第6話 銭闘民族!

 村の産業が、『傭兵』と叔父アトスから聞かされた翌日。

 さっそく傭兵の依頼が飛び込んできた。


 なんと!

 ついこの間まで戦争相手だった帝国からだ!


 帝国の南の方で戦争が起きるらしく、援軍に行けとキンキラに飾りたてた鎧を身につけた使者が告げた。


「そなたらバルバルは、我らヴァッファンクロー帝国に臣従したのだ。忠誠と献身を期待しているぞ!」


 ふんぞり返る使者に対して、アトス叔父上がつまらなそうな顔で淡々と応じる。


「はあ……。それで、報酬はいかほどでしょうか?」


「む……! 金の話しなど無粋ではないか!」


「忠誠と献身には、それ相応の報酬で報いていただきませんと困りますなぁ~。我らも畑仕事や狩りをほっぽり出して援軍に行くのですよ。まさか、帝国様はタダ働きさせるつもりではないですよね?」


 アトス叔父上がヴァッファンクロー帝国の使者を、淡々と詰める。


「ん? いや……、まさか、そのようなことは……」


 あ!

 使者のオッサンが、目をそらした!

 タダ働きさせるつもりだっただろう!


 俺が頭に血を上らせて立ち上がろうとすると、アトス叔父上が、『任せろ』と小声で俺を制した。


「そうですよね! 世界一の大国であるヴァッファンクロー帝国が、まさか我ら辺境のバルバルに『タカリ』をかけるわけがないですよね!」


「そんなことがあるはずはなかろう! 報酬は弾む!」


 使者のオッサン、煽り耐性なさ過ぎだろうwww。

 俺は真面目な顔を取り繕いながら、心の中で爆笑した。


 そこからは、アトス叔父上のワンサイドゲームで、報酬に金貨! さらに前金!

 さらに、さらに、活躍した場合の割り増し報酬、食料の提供、移動の支援など、ありとあらゆる条件を帝国からむしり取った。


 使者に同行していたヴァッファンクロー帝国の文官が、苦笑いしながら傭兵契約の内容を羊皮紙にまとめ、俺と使者がサインをする。


「戦には負けたが、銭闘には勝ったぞ!」


 ヴァッファンクロー帝国の使者を送り出した後、アトス叔父上は高らかに拳を突き上げた。

 アトス叔父上には、脱帽だ。

 これからこの頼りになる叔父には、色々学ばせてもらおう。

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