第28話

天蓋をそっと手で開くと、いくつかの皿に色とりどりの食事が盛り付けられていた。ふわふわと湯気がのぼる料理はなんだかいつもより綺麗に見える。


「ではまずこちらから……」


そう言って一皿ずつ手で指し示しながら、専門的な用語は使わずに分かりやすくした言葉を簡潔に、柔らかい声色で説明していく。


「それでは、冷めないうちにどうぞ」


そう言ってまた深く頭を下げ、リリアもお食事が終わったらまた参りますねと言って一緒に部屋から出たのを確認して、天蓋を広く開ける。


食事とは、いつも決まった時間にただ空腹を満たすために運ばれてきた冷たいものを少し口にするだけの行為でしかなかった。


でも、リリア・ディミロー。あの侍女が来てからの料理は、何故か形が崩れているものもあったけれどいつも温かくて、なんだかお腹もぽかぽかした。


それにいつも当たり前に出てきたその料理を作っている人が目の前に居たなんて、不思議な、けれど決して嫌ではない感覚に包まれる。


ぐぅと小さくお腹が鳴ったのを合図にスプーンを手に取る。

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