第3話 華麗なる土下座スタート

 大天幕に入ると、偉そうにふんぞり返った男がいた。

 立派な椅子に足を組んで座っている。


 アレが皇帝だろうか?


 男の周りには、これまた偉そうにふんぞり返る男たちがいて、キンキラの金属鎧に身を固め俺をにらみつけてきた。


(ナニコレ……? 俺、何かした?)


 俺が戸惑っていると、アトス叔父上が小声で話しかけてきた。


「ガイアよ! 何があっても耐えるのだぞ! 頭を下げ、ひたすらに耐えるのだ!」


「えっ!? ああ、はい」


 どういうことなのか、さっぱりわからない。

 そんなことより情報インストールで頭痛がひどいのだ。


 俺がボーッと立っていると、兵士たちが俺とアトス叔父上の体をつかんで押さえつけた。

 無理矢理座らされ、土下座の格好をさせられる。


(俺の異世界生活は、土下座から始まるのかよ……)


 頭痛のせいもあって、かなりイラつくが、アトス叔父上が『何があっても耐えろ!』と言っていた。


 仕方がない……。

 我慢しよう……。


 目の前では、偉そうにふんぞり返った皇帝が、土下座する俺を冷たく見下ろしている。


「我が帝国に従うなら、命は取るまい。だが、帝国に逆らうなら皆殺しだ!」


 皇帝は五十過ぎくらいの体格の良い男で、全身から発する圧が凄い……。

 日本で生活していた時は、こんな迫力のある人物に会ったことがない。

 正直、チビリそうだ。


 せっかく転生したのに、いきなり殺されてはたまらない。

 俺とアトス叔父上は、皇帝に土下座し許しを請うた。


 周りには立派な鎧を身にまとった帝国軍の将兵がいて、俺たちを見下ろし嘲り笑った。

 その中の一人、小太りの若い男が怒鳴り始めた。


「ふん! このバルバルどもめ! 帝国に逆らいおって!」


 相手の言葉はわかるが、話している内容がわからない。


(バルバルって何だろう?)


 俺がポカンとして怒鳴る相手を見ていると、顔面に蹴りが飛んできた。


「ウグッ!」


 体が吹っ飛び、口の中が切れた。

 小太りの若い男は、怒鳴りながら俺を蹴り続ける。


「この生意気なバルバルめ! 貴様たち野蛮人は、我ら帝国に従えば良いのだ!」


 いきなりの暴力に俺は混乱した。

 反撃など出来ないし、体を丸めてひたすら謝る。


「すいません! すいません! ごめんなさい! ごめんなさい!」


 男は俺を蹴り続けたが、やがて疲れたのか蹴るのを止めた。


「思い知ったか! 二度と逆らうでないぞ!」


 俺はボロボロになり、叔父アトスに担がれて天幕を出た。

 何てヒドイ異世界転生だ!

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