第42話 船を建造するぞ!
――一週間後。
一旦、俺たち攻略部隊は、休養のためそれぞれの部族へ戻った。
俺もブルムント族の本村落に戻り、アトス叔父上に報告を行った。
「そうか! 海にたどり着いたか!」
アトス叔父上は、手放しで喜んでくれた。
俺は現地の状況も説明する。
「むむ……なるほど……。波が高くて荒れている海か! それでは、小さなボートなどひとたまりもないな」
アトス叔父上は、傭兵仕事で船には何度も乗っている。
大トカゲ族のロッソや妻でエルフ族のジェシカよりも理解が早い。
「そこで、船を建造しようと思います」
俺は思いきって、船の建造をすると切り出した。
アトス叔父上は、目を丸くして驚いたが、ニヤリと笑った。
「やってみろ!」
この叔父は、いつも俺の背中を押してくれる!
ありがたいことだ。
「ガイアよ。どんな船を作るのだ?」
「最初は、ロングシップという船を作ろうと思います」
俺は羊皮紙に書き起こした図面を広げた。
アトス叔父上が身を乗り出す。
「ほうほう! 立派な船だな!」
「二十五人乗りの船です。喫水が浅いので、川に入っていくことも可能です。小回りがききます」
造船の知識は、『情報ダウンロード』で得たので、俺の頭の中には色々な木造船の設計図や造船方法が入っている。
沢山の船の中から選んだのが、ロングシップだ!
ロングシップは、バイキングが使っていた船で、いわゆるバイキング船だ。
地球では十世紀頃に使われていた木造船なので、バルバルの木工技術でも造船可能だろう。
全長は十七メートル、全幅はニメートル五十センチ、喫水は五十センチなので、かなり浅い場所でも運用可能な船だ。
ロングシップは、キール、竜骨を備えているので、荒波にも負けない頑丈さを備えている。
そして、船体が大きくないので軽量な船でもある。
人数を集めれば、ロングシップをかついで移動させることも可能だ。
丈夫で軽量な上に小回りがきくので、この船で新しく得た海を探検するにはピッタリだ!
「ふむ……。ガイアよ。建造するのは、どうする?」
アトス叔父上が、口ひげを右手で触りながら質問してきた。
人員配置など、色々考えているのだろう。
「板材は、あちこちの村で分散して作ってもらおうと思います。最初に見本になる板材を作って、同じ物を複数の村に依頼すればどうでしょう?」
木工職人は、あちこちの村に住んでいる。
ブルムント族の本村落に集めることも出来るが、恐らく反発が起る。
彼らは村の貴重な技術者なのだ。
それに、分散してパーツ生産をしてもらった方が、生産速度も上がるだろう。
「そうだな。それなら問題ない」
「ブルムント族の本村落の木工職人は、重要なパーツを作ってもらいます。そして、出来た順に海の近くへ運んで、最後に組み立てます」
キールやマストは、ブルムント族の木工職人に作らせる。
重要パーツは、俺が『情報ダウンロード』した知識を元に指導しないと無理だろう。
そして、木材はオークの木がある。
オークの木は、丈夫な木材になる資源で、山ほど生えているのだ。
「ガイア! 上手く行きそうじゃないか!」
「ええ! 絶対に成功させますよ!」
ロングシップの建造は、急ピッチで進められた。
アトス叔父上の根回し、そしてこの二年の間に俺がバルバル内で発言力を高めたせいもあって、誰も反対しなかった。
新たに獲得した海のある領域には、寝泊まりできる小屋を建てた。
最初に海を見た岩場から、少し離れた場所に砂浜を見つけたので、砂浜を船の組み立て場所にした。
春夏は傭兵仕事が一件入り、俺たちはリング王国まで出張ったが、その間も木工職人たちによって、造船作業は進められた。
――そして夏の終わり。
「完成だ!」
ロングシップが完成した!
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