」


 神様はおやしろの奥へトコトコ入っていくと、すぐに戻ってきました。


 1機のドローンを抱えています。


「使い魔発進!」


 使い魔ドローンは飛び立つと、男の子の後を付いていきす。


 神様の手元のモニターでドローンに内蔵されたカメラの映像が見れるようになっているのです。


「本当、便利な世の中になったわ。本当はゴッドパワーで坊やの動向なんて手に取るように分かるのだけれど……無駄にゴッドパワーを使うと肩がこるからね。残念だなー、本当は見せたかったなー『偉大なる神の悪戯ゴッドパワー』。いやー見せられなくて残念だなー」


 誰も何も言ってないのに言い訳がましい神様なのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る