第31話 家政"夫"と夜景とプロポーズと

「そろそろ迎えに来てもらおっか?」


十維が、康太に耳打ちして言ってきた。

すると凄い勢いで、京介が来て十維の手を退かせた。


「高柳兄!調子に乗りすぎじゃないか?」


「なーに、お前が女の子に囲まれて楽しそうだったから、だから康太さんと俺は楽しくしてただけだろ?」


「ふざけるな!

 康太、あいさつはひと通り終わった。もうパーティは十分楽しんだよな?と言うわけで俺たちは失礼するよ。

 高柳兄!あとは頼んだ」


「京介さん?うわ!」


京介はものすごい勢いで康太の手を引き、客船を出ていった。

そんな2人の様子を寧々も十維も微笑ましく見送った。



「京介さん?怒ってます?十維さんとは料理の話をしてただけですよ?何もないです!京介さん!信じてください!京介さん!」


京介は無言で運転する。


「ていうか、京介さんだって、楽しそうだったじゃないですか……」

「俺は!……お前がいればそれで良いんだ。だから早く切り上げたかったのに次から次から……

 んでお前見たら、あの高柳兄といるからもうどんなにイライラしてたか。

 康太お前さ、俺がイライラするのわかっててなんで兄といるんだよ!ほんっと人の気も知らないで……」


「僕はー……」

「あーもういい、とにかく着いてこい」


康太は外を見る。レインボーブリッジが綺麗に見えた。


「レインボーブリッジだ……綺麗。」

「康太、寄りたいところがあるんだ。いいよな?」

「はい」



大きなホテルの前に車は止まった。

「ここだ。行こう」


京介は、ホテルのスイートルームを用意してくれていた。

部屋からは先ほど見たレインボーブリッジの夜景がとてもきれいにみえる。


「すごーーい!」


「失礼します」


ホテルマンがどんどんと料理を運んできた。


「きっと客船では食べれないと思って頼んどいたんだ」


 あっという間に大きなテーブルにはたくさんの料理が並ぶ。そしてホテルマンは去っていった。





「こんなにたくさん、ありがとうございます。うわー凄い料理!どれから食べようかな?食べ切れるかなー?」


「無理することはないよ。食べたいのだけ食べればいいさ」


京介は自分のと康太のグラスにワインが注ぎ、乾杯をして食べ始めた。


黙々と食べる康太……

食べている様子を見つめながら食べる京介……



さぁデザートを食べようか?としたその時、京介は立ち上がった。そして、康太の横に片膝をついてしゃがむ。


「きょ…きょ… 京介さん…?」



京介は、大きめなジュエリーケースをあけて康太に見せる。


「婚約指輪っていうのはなんだ……変かな?て思って。だから代わりに、お揃いのネックレスを今日のところは用意した。

 言っとくけど、俺が店に行って、選んだやつだからな!


 康太……

 俺は一生をかけて、お前と一緒にいたいんだ。

 死ぬまでお前といたいんだ。


 ずっと俺は誰とつきあってもどこか違う気がしていた。探している人はこの人ではないなって感じてたんだ。


 康太と出会い、康太と一緒にいてわかった。


 俺が探していた人は康太なんだ!て。


 今のこの国ではキチンと婚姻関係を結べないことは分かっている。

 でも、パートナーシップはある、お前がよければきちんと婚姻届けを出せる国に移住しても構わない。ありとあらゆることでお前と一つになりたい。

 堂々とお前が俺の妻だと宣言したいんだ。

 みんなに伝えたいんだ。

 どこに行くにも、何をするにも一緒がいい。


 俺が愛しているのは、お前なんだと

 お前だけなんだと

 みんなに伝えたいんだ。


 康太……こんな俺だけど、どうか俺と結婚してください」



康太の返事をまつ京介は緊張していた……


「………そんなこと許されるんでしょうか?

 僕は、僕の家はありません、

 家柄も良くないと思います。

 頭だって、何も人に誇れるところは何もないですよ。

 

 僕と結婚したらデメリットしかないと思います。

 和子様だって猛反対されるでしょうし……

 僕のせいでお2人が喧嘩などされたら、僕は僕は……耐えられません。


 僕は……


 今のままで……」



うつむき答える康太。


「本気で言っているのか?

 たしかに反対はされるだろう、そんなことはわかっている。だが、このままだと俺たちは俺たちの関係を言わないで過ごしていくことになる。

 俺たちの関係を知らない奴らに、邪魔されてもいいのか?

 俺に見合い話がきてもいいのか?

 今日みたいに、何も知らない奴らが俺に迫ってきててもお前は嫌じゃないのか?

 俺は嫌だった。俺が動けない隙に高柳兄がお前に近づいて!


 お前の家族のことはわかっている。もし、親戚の方が面倒見てほしいというのなら俺は俺の出来る限りで面倒を見るよ。

 収入が足りないというのであれば今以上に稼いでみせる。


 お前を手放さないためなら何だってするよ。


 お前とは"家政夫"としての契約ではなく

 "結婚"という契約を結びたいんだ。


 康太、どうか受け取ってくれ。


 絶対にお前から離れない

 絶対に、お前を幸せにするから


 俺と……俺と結婚してください。」




  これから先どんなことがあるかわからない。

  しかし、京介さんとならばきっと……



康太はネックレスを手に取り、ネックレスに、キスをした。


そして


「よろしくお願いします。」


と答えた。

それを聞いた京介は、満面の笑みを浮かべ康太を抱きしめた。

 その力はいつも以上に入っており


「痛いですよー京介さん!」


と康太が訴えても聞こえていない。


「康太、幸せになろうな!死ぬまで一緒にいて、幸せになろうな」


「痛いってー、もう!!

 はい、幸せになりましょうね。京介さん。」


「康太、康太、お前は俺のだからな!俺の康太なんだからなーー!康太!」


「分かったって!もう。わかったから離してよーー」


いつまでも離れてくれない京介なのでした。

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