誓い



近場に小さな泉を見つけて、その畔にある真っ直ぐな木の根元にブレイクの遺体を埋めた。



墓標は、その人生と共にあったのであろう一本の剣。



ララは、感情を押し殺したような目でそれをしばし見下ろしてから、土で汚れた両手を泉の水で洗った。



 夜光虫だろうか、青白い光が、その手を包み込むように淡く温かく光っているのが、俺にはとても印象的だった。まるで目に見えない何かが、ララを慰めようとしているようで……。



ララは池のそばに腰を下ろして、星が瞬いている夜空を仰ぐ。



そしてやがて、吐き捨てるように言った。



「なんなの、アイツ? ふざけんじゃないわよ。お母さんを人質に取られて、エルフにこき使われていた? だから戦ってばかりいた? そして最後には……アタシを守った……?


 アタシのことなんて、どうでもいいと思ってたんじゃないの? どうして……最期にこんな姿を見せていくの?」


「ララ……」



 こんな時にかけるべき言葉を、俺は知らない。いや、きっとそんなものはないような気もする。



 ララは泣いていたのだろうか。



 見ないようにしていたから、俺には解らない。



 だが、しばらくしてからゆっくり立ち上がると、父の墓へと真っ直ぐに向き直った。そして、誓うように言った。



「アタシが……父さんの後を継ぐ。エルフから、精霊からお母さんを取り返す」


「俺も協力するぜ。まあ、俺の目的は何よりお前を守ることだけどな」


「……悪いわね、面倒につき合わせて」


「面倒? 道具である俺には、よく解らない言葉だな。俺は……どこまでも、ただお前と一緒に行くだけだ」


「――――」



 泣くのを堪えるように、ララがぐっとその唇を引き絞る。



人に涙を見せない。弱音を吐かない。



 それが、親に捨てられたと思いながら生きてきたララなりの『強さ』なのだろう。



 だからこそ、俺はやはりララを守りたい。その力になりたい。



「帰ろう。帰って、今はとりあえず少し休もう」



 俺はそう言って、《テレポート》を唱える。



 その直前、ララが言ったような気がしなくもない。



「……傍にいてくれて、ありがと」



 と。

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