第30話 家政"夫" パーティへいく
「康太、急げ!間に合うのか?」
突然2日前に、高柳家から豪華客船のお披露目パーティに招待されていたと聞かされた康太は、急ぎ準備をして、これから出発するのだ。
初めてのパーティ参加とあって康太はもう朝からバタバタと落ち着きがなく用意する。そして、それはこの直前になってもだった。
「あーー……、やっぱこれじゃダメだー」
鏡の前でヘアセットがうまく行かずアタフタしている。
「だから今日も美容院予約しろって言っただろ?」
「そんな!昨日、今日ひとりでも簡単にできるようにと、毛染めもパーマもかけてもらったのに、セットだけに美容院に行くなんて勿体無いです!」
「でも自分でセット出来ずに変な頭で行くのはどうなんだ?依頼してきた高柳さんにも申し訳ないと思わないか?」
「……………どうしましょう?」
泣きそうな顔の康太。ハーーッと大きくため息をついて京介がそばにいく。
「仕方ないなー。オレがやってやるよ。」
手が焼ける康太なのでした。
「それじゃ行ってくる」
「気をつけてね。楽しんで行っておいで」
和子の見送りで2人、パーティへと向かったのでした。
「でっかーーい!」
初めて豪華客船をみて驚く康太。招待客も大勢いる。
「康太さん!来てくれたんですね。素敵な服だ。似合ってますよ」
「なぜお前がここにいる!高柳兄!」
京介は慌てて康太の前に出る。
「うちが招待してるのに、次男の俺が居ないわけないでしょ?ってか、何度言ったらわかるかなー、僕にも好きな人がいますから。康太さんを狙ってませんって!」
「お前は信用ならん」
「康太さんからもなんか言ってやって!」
康太に十維が近づく
「テメェ!近づくな!」
「アッハッハ!面白いなー。ツチノコ鉄仮面若林京介を揶揄うには康太さんが1番だ」
十維は去っていった。
「ツチノコ鉄仮面って?」
「お前は知らなくていい」
「かくしごと?」
「あ、いやそうじゃなくて……。
ほら、俺はこう言うところ苦手だから滅多に出てこないだろ?で、たまに出てきてもいつもみんなから不機嫌で感じ悪いって言われてて……。そしたら誰からなのか俺を鉄仮面っていうようになったらしい。おまけにあまり出てこないからって、ツチノコ鉄仮面ってさ。
こんなあだ名、恥ずかしいだろ?」
「面白い。ツチノコ鉄仮面って面白い」
「若林さんじゃなくて?やっぱりヤングウッズの若林京介さんですよね?こんなところで、お会いできるなんて私嬉しいです。よろしければあちらで話さないかしら?」
「え?若林京介さまなの?」
「若林さん?きゃー!会いたかったですー!」
女性たちが次々と、京介を取り囲んでいく。
「康太さん!」
1人ポツンといると、寧々がやってきた。
「あちゃー、若林さん囲まれちゃったね。無理もないよなー、若林さんは、SSだからなー」
「SS?」
「そう、超優良物件。彼って、生涯収入の安定が著しくあるでしょ?何代も何代も安泰が約束されてるほどにね。
その上、あの高身長、高スタイル、高ルックス。どれをとってもSSクラス!
そしてあの冷徹さ。これがまたクールでかっこいい!と言われてるんだよね。
彼と知り合いたい!お見合いしたいって人は後をたたないって評判なのよ」
「へーー……」
「あ、でも康太さん一筋だから大丈夫よ!」
「ありがとうございます、心配はしてないので大丈夫ですよ。ただ……」
「ただ?」
「やっぱり、僕とは遠い人なんだなとは思います。僕が横にいていいのでしょうか……とも」
「そんなの!良いに決まってるじゃない!そもそも、今日は、若林さんを呼びたかったんじゃなくて、康太さんを呼びたかったのよ!わたし。いつもたくさん教えてもらったから、今日は楽しんで欲しいんです!
そうだ!私の親に会ってくださらない?ほら、行きましょ!」
寧々は康太をひっぱり、多くの人に囲まれて挨拶をしている寧々の両親の元へと連れて行った。
「お母様、お父様、彼が康太さんよ」
「あなたが康太さん!会いたかったわ」
「君の噂はたくさん聞いてるよ。いつも寧々を指導してくれてありがとう。
僕はね、寧々が作った手作り料理を生きてる間に食べれるなんて思ってもみなかったんだ。そしたらこの前、突然会社に来たかと思ったら僕に弁当を作ってくれてね。涙しながら食べたさ。
これが本当にどれを食べても美味しくてね。感動したよ。
どうだい?君さえ良ければ、家事の習い事の講師をしないか?なに、資金ならいくらでも援助するよ?」
「そんな、僕にはそんなこと出来ませんよ」
「お父様、康太さんが困惑してるわ」
「あとききたかったんだが、寧々とのことだが……その……その気はあるのかい?」
「はい?」
「お父様!!」
「いやー、とても仲良いとは聞いてるが、ほら、その気があるなら私らとしては君の素晴らしさはわかってきたので……その……」
「なになに?父さん、康太さんなら寧々の婿にしても良いって?」
十維がやってきた。
「人柄もとても良さそうだしな」
「お父様!どうしてわかってくれないの?私には心に決めた人がいるって何度も言ってるのに!」
寧々は怒って去っていった。
「あ!寧々さん!」
康太はオロオロ……
「康太さんすみません。気にしないでください。いつものことなんです。この人、どうも寧々の彼が気に入らないみたいで。他にいい人がいたらいつも勧めて寧々の機嫌を損ねるんですよ。
そうだ!康太さんに私、お願いがあるんです。料理はもう食べられました?是非ともひと通り食べていただきたいの。それで色々とアドバイスを頂けないかしら?
十維さんよろしければ、案内してあげてくださらない?」
「はい、お母様。
じゃ康太さん、行きましょう!俺もちょうどお腹空いてたんで」
十維と動くと京介が怒るかも?と京介の方を見る。多くの女性や、京介に挨拶をしたいと思ってる大人たちに囲まれて、全く身動きがとれない様子。
楽しそうじゃん……
「行きましょ!十維さん!」
康太は十維に勧められるがまま食事を食べてはひとつひとつに感想を言う。そのひとつひとつをメモを取り、真剣に十維は聞いていく。
「さーて僕が相手できるのはそろそろ終わりかな?」
料理を、ひと通り食べ終わると十維はそう言って、康太の肩に手を回した。そして小声で耳打ちしてきた。
「そろそろ迎えに来てもらおっか?」
それはそれはとても距離が近く、キスでもされるのか?と一瞬康太はドキッとした。
そしてそれはもう1人も同じ、十維の手はすぐさまつかまれた。
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