第28話 自ら証拠を披露していく件

マスメットの孫はオロオロしながら何故か私を見てから、何を思ったのかジョナを見てしまった。恐らく助けを求めたのだろうが、ここで2人が繋がりがあることを見せてはいけないのは素人目にも明らかだった。


「ジョナッ!なんとかしろ!」


孫はジョナに丸投げた!…ここでも丸投げが発生。


しかし私はこのチャンスを逃しはしなかった。


左手のガードががら空きだっ小僧ぉぉ!!!!


私は素早く動くと、マスメットの孫の手に握られていたカンペをひったくった。


「あっ!?」


私は奪ったカンペに目を通して声高に朗読してみた。


「『ナノシアーナ殿下に取り入って屋敷に滞在しろ』ほぉ…『ラナイスと殿下の仲はどんな感じなのか詳しく探れ』へぇ…『もっとジョナを焚きつけてテルリアンを抱き込め』ふ~ん。あれ?『ジョナに睡眠薬をわた…」


「やめろ!!」


読み上げていた私に向かって、マスメットの孫が手を伸ばして来た。その手が私の腕を掴もうとした時に、私と孫の間に誰かが立ち塞がった。


「…下がれ」


真っ黒の忍び装束(違)で刀(剣)をマスメットの喉元に向けているのは…お頭だっ!おまけにイガモノ三人が私の横にいつの間にか立っていた。


「なっ…なっ!?おまっ…な…に…」


マスメットの孫は恐怖からか、顔色を赤くしたり青くしたり忙しそうだ。


お頭たちは隠密(私の想像だ)なので、人前にワチャワチャ出て来たりしないのだが、ここぞという時にはこうやって助けに入ってくれるのだ。


お頭は刀(違)を鞘に納めると、音も立てずに私の背後に移動してきた。他のイガモノも揃って私の背後に回ってきた。傍から見れば怪しい集団に周りを固められているように見えるだろう。


マスメットの孫は唇を噛み締めながら、またジョナの方を見た。見られたジョナは流石に顔色を変えている。


「ジョナ!どうなっているんだっ!?こんな連中がいるなんて聞いてないぞ!」


あ……自ら暴露した。


ジョナはブルブル震えながら、なんとここに来て逃げ出そうとした!…が、イガモノが一瞬でジョナの前に回り込んでその進路を阻んだ。


「メイド長、先程からま……ゴホン、が盛んにメイド長の名前を呼ばれてますがお知り合いですか?」


私がシレッとそう尋ねるとジョナは首を横に振りかけた、だが…


「ああ、そうだ!ジョナがこの屋敷で働けるように手配したのはお爺様だ」


孫が堂々と暴露したぁぁぁ。


「…ち…違います!私はっ…」


ジョナは顔を真っ赤にして反論しようと叫んでいる。


これは〇鹿が勝手に証拠を披露して勝手に自滅していく系なのか?


ジョナが尚も逃げようとしたので、イガモノが取り押さえようとして手を伸ばした。だがここでジョナがBBAの粘りを見せてきた。


「触らないでっ!テルリアン様に申しつけますよっ!」


テルリアン叔父様はここにおりますがな…なんなら、今は大口開けて欠伸しちゃってるから…


ジョナは抵抗しながら、更に叫んだ。


「今、マスメット卿がこちらに向かってるのよ!あんた達なんて追い出してやるからっ!」


………やっぱり自ら証拠を生み出していく系なんだね。


BBAも孫もイガモノ相手に騒いでいたが、テルリアン叔父様(擬態中)が小声で


「あ~そのマスメット卿ですが、ラナイスに足止めされて領内には入れてないと思いますよ?」


と、言っていたのだけれど…生憎とBBAと孫が騒いでいたのでその呟きを聞いていたのは私とカレンだけだった…と思う。

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