第2話 真 魔王

 ここは魔王城一区。一区からは魔王城は見えるが魔王城は浮かんでいる。どういう仕組みなのだろうか。


「来たか、ライクルス」


 何事もなかったかのようにエリスメリアがデビルに乗って現れた。


「この数、足音、弓兵を連れてきているな?確かに私もこの文書を読まされた時は警戒もしたさ」


「何事もなかったのか?」


「楽しくやっていたさ」


「残党狩りをか?」


「くれば分かる、この悪魔に乗れ、ライクルスよ」


「待て、兵士共は」


「そうか、撤退の合図を出しておけ」


「操られているな?」


「用心深い男だな、私が残党ごときに操られるわけないだろう、もしそんなことになってもライクルスがいるわけだしな」


 訳も分からずライクルスは兵士に撤退信号を出した。



 初めて入る魔王城。幻想的な城の中は特に他の城と変わりはなく大きな一室にエリスメリアと入った。


「連れてきましたよ」


 ライクルスは驚いた。そこには獣人族のシロガネや戦争では主に海賊団によって被害を受けていたものの中立を保っていた人魚族。そして怪しい魔術で敵を殲滅する金髪の悪魔族のエルシィ。一人で3部隊倒したりけた外れの孤高の戦士、リインヴァルス、そして見慣れぬシロガネより少し年上くらいの少女が座っていた。

 しかし肝心の側近のナーリィやシィルムがいない。ライクルスはなんとなく理解した。


「そういうことか、確かに単体でなくともリインヴァルスなら魔王デモリストア並みの強さを持つ」


 孤高の戦士、リインヴァルスは立ち上がる。


「その金髪、貴様がライクルスだな」


 ライクルスとエリスメリアが一斉にかかってもリインヴァルスに勝つことはできない。


「お前が魔王というのなら納得はできる。あの時始末しておくべきだったか」


「ふん、野蛮な男だな」


「くっ…側近のナーリィとシィルムはどうした?」


「ナーリィは俺が殺した。魔族にも魔族なりの安寧がある。貴様が安寧を求めるようにな」


「側近の次に強いのは間違いなくお前だろう。魔王を争った戦いが行われ勝利したというわけか、そして次は俺がお前に殺される、と」


「3割当たっているというところか。ナーリィとシィルムは側近というよりも見習いだな。貴様はナーリィとシィルムが攻撃したところを見たことがあるか?」


 言われてみるとナーリィとシィルムはデモリストアの側にいるだけで攻撃したり何か魔術を使っている光景を見たことがない。


「実践を見せ、戦争の恐ろしさを知らしめさせる。それがデモリストア様の考えよ、そしてナーリィは10位までいる魔族階級第7位、シィルムは魔族階級第6位。裏切りを企てた第7位のナーリィ、ナーリィを俺に殺され後悔している8位、9位が裏切り者だ。10位は裏切らなかったがな」


「つまり一位のデモリストアがいない今実質一位なのはお前か魔術師のエルシィということだな?」


「いや、五位は分かると思うが裏で得体のしれないものを作っている悪魔とでもいうべきか」


「聞いたことがある、ミストルルだな。何か開発者というべきか戦闘向きではないが耳にしたことはある」


「今でも二位は俺、三位はエルシィだ」


「4位は誰だ?」


「今は魔王になられたお方よ。魔王デモリストア様と吸血鬼軍の吸血鬼の王の血が混ざったハーフ、ミレイナ様だ」


 吸血鬼軍は吸血鬼の王を魔王軍に人質に取られて魔王軍と戦闘するも魔王軍により壊滅した。しかし肝心の吸血鬼軍の王の報告は受けていない。それに階級4位の上にデモリストアの跡継ぎだというのに聞いたことのない名前、ミレイナという名前が飛び出した。


「何か呼んだ?」


 するとシロガネより少し高いくらいの赤髪の赤眼の少女がリインヴァルスに普通に話しかける。


「あ、いえ、ミレイナ様の説明をしていました」


 あまり魔王には見えないその少女はライクルスのロンギヌスの槍に気づく。


「まあいいわ。ふーん、それがお父様を刺した槍ねぇ…じゃあこれで同盟ね」


 ライクルスには意味が分からなかった。よくもお父様を、の一言くらい覚悟していたがデモリストアとは真逆の平和主義者なのだろうか。何を考えているのだろうか。


「俺に怒りはないのか?」


「怒り?知らないわよ、お父様もお父様だしね、お母様はお父様みたいに汚い子にならないでとかいうしお父様はもう戻りようがないから後は頼んだとかいうしわたしもよくわからないわ」


 ミレイナの家庭事情はいろいろと複雑そうだ。

 すると中立を保っていたであろう人魚の代表から声がかかる。


「我はその人間知らんぞ、人間には世話になっとるからな」


「確かお父様を刺したライクルスよ、お父様を刺した」


 強調しているのかやはり妬まれているのだろう。


「なるほどのう、お父様を刺したライクルスか」


「ライクルスと呼んでくれ、お前は」


「我はミリリアント・ア・ソアーラじゃ、ミリリアントと呼んでくれ。全く、お主ら海賊には世話になったわ」


 場には人間族ライクルス含めエルフ族エリスメリア、獣族シロガネ、人魚族ミリリアント、悪魔族ミレイナ、リインヴァルス、エルシィが揃った。

 エルシィが声をあげる。


「では、今後について話し合いましょうか」


 人間、エルフ、獣人、人魚、悪魔による会談が始まる。




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