第40話 ストームウルフ戦

※37話で北西と書いてありましたが、北東でした。

すいません、お詫びして修正いたします。

軽度の方向音痴で、よく東と西を間違えます。

ちなみに、亡き父は、よく右と左を間違えていました。



 バルバルの居留地から二年をかけて、北東へ支配領域を伸ばしてきた。

 俺たちの邪魔をする魔物は討伐して、大トカゲ族のロッソが美味しくいただきました。


 そして、地図とスキル『スマッホ!』の情報を照らし合わせて判断すると、もうすぐ海に出るはずだ。


 だが、俺たちの邪魔をする魔物がいる。

 ストームウルフだ。


 俺はスキル『スマッホ!』の画面で【魔物】ボタンを押す。

 十匹ほどいるな……。


『ストームウルフ やや強い 良質な毛皮がとれる』


 吹き出しには、『やや強い』と物騒な説明が表示されている。

 毛皮が良質なのは、非常にありがたい。

 売れば金になるぞ!


 ストームウルフと戦闘をする前に、大トカゲ族のロッソと打ち合わせる。


「狼型の魔物だろ? どうだ?」


「ガイアが寝込んでいる間に、ちょいと戦ってみたが、スピードがある。かなり早いな」


 なるほど『やや強い』のは、早いからかな?

 ロッソは続ける。


「だが、あまり固くねえな。一撃入れば、楽勝だった」


 なるほど、ストームウルフはスピードタイプの魔物で耐久力はない。

 それなら十分いけそうだ。


「一匹デカイのがいる。そいつが、この辺りのボスだな」


「わかった。そいつは、俺とロッソでやろう!」


「おう!」


 俺が率いるバルバルの攻略部隊は、二十人だ。

 各部族から腕っこきを集めた。

 少数精鋭で邪魔になる魔物を狩っている。


 なぜ少数精鋭なのかというと、村の農作業や建築仕事などに人手が必要になるからだ。

 少数精鋭にすることで、村の生産力を落とさないようにしている。


 ロッソとの打ち合わせを終えて、俺は攻略部隊に命令を発した。


「よし! 行くぞ!」


「「「「「おう!」」」」」


 テントを張っていた野営地を出て、森の中を進む。

 しばらく歩くと、森が開けて荒れ地に出た。

 ザラリとした土がむき出しの地面と背の低い草が一面に生えている。


 荒れ地の中央にストームウルフの群れがいた。

 中央に一際体の大きいストームウルフがいる。


 あれがロッソの言っていたヤツか!

 恐らくボスだろう。


 ストームウルフの群れは、ボスのストームウルフを中心に魚鱗の陣に似た隊形を取っている。


 対して、俺たちバルバルの攻略部隊は、中央に俺とロッソを配置した鶴翼の陣だ。

 この戦いでストームウルフの群れを殲滅する。


「ゆっくり前進しろ! 盾持ちは、構えながら前進だ!」


 俺の命令でバルバルの攻略部隊が、ゆっくりと前進を開始した。

 盾持ちがしっかりと盾を構え、ストームウルフの群れに圧をかける。


「グルルルル……」

「ウー!」


 ストームウルフが、うなり声を上げる。

 だが、まだ遠い。

 弓で有効打を与えられる距離ではない。


 俺たちは、さらに前進する。

 ストームウルフとの距離は、二十メートルを切った。


「オオオーン!」


 ボスのストームウルフが吠えた!

 ストームウルフの群れが動き出し、俺たちに向かって一斉に突っ込んでくる。


 ――早い!


 ストームウルフの群れは、二十メートルの距離を一気につめてきた。


「迎撃!」


 俺が大声で命令を出すのと同時にエルフ族の矢が先頭のストームウルフを仕留めた。

 続けて、もう一匹ストームウルフがドウと倒れる。


 ジェシカだ!

 神速の二連射!


 チラリとジェシカに目をやると、ジェシカはニッと肉食獣の笑みを見せた。

 これで残りは、八頭だ。


 残りの八頭は、すぐそこまで来ている。


 ――接敵!


 グワシャと鈍い音がして、盾持ちが構える大楯にストームウルフが激突する。

 だが、大楯は小揺るぎもしない。


「ぬるいぜ!」


 盾持ちの一人が勝ち誇った声を上げる。

 跳ね返されたストームウルフは、大盾の影から躍り出た剣士に突き殺され、斬り殺された。


 なんとか逃げたストームウルフも、盾持ちと剣士に囲まれ矢に追い立てられて絶命していく。


「ガイア! 来たぜ!」


 ロッソが腰をしっかりと落として大楯を構える。

 ロッソの視線の先に、大型のストームウルフが見えた。

 左右に援護のストームウルフを連れて、俺に向かって一直線だ。


「でええい!」


 ロッソとストームウルフが接触した。

 向かって右側のストームウルフが、ロッソの大楯に突っこみ跳ね返された。


 だが、その一瞬のすきにボスと左側のストームウルフが、ロッソをかわし俺に迫る。


「ガイア! 二匹だ!」


「任せろ!」


 俺はロングソードを担ぐように構え、グッと腰を落とす。

 ジッとストームウルフのボスをにらむ。


「ガア!」


 二匹が飛び上がった。

 わずかにボスの方が早い。


 俺は右足を踏み込みながら、躊躇なくロングソードを振り降ろした。


「フッ!」


 ロングソードは、ストームウルフの間合いの外から襲いかかり、ボスの頭蓋骨を両断した。

 両の手のひらに、薪をたたき割ったような衝撃が伝わる。


 ――衝撃が伝わった瞬間、俺はロングソードから手を離した。


 集中力が極限まで高まり、全てがスローモーションに見える。


 視界の隅に、俺の首筋にかみつこうと大口を開けて飛びかかるボスの左側にいたストームウルフが見えた。


 ストームウルフの口の中に、俺は左腕を突っ込んだ。


「グア……! ガ……!」


 気の毒なストームウルフは、喉まで俺の左腕が詰まって呼吸困難を起こした。

 俺の左腕には、ストームウルフの牙が食い込み激痛を感じるが、シュウシュウと煙を上げてスキルが傷を回復させている。


 空いている右手で鉄のナイフを抜いた。

 ストームウルフの目が恐怖に染まる。


「悪いな。オマエの毛皮は、もらっとくぜ」


 俺は鉄のナイフを、ストームウルフの心臓に突き刺した。

 ストームウルフは、ビクリと一瞬体を震わせて息絶えた。

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