第22話

また迷うことを察したアッシュに送ってもらい無事別邸へと帰ってきた。早速廊下の掃除をしていると、窓からの燦々とした陽の光に気持ちもなんだか明るくなっていく。


そうだ、後でお嬢様にお部屋のカーテンを開けてもいいか聞いてみよう。お嫌じゃなかったら良いな……。


そんなことを思いながら、窓を拭いていると離れた場所にある庭先で生垣の剪定している人影が見えた。


ギィシアは本邸での仕事もあり、基本的には一人での仕事なので、他にも仕事に勤しんでる人を見かけれたのはなんだか一人じゃないように感じられて嬉しい。


掃除する手を動かしながら窓越しに遠く見えるその人は、あっという間に綺麗な長方形の生垣を仕上げていった。


「すごいなぁ」


その手際の良さに感動を覚えながら、私も頑張ろう!とふんすと気合を入れ直して掃除を続ける。


そのおかげで思っていたよりも早くに掃除が片付き、ギィシアからのオーケーサインももらえた。今日も新品で届いたシーツを干していたので少し早いが取り込みに行こうと外へ出ると、昨日は気付かなかったが、別邸の勝手口をぐるっと右に回ると、廊下の窓から見えた庭に着いた。ほほう、ここはこう繋がっているのかぁ。と新しい発見に探検気分になる。


まださっきの庭師さんはいるだろうか?ときょろきょろとしながら歩き出す。


それにしても近くで見るとより丁寧な仕事ぶりが伺える。単独で植えられている樹木は自然な形に見えるのに、鬱蒼としないようにしっかりと切りそろえられて、樹木が連なる生垣では直線を引いたような美しさがある。


はぁ……と思わず感嘆の声が漏れ、引きで見ようと後ろに下がると、とんっと何かにぶつかる。


「あっ、すみませ……」


慌てて振り返ると言葉を失ってしまう。


そこにはシャツから溢れんばかりの隆々とした小麦色の肌の筋肉に血管が浮かび、もはや壁に感じるような大きな身体にスキンヘッドが眩しい強面の男性が立ちはだかっていた。


クマと遭遇した人って、こんな気持ちなのかな……


「あ、お父さんってばもぉー。こんなところにいたんだ。新しく植える木やっと届いたよ。……お父さん?ってこの人は……ん?もしもーし?……あー!立ったまま意識失ってるー!」


「す、すまん……」


「僕に謝ってもしょうがないでしょ!お姉さん、お姉さんしっかりして!」


身体を強く揺さぶられ、はっと意識が戻る。


「えっ、あ……?」


すぐ側にくりくりとした目に活発そうな顔つきをした男の子が、申し訳なさそうに私の腕を握っていた。


「お姉さん大丈夫?うちのお父さんがびっくりさせてごめんね」


「えっ、お父さん……?」


可愛らしい男の子と屈強な男性を思わず見比べる。似つかわしいところが見つからずに余計混乱してしまうが、初対面でフリーズしてしまうという失礼な行動を取ったことを深く詫びる。


「こっ、こちらこそ大変失礼しましたっ、私は別邸で働かせて頂いてるリリア・ディミローです。先程この辺りで剪定されてる方をお見かけして、綺麗に仕上がっていく生垣に感動してつい来てしまいました……っ」


と頭を下げると、その言葉に何故か男の子が自慢気な表情を浮かべる。


「その剪定してる人が、お父さんなんだよ」


とじゃじゃーんと口で効果音をつけて、屈強な男性を指差した。











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