第7話 雇用主の想いと家政"夫"の服
「康太さん、お昼はマルコなんてどう?」
「エッ……」
康太なら喜ばないまでも、『はい』と返事をしてくれると思っていた京介は驚いた。
エッて言った?今…。エッて言ったよな……
今のは明らかに嫌がってたよな……
何?俺は何を間違った?
マルコなら何でも好きな物を食べれるし、嫌と言う人を聞いたことないからイケるかと思ったんだが…違うのか?
「ごめん、嫌いだった?」
「いえ嫌いだなんてそんなそんな。入ったことすらないです、あんな高級店。
ただ……こんな格好なのでそんな高級店には入れないかと……」
康太としてはこれでも一生懸命のオシャレだが、先ほど見た鏡の光景が頭をよぎる。
「僕にはオシャレがあまりわからないので康太さんの今の格好が悪いとは全く思いませんよ?でも、康太さんが気になるなら、じゃ先に服を見にいきましょうか。」
京介は車を走らせる。
そして1軒のブティックの前で停まる。
「どうぞ。」
戸惑う康太。
そんな戸惑いは気にせず京介はどんどん誘導する。
康太の車のドアを開け、店の中へ誘う。恐縮しながら康太も店に入って行った。
ここは京介行きつけのセレクトショップ。
というか服に興味がない京介はこの店で勧められるがままをいつも購入しているのだ。
「若林様!?」
突然の来店に従業員が慌てふためく。
「突然ごめんね、こちらうちの大事な "康太さん"。
彼 に似合う服を見繕って欲しいんだ。
これから2人でマルコでランチをとるからね。頼むよ」
ド派手な店長が奥から現れてきた。どんどん会うたびに化粧が濃くなり、今ではドラッグクイーンかのようにみえてくる。
「あーら可愛い子ちゃんね。いいわよーまっかせなさい!」
そう言って康太を奥へと連れていった。
京介はフィッティングルーム前にあるソファへと座る。
従業員3人がかりで康太の服を選ぶ。
こんな状況は初めての康太はオロオロするばかり。そして言われるがまま服を着替える。
京介はうろたえて変な動きになっている微笑みながら康太を見る。
康太さんて、背は165くらいか?
腕とかも細いな…てか、女性みたいに可愛く笑うんだよな。
慌てふためいてる。フフ…
あぁ肌も白くてもちもちしてそう。
手とか握ったらどんな反応するんだろ?慌てるのかな?
また顔を赤くしてくれるかな?
フフ…可愛い人だなー……
ん…………!男性に可愛いとは!
俺はなんて失礼なことを考えているんだ!
1人で考え、1人でツッコミ、1人で反省するのでした。
「お待たせしました」
店員がそう言ってきたので、京介は康太のほうを見た。
オシャレに仕上がった康太は見違えるほどの素敵に仕上がっていた。男らしいというよりは、ジェンダーレスな感じに仕上がっていた。
可愛いい………
ついつい見惚れてしまっている京介に、恥ずかしそうに康太は尋ねた
「あの…僕、どうでしょうか?」
「とてもいいと思うよ。その、なんて言うか…… 似合ってる。
それじゃ康太さん………そろそろいこうか…」
京介も恥ずかしそうに頭をポリポリかきながら立ち上がった。
「あ!支払い!」
康太は京介に言う
「いいんだ、今日は感謝の日だから、これくらいプレゼントするよ。
というか、勝手に店まで連れてきたんだし。
ごめんね、食事をもっと別の店を選べたらいいんだけど、俺は店を知らないから。
それに、なんていうか、こちらこそありがとう」
「そんな!勝手にだなんて。僕が服のことを言ったからだし。
それにこんなに高い服を買ってもらうなんてなんだか申し訳ないです」
「いいんだ!プレゼントさせてくれ。俺今、すごく気分がいいんだ。
お願いだから、プレゼントさせて欲しい」
京介は言いながら、康太の肩に手を当てた。
「いいのでしょうか……ありがとうございます」
はにかむ様にお礼を言う康太。肩に当てた手が温まるのを感じた。
康太さん、可愛い……
なんだこの可愛さは。
髪もセットされてクルクルしててそれも可愛い。
あ、こっちみた
目も丸くてキラキラしてて、なんだろう
何故か顔が赤くなった京介と、夢心地で、フワフワした感情になっている康太の2人は車に戻り、マルコへと向かうのでした。
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