第27話 薄っすらと成分が入ってます

カレンとミツルちゃんが遠い親戚の孫?を客間に案内している間に、手早くテルリアン叔父様と打ち合わせをした。


「出来れば、ナノシアーナ殿下の前でジョナとの繋がりを暴露して頂くと楽なのですが、確たる証拠が欲しいところです」


証拠か…叔父様もこれが欲しかったんだろうね。この世界にはボイスレコーダーとか無いもんなぁ〜まあ私が王族っていうのが最大の強みにはなりそうだよね。私が黒と言えば黒だ…これしかないかな。


「とにかく殿下、頑張って下さい!」


ここにきて丸投げっ!!!


丸投げ発言をしてきたテルリアン叔父様のかわいい顔を睨んでみたが、腹黒アラサー(推定)はシレッとしていて堪えちゃいない。


飄々した表情のテルリアン叔父様は、胸元のポッケから丸いフレームの眼鏡を取り出してかけた。


おおっなるほど変装ですか?おまけに前髪を手櫛でわざとボサボサにしておでこを隠している。そうすれば益々年齢不詳の使用人になってしまいますね~


テルリアン叔父様に早く!早く!と、押し出されて廊下に出たが歩く足取りは重い…


くうぅ…腹芸とか苦手なんだよっ、いつも直球勝負なんだからね!


気が重いまま、すまし顔のテルリアン叔父様を引き連れて客間に入った。


客間には…これはビックリ!薄っすらと、ほんのりと、微か~にラナイス様とテルリアン叔父様の美形欠片成分が遺伝子レベルで感じられる20代前半の男性が待っていた。おまけに呼んでもないのにジョナまで付いて来ている…BBAめ…


そのBBAの横でテルリアン叔父様は丸眼鏡をかけて変装していて立っているが、ジョナはまるで気付いていないようだった…BBAは老眼かな?


そして改めてソファの前に立つ、孫っぽい?男性と向き合った。


あ~なるほど、腹立つけど顔にラナイス成分を感じてしまうわぁ…この孫っぽい?人もイケメンの部類だね。


ラナイス成分微量の男性はニヤッと笑った。うわぁ…ラナイス様と同じニヤリ笑いでもこうも違うのか!


確かに孫っぽい?奴からイケメン成分の欠片を感じる顔だけど、なんだろう?滲み出る下衆さ加減を感じる気がするような胡散臭い笑顔だった。


私はミツルちゃん特製のベールを頭から被っているので、相手からは見えないだろうと思いつつ、黙って頷いて見せただけの動作をした。


「お会い出来て光栄にございます、ナノシアーナ殿下。ブレイド=マスメットでございます」


マスメットの孫?は一応、腰を落として王族に対する挨拶っぽいものはしてきた。…で、そのすぐ後に


「おいっ人払いを!」


と、客のくせに急にその場を仕切り出した。


なんだこいつ?


私はテルリアン叔父様をチラ見した。叔父様は壁際に立って動こうとはしない。


「何をしている!早く出て行け!」


なおも声を上げたマスメットの孫に、意を決して私は声をかけた。


「私に何か御用なのかしら?」


敢えて人払いには触れないでいたが、マスメットの孫は傍目にも分かるほど狼狽え始めた。


何だ?どうした?


そして…ジャケットの内ポケットを弄り、何か紙を取り出した。それに目を落とすとおもむろに


「『我々と手を組みませんか、とさり気無く聞くように』あっ!違った!え〜と…」


と、呟いた。


「!?」


ま…まさか?そ…それは……


記憶力イマイチな方の必須アイテム、カンペなのかぁぁぁっ!?

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